法律や規則というのはそもそも「べからず集」であって、これはならぬ、あれはならぬと決めておくのが本質だと思いますが、逆にある行為を許容する場合に、決め方がいくつかあります。
まず原則禁止としておいて、「これこれこのような場合は除く」「これとこれの場合も除く」と細かい要件を具体的に決めておく方法。例えば日本の著作権法における私的使用はこれにあたります。
これと根本的に異なる考え方が、「このような場合は構わない」と許容の範囲を広く設定し、不都合がなければ原則許容に近い管理をする方法。著作権におけるフェアユースの概念がこれにあたると言われます。著作権者に対して金銭的に償うべき被害が発生しない限りは、安易な著作権の行使を抑制する立場だと言えます。
現行の著作権法は「まず規制しておいて、規制がそぐわないものだけ許可する」という前者の考え方なので、既得権や政治力を持つ著作権者に圧倒的に有利な条件になり、今まで規定されていなかった新しいスタイルの著作物利用に対しては抑制的に働くという弊害が目立つようになってきました。よく例に挙げられるのが、著作権法を厳密に解釈することでGoogleのような検索サービスが違法になるため、日本国内に検索サーバーを置けないという不合理です。
こんなの誰が考えたっておかしいでしょう。今や情報は食料やエネルギーと並ぶ生活必需品なんです。それに対して著作権なんてのは一種の財産権(この他に著作人格権がありますが、直接の著作者じゃない著作権者には関係ないことです)に過ぎない。生存権より著作権が優越するなんて考えられないことです。国民が健康で文化的な生活をする権利を行使する目的で必要な情報を入手するためには、その障害となる著作権濫用があれば断固として排除されるべきです。政府が著作権の早期改正に向けて知的財産戦略本部を立ち上げ、総理大臣自ら本部長となり、また著作権法の第一人者たる中山信弘元東大教授を擁して議論を重ね、ネット時代に著作を促進しかつ著作物を最大限に利用するべく尽力しているのは当然のことです。
現行著作権法の下では映画会社や放送局などの古いメディアの独占的な権益に反するものは原則禁止になっているから、新しいビジネスがなかなか成長しない、とは最早言い古されたことです。その一方で実際に創作するクリエイターにきちんと利益が還元されているかどうかは不確実で、ごく一部のスター著作者が大いに潤う反面、劣悪な労働条件の下でテレビ番組を制作する下請け会社の窮状も知られるところとなりました。著作権法が消費者に不自由なほどの制約を課するマイナス面に対して、創作を促進するプラス面が十分ではなく、著作権を買い叩く流通業者だけが経済的利益を独占しているのを見れば、この法律が本当に我が国を利するものなのかどうか考えさせられます。改正が急がれるのは当然ではないですか。
然るに今回はJASRACなどの権利者団体が内閣官房知的財産戦略本部に要望書を提出し、権利者の意見を反映させるように求めたということです。それによれば「かかる法制化により大きな影響を受ける権利者を代表する立場の者が構成員として参加していない」とのことですが、事実はどうでしょうか?
