いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

日産の可変圧縮比エンジン

2016年08月18日 | 自動車
 日産が可変圧縮比エンジンを開発中だそうです。日産自動車のサイトに情報がないので、webCGにリンクさせて頂きました。ニュースリリースは香港、実物の発表はパリということで、日産が多国籍企業である表れなのか、あるいは日本市場を当てにしていないのか、公式サイトが無反応なことも含めて少し考えさせられるところです。

 このVC-Tエンジンの概略図は、コンロッドの作動範囲を変化させているということで、圧縮比より膨張比を大きく取ったエンジンのホンダEXlinkに似ています。違うのは可変機構に日産が(サスペンションを連想させる)マルチリンクを採用したのに対して、ホンダが(マツダのロータリーみたいな)エキセントリックシャフトを使っている点と、それからもっと重要なのは、日産が可変圧縮比、ホンダが膨張比拡大(アトキンソンサイクル)だという点です。熱力学の簡単な原理から考えると、燃焼ガスにはできるだけ多くの仕事をしてもらった方がエネルギー効率は高くなるため、膨張比を大きくすることこそ燃費改善のキモであるように見えますが、果たして可変圧縮比で燃費は改善されるものでしょうか?

 VC-Tエンジンの圧縮比は8.0から14.0の可変とされています。8.0は昭和の国産ターボ車ぐらいですね。日産が市販車として初めて投入したターボエンジン、L20ETでは7.6でした。引用した資料では7.3と表記してありますが誤差の範囲でしょう。14.0はマツダのSKYACTIV-Gと同じで市販車として世界最高。すると、最高効率はせいぜいSKYACTIV-Gと同等ですね。これで画期的なのかな?SKYACTIV-Gの燃費は自然吸気ガソリンとしては優秀とのことですが、ハイブリッドや小排気量ターボ、ディーゼルに比べると影が薄く、燃費で積極的に選ばれているわけではありません。EXlinkのような熱力学的な効率改善があるわけでもなく、これで「ディーゼル並みの燃費」と報道されているのはなぜでしょう?ダウンサイジングターボと可変圧縮比を組み合わせることで、より設定の自由度が高まったということだと思うんですが、詳しいことはわかりません。

 既に可変バルブタイミングにより、実質的に膨張比を変えられるミラーサイクルが当り前になっており、トヨタは新型プリウスでハイブリッドシステムとミラーサイクルを磨き上げることで、素晴らしい燃費効率を実現しています。トヨタの「王道」に比べるとVC-Iエンジンの燃費効率は及ばず、その割に凝ったメカニズムでコストも高いので、高価格が目立ちにくい高級車部門のインフィニティから発売するのでしょう。ただ燃費が高級車の顧客にどれだけアピールするかは難しいところです。また環境への影響を考えても、これだけ難しいことをやったところで、既存のPHEVや単純な電気自動車の方が評価が高くなるのは割に合わないですね。私は購買意欲をそそられませんが、日産がどうやって売るのかお手並み拝見です。
コメント
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