いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

白川村自然学級(その3)

2009年01月15日 | 極楽日記(国内旅行)


 3日目は最終日です。やや疲れが見えるような気もしますが。

 まだ目が覚めていないようですね。

 この日は雪遊びのプログラムはなく、温泉に軽く入ってからロビーでバスを待ちます。ロビーのシンボルになっている大型の暖炉では、敷地内の間伐材を燃料にしていると説明がありました。他の集会室などでも木質燃料を使ったペレットストーブが稼働していました。

 でも基本的には大規模な全館暖房(大きな燃料貯蔵庫があったので、恐らく重油が燃料だと思います)を主力にしているようで、このロビーも高さ10mを越える大空間を汗ばむほど暖房してあるため、暖炉の前に立っても特に有難味を感じませんでした。この暖炉は飾りに近い使われ方のようです。トヨタ白川郷自然学校のサイトには、自然エネルギーの活用とか循環型モデルとか御託が書き連ねてあるのですが、まずはエネルギーを無駄にしないことが第一じゃないでしょうか?暖房の温度設定をもっと下げるべきですし、長期的には高さ5mとか10mとかいう巨大な吹き抜けからなる建物の構造を見直すべきです。現状では暖かい空気が小屋裏に上がってしまうため、全体を暖房するには大量の燃料が必要になっており、どこを環境に配慮したのかわかりません。

 この施設には、巨大なレクサスLS600hLを1人で乗っている人が、「これからはエコの時代だ。地球に優しくしているかい?」などとほざいているような滑稽さを感じます。いくらハイブリッドだって重量が2tを越え、高性能スポーツカー並の動力性能を誇るLS600hLの燃費は一般的な小型車に比べればずっと悪いし、都市の環境を考えるならできるだけ公共交通機関や自転車の利用を考慮するべきでしょう。

 まあ、この施設もレクサスLS600hLもトヨタですから、考え方がいずれも中途半端で、悪い意味で日本企業らしいとは言えます。この程度のことしかできないなら、トヨタは下手な説明で「環境」を商売に使うのをやめて、レクサスLS600hLは単なる贅沢な大型車、この施設は単なるトヨタ白川郷リゾートとした方がずっとすっきりすると思います。リゾートホテルとしては十分に快適で、インタープリターの方たちのお世話もあって安心して子供と楽しめましたから。

 帰りには白川郷の合掌集落に立ち寄りました。ずっと吹雪なのでもう寒くて寒くて。

 やっぱりこの風景は絵になりますね。この向かいで一眼レフと三脚を抱えて、腹ばいで雪に埋もれているおじさんがいました。写真への情熱と根性は認めますけど、程々にしないと体を壊しますよ。

 この辺に何軒か合掌造りの民宿がありました。本当に雪国の自然を味わってみたいのなら、「ドアの中は常夏の国」のようなトヨタ白川郷自然学校ではなく、このような民宿に泊まってみればいいのです。限られた資源で厳しい冬を乗り切るために、親戚一同が集まって大きな家を造り、一緒に暮らした。好きなだけ暖房が使えるわけではないので、中は小さく仕切って寒さをしのげるようにした。雪の重みに耐えるために傾斜の大きな屋根とし、大屋根の重量を減らすために瓦を廃して茅葺きにした。

 合掌造りの構造はすべて理由があってのことで、トヨタが合掌造りのモチーフだけ取り入れた豪華施設がいかに上辺しか真似ていないかがすぐにわかるでしょう。暖房の不十分な合掌造りだからこそ、一家が囲炉裏端に集まって「おお暖かい」と手をあぶり、みんなで汁をつつき合うのが何よりのご馳走になるのです。エネルギー効率の悪い大空間を「これでもか」と過剰暖房する無駄や、温もりの感じられない暖炉、家族のまとまりを演出しない個別のフランス料理など、天下のトヨタにしてはコンセプトが甘かったように思うのですが、単なるリゾートホテルと考えれば今のままで特に問題はありません。

 トヨタ白川郷自然学校のコンセプトが合理的でないのには、やはりプロジェクトの立ち上げに関わった人たちの影響を否定できません。それでも現状を見ると、初めに稲本さんと組んだ時の混乱をやっと脱しつつあるようにも思われます。これからトヨタお得意の現場主義と「カイゼン」で地に足の着いた啓蒙活動を続けていけば、きっと当初の目的どおり自然学校としての実績をあげるものと期待します。

 自然学校の看板を降ろして普通のリゾートホテルにする手もありますが、せっかくですから前向きにいくつか提案させて頂きましょう。(1)ロビーの暖房温度を下げる。やや物足りないな、という程度まで温度を下げてこそ人が暖炉に集まるようになります。(2)エネルギー効率の悪い吹き抜け構造を見直し、ロフトにベッドルームを増設する。北欧のログハウスでは、最小限の暖房でも一番暖かいロフトで寝ることで、燃料を無駄にしないようにしています。(3)家族の団欒が楽しめる鍋料理の導入を。なぜ現状でフランス料理にこだわるのかよくわかりません。鍋なら大勢でつつけるし、体が温まるので部屋の暖房温度を下げられます。地元の食材も消費しやすくなるでしょう。どうしても洋式にしたいなら、チーズフォンデュなんかどうでしょう?

 お世話になったバスです。ありがとうございました。

コメント
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