知的財産戦略推進事務局のサイトによれば、8月2日の時点で有識者10人の中には角川グループの角川歴彦さんや漫画家の里中満智子さんが入っており、バランスを崩さずにこれ以上権利者側の構成員を増やすのは無理でしょう。またもなりふり構わない権利者のごり押しと見られても仕方がありません。むしろ、消費者の代表がなぜ入っていないのかが大いに疑問です。
解決の糸口が全く見えなくなった地上デジタルの録画問題にしても、フェアユースたる家庭内のタイムシフト視聴に対してさえ「著作権の侵害」として実体のない被害に基づいて対価を要求する権利者の論理に無理があるのは明白です。このままでは著作権の濫用が消費者の反発を買い、逆に著作権者であるテレビ局の経営を窮地に追い込むとさえ予測されている現状は不毛としか言いようがありません。このように誰も得をしない現行の著作権体系は社会の変化の前で有害無益な遺物になりつつあると判じられ、フェアユース規定の導入による構造改革が不可避であると考えます。政府と中山先生には不当な利権の切り崩しに尽力して頂きたいところです。
まず原則禁止としておいて、「これこれこのような場合は除く」「これとこれの場合も除く」と細かい要件を具体的に決めておく方法。例えば日本の著作権法における私的使用はこれにあたります。
これと根本的に異なる考え方が、「このような場合は構わない」と許容の範囲を広く設定し、不都合がなければ原則許容に近い管理をする方法。著作権におけるフェアユースの概念がこれにあたると言われます。著作権者に対して金銭的に償うべき被害が発生しない限りは、安易な著作権の行使を抑制する立場だと言えます。
現行の著作権法は「まず規制しておいて、規制がそぐわないものだけ許可する」という前者の考え方なので、既得権や政治力を持つ著作権者に圧倒的に有利な条件になり、今まで規定されていなかった新しいスタイルの著作物利用に対しては抑制的に働くという弊害が目立つようになってきました。よく例に挙げられるのが、著作権法を厳密に解釈することでGoogleのような検索サービスが違法になるため、日本国内に検索サーバーを置けないという不合理です。
こんなの誰が考えたっておかしいでしょう。今や情報は食料やエネルギーと並ぶ生活必需品なんです。それに対して著作権なんてのは一種の財産権(この他に著作人格権がありますが、直接の著作者じゃない著作権者には関係ないことです)に過ぎない。生存権より著作権が優越するなんて考えられないことです。国民が健康で文化的な生活をする権利を行使する目的で必要な情報を入手するためには、その障害となる著作権濫用があれば断固として排除されるべきです。政府が著作権の早期改正に向けて知的財産戦略本部を立ち上げ、総理大臣自ら本部長となり、また著作権法の第一人者たる中山信弘元東大教授を擁して議論を重ね、ネット時代に著作を促進しかつ著作物を最大限に利用するべく尽力しているのは当然のことです。
現行著作権法の下では映画会社や放送局などの古いメディアの独占的な権益に反するものは原則禁止になっているから、新しいビジネスがなかなか成長しない、とは最早言い古されたことです。その一方で実際に創作するクリエイターにきちんと利益が還元されているかどうかは不確実で、ごく一部のスター著作者が大いに潤う反面、劣悪な労働条件の下でテレビ番組を制作する下請け会社の窮状も知られるところとなりました。著作権法が消費者に不自由なほどの制約を課するマイナス面に対して、創作を促進するプラス面が十分ではなく、著作権を買い叩く流通業者だけが経済的利益を独占しているのを見れば、この法律が本当に我が国を利するものなのかどうか考えさせられます。改正が急がれるのは当然ではないですか。
然るに今回はJASRACなどの権利者団体が内閣官房知的財産戦略本部に要望書を提出し、権利者の意見を反映させるように求めたということです。それによれば「かかる法制化により大きな影響を受ける権利者を代表する立場の者が構成員として参加していない」とのことですが、事実はどうでしょうか?
知的財産戦略推進事務局のサイトによれば、8月2日の時点で有識者10人の中には角川グループの角川歴彦さんや漫画家の里中満智子さんが入っており、バランスを崩さずにこれ以上権利者側の構成員を増やすのは無理でしょう。またもなりふり構わない権利者のごり押しと見られても仕方がありません。むしろ、消費者の代表がなぜ入っていないのかが大いに疑問です。
解決の糸口が全く見えなくなった地上デジタルの録画問題にしても、フェアユースたる家庭内のタイムシフト視聴に対してさえ「著作権の侵害」として実体のない被害に基づいて対価を要求する権利者の論理に無理があるのは明白です。このままでは著作権の濫用が消費者の反発を買い、逆に著作権者であるテレビ局の経営を窮地に追い込むとさえ予測されている現状は不毛としか言いようがありません。このように誰も得をしない現行の著作権体系は社会の変化の前で有害無益な遺物になりつつあると判じられ、フェアユース規定の導入による構造改革が不可避であると考えます。政府と中山先生には不当な利権の切り崩しに尽力して頂きたいところです。