いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

やっぱり除草剤は使わない

2005年09月05日 | 極楽日記
 アパートから一戸建てに移ってみると、今まで気にも留めなかったことがいろいろ問題になります。庭や接道の草、いわゆる雑草もそのひとつ。

 極楽親父は庭の千草などたいして気になりません。雑草などと単純に蔑むのもどうですかね。昔、昭和天皇の侍従が、皇居か別荘だかの「雑草」の除去について上申したところ、「君、雑草という草はないよ。」とたしなめられたという話を聞いたことがあります。

 「それじゃ、民草という草はあるのか?」と突っ込みたくなるやり取りですが、普通は名前すら知られない草木にも命があり、祖先から連綿と受け継いできた遺伝子と、その地に適応したたくましい生存能力がある、という点は素直に認めます。

 極楽家は引っ越してから日が浅く、本格的な庭造りはまだまだ先の話です。きれいな植栽があって、そこに生えてきた邪魔な草なら「雑草」として処理もしましょうが、何も植えてない石ころまみれの庭や、道路のコンクリートの隙間に緑の葉を茂らせる植物は、むしろ緑化のために有効ではありませんか。地球温暖化が問題になって久しいですが、緑化は重要な方策として推奨されていたはずです。

 それに、除草剤を使うとなると、やはり毒性が気になります。グリホサート系の除草剤は安全性が高いということになっているのですが、きちんとした第3者のレポートを見ると、そう簡単に割り切れるものでもなさそうです。オタマジャクシが死滅するような薬剤が、人間に安全でしょうか?詳しくはブックマークを参照して下さい。グリホサートそのものより、副成分の問題が大きいようですね。(リンクさせて頂いた渡部さん、ありがとうございます。)

 農林水産省の通知「住宅地等における農薬使用について」を見ても、厳重な管理と周囲への注意喚起が求められており、自宅の庭や駐車場はともかく、「ウチの前の道路が雑草で汚いから薬を撒いてやろう。」などという感覚では使えないことがわかります。
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ゼロホルマリンとは

2005年09月05日 | たまには意見表明
 週末に入る大量のチラシ広告を見ると、この数年「健康住宅!ホルマリンゼロ!」とか「シックハウス対策済み。ゼロホルマリン建材使用」とか大書している住宅広告が目立つようになりました。でも、化学や生物学を少し齧ったことがあれば、これは誇大広告もいいところ、と思うのが当然です。

 なぜ?第1に、建材からホルマリンを完全に排除することは不可能だから。ホルマリンの正体はホルムアルデヒド。これは化学式でHCHO、つまり炭素原子が1個、水素原子が2個、酸素原子が1個というきわめて単純な化合物。ホルマリンとは、つまりホルムアルデヒドの水溶液に他なりません。以後面倒なので「ホルマリン」に統一します。

 ホルマリンはメタノール(メチルアルコール)を酸化する過程で発生しますし、多種多様な有機化合物の燃焼や分解の過程として簡単に生じるものです。水に溶けやすく、揮発もします。

 従って、あらゆる生物内に、微量のホルマリンは存在します。検出限界近くの微量なホルマリンでも、シックハウス症候群を心配する人がいるかも知れませんが、その程度のホルマリンは人間の体内にもあるものです。もちろん、材木にも含まれています。接着剤のホルマリンだけが問題にされますが、無垢の木にだってホルマリンは含まれます。

 木材を不完全燃焼させると、ホルマリンをはじめとするアルデヒド類がかなり発生します。アルデヒドや有機酸を多く含む煙は防腐作用が強いため、この煙で燻すことで食品が腐りにくくなります。これがスモークの原理。だから趣味で燻製を作っている人は、その程度のホルマリンでは何ともないということになります。

 それからタバコですね。あれも植物です。どうしても一部が不完全燃焼するため、タバコの煙には建材などよりずっと多いホルマリンが含まれています。「タバコは平気だけど、ホルマリンには敏感」という人は、どこかで騙されていると思います。

 第2に、建材からホルマリンを可能な限り除去したところで、衣服や家具などに含まれるホルマリンが多ければ意味がないから。現在のところ建材よりも衣服、家具のほうが基準が甘いようで、室内の空気に存在するホルマリンの大半は、建材よりはむしろ家具に含まれていたもののようです。

 第3に、シックハウスの原因としてホルマリンが疑われているが、本当の原因はまだはっきりしていないから。極楽親父は業務に多量のホルマリンを使用していますので、一般の方よりもはるかに多量のホルマリンを吸入しているはずです。

 まだアパートに住んでいた頃、一家でマンションを見に行ったことがあるのですが、「シックハウス対策」、「ゼロホルマリン」で押してくるのには閉口しました。壁紙だけ「自然材」とやらを使っただけで、そんなにすぐ幸せになれるものじゃありませんよ。「ホルマリンの中で仕事してるので全然気にしない。」と言ったら黙ってしまいましたが。

 「俺に何ともないんだからホルマリンが悪いわけはない。」と言うつもりは毛頭ありません。病原体や有害物質による健康被害は、個人差が大きいのです。タバコを50年吸っても平気な人もいれば、10年で肺癌になる人もいる。ホルマリンの被害を受けている人はいるでしょう。

 ただ、病院で見た印象では、微量のホルマリンに影響される人の割合は多くありません。病院は特にホルマリンに強い人を選んで採用しているわけではありませんが、明らかな異状を訴える人は稀だからです。しかも、現在流通している建材では、ホルマリンの残留濃度は非常に低くなっているはずです。

 無垢の柱や板なら大丈夫とか、珪藻土を塗れば大丈夫とかいった宣伝もありますが、便乗商法に近いものも多いようです。壁材の吸着面積は、たとえ珪藻土や漆喰でもたいした広さにはなりません。冷蔵庫の消臭剤に使う活性炭でも塗れば別ですが、それでも時間がたてば吸着しなくなります。まして、ビニールの壁紙に表面だけ珪藻土を塗った「自然建材」などたいして意味がないと感じます。計画換気と空気清浄機の方が有効ではないでしょうか。

 建材の成分にも、生物が作り出す物質にも、作用が十分に調べられていないものはたくさんあります。シックハウスの症状が出たからと言って、ホルマリンだけに原因を求めるのは却って問題の解決を遅らせるのではないかと思っています。
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