ハーモニー・オブ・ザ・デッド

EXTINCTION
２０１５年
スペイン／ハンガリー
１１２分
ホラー／ドラマ／ＳＦ
劇場未公開



監督：
ミゲル・アンヘル・ビバス
『スペイン一家監禁事件』
出演：
マシュー・フォックス
ジェフリー・ドノヴァン



＜ストーリー＞
驚異の感染力を持つウイルスにより、人類は凶暴な生き物と化して絶滅寸前に。 9年前にウイルス感染者による殺戮の舞台となった街で、3人の人間が隠れて暮らしていたが、ある日見知らぬ女が現れ…。



－感想－

長編デヴュー作『スペイン一家監禁事件』にてその冴え渡る異才っぷりを世に放ったミゲル・アンヘル・ビバス監督が、今度は終末の世界を舞台にして父娘の愛の記録を丁寧に描ききった長編２作目。

オープニングこそ大勢の人間が登場しますが、時代が９年経つと画面に映るのは主に３人のみ。
昼間は雪が降り積もる外へと出て狩りをしながら食料を調達し、夜は無線機を使い他に生存者が居ないか応答を呼び掛け続けている一人ぼっちの男。
その男の隣家には缶詰だけで何とか飢えを凌ぎ、娘には一切外の世界は見せようともさせていない親子。
しかし父は愛情を一杯に注いで娘を育てている事は伺えます。

その父と隣の男は物凄く仲が悪い。
というよりも父が一方的に男を家から娘から遠ざけている。
その理由は後々に分かるのですが、取り敢えずややこしい間柄なんです。
こうなってしまったのは９年前にとある女性を失ってしまった事にあるのですがね。

ゾンビというか凶暴な怪物は寒さのせいで絶滅したかのように思われていましたが、ある日、環境に適応し進化を遂げた全身真っ白のモンスターが現れ、狩りの途中だった男を襲う。
間一髪難を逃れた（首筋を噛まれるも怪物が進化した事でウイルス感染はしなくなっており命は救われる）男は、その怪物を鎖に繋ぎ庭に放置するのでしたが、この行動が３人にとっては住居を奪われる最大の悲劇を招く結果へと繋がる。

男と父との仲違い、父と娘との幸せに満ちた生活風景と、あくまでもドラマ重視に構成されたストーリーの為、終盤まではとても静かに物語りが進んで行きます。
ホラー的要素があるのはオープニングと大量のモンスターが襲撃してくる終盤だけなのですが、この映画の観てくれポイントはそこに在らず。

成長した娘を中心にした男と父との関係性、これこそが本作の見所。

なんだろうね、ラストを見届けた後に残る何ともいたたまれないこの気持ちは。

最期まで一切自分が誰なのか娘にその素性を話さなかった男はけじめを付ける意味では立派。
だから娘は今後も笑顔で生きていく事が出来る。
真実を知ってしまうと、そうはいかないでしょうから。

何も嫌な思い出を作らず、今まで通り健気に父と共に今後は希望だけを胸に抱いて歩んで行って欲しい。

敢えて秘密を漏らさず「ただの近所のおじさん」としての優しさと、それ以上に目に見えてくる父性愛に感動でした。

たった一つの過ちから自然にこういう人間関係になってしまったのは男にとっては仕方がないかもだが、１度でも良いから娘を力一杯抱き締めたかっただろうな、とか色々思うと、切なくもあり哀しくもあり。

怖さを求めるのではなく、泣きのホラーを求める方にはお奨めしたい１作。

ところで、男の無線に神経を逆撫でるかの様にメッセージを送り続けていた人物は誰なんでしょ？
ジレンマから生まれた男の幻聴という意味だったのかなぁ。

評価：★★★☆
１５／１０／１１ＤＶＤ鑑賞（新作）
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レンタル開始日：2015-10-07
メーカー：ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント