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いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

生命の探求者

2016年08月30日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 古い本で、昭和20年代に「子供の科学」に連載されたものをまとめたものです。「学校納入価格」と表示がありますので、学校で道徳の教材にでも使われたのでしょう。中学生あたりに向けて書かれた本なので文章が大変に高揚していて、医学の進歩に寄与した偉人、とりわけ不利な環境の中で世界に比肩する業績を生み出した日本人学者を讃えます。

 世の中は光の部分だけではないし、単純な意気込みと努力だけで偉業が成るものでもありませんが、まずは勢いがなければ何もできませんので、この手の本も悪くはないと思います。これを読んだ後に、例えば日経で連載中の大村智先生の自伝を読めば、偉大な研究が精力的なものであると同時に、いかに戦略的なものであるかがわかるでしょう。
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新自由主義の復権

2016年08月05日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 少子高齢化と福祉サービス、医療サービスの高度化が進行し、国家財政は実質的に破綻に近付いています。打開策には極端なインフレを起こして弱い立場の国民を犠牲にするか、負担を適正化して小さな政府を作るかしかありません。どちらかと言えばインフレターゲットの方が負担を先送りできるだけ有権者への受けは良く、ポピュリズム的な政局ではそちらの政策が取られがちです。負担の公平や国際協調、経済成長への影響など総合的には後者の新自由主義的な解決策が優れていますが、新たな負担に対する抵抗は強く、有権者の理解が得られません。

 本書では日本における新自由主義政策の象徴である小泉改革が、その後広い層からの批判に曝されている現状を鑑み、小泉改革の問題は新自由主義政策を採用したことではなく、それが不十分だったことにあると説きます。ミルトン・フリードマン「資本主義と自由」が古典的な名著ですが、本書はその正当性や、現在の日本における必要性、導入のための方策を具体例に即して説明してあります。引用や例示、比喩なども明快であり、簡単な経済学理論の解説もあって概要を掴みやすいです。入門書としてはとても優れた本だと思いました。
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世界一旨い日本酒

2016年08月01日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 日本酒の低迷期というのは大手メーカーが「特級酒」と称してアルコール添加、調味料と糖分添加の悪酔い酒を売っていた頃のことで、1990年の酒税法改正からは復権したのかと思っていましたが、問題はいろいろあったようです。

 地酒ブームで規模を拡大して、酒造メーカーになってしまった酒蔵が品質を落とし、端麗辛口ブームで「水みたい」な活性炭過剰使用のコクのない酒が店頭にのさばり、また吟醸酒ブーム、冷酒ブームで過度なエステル香ばかりで旨くない吟醸酒が流通量を増やし、また量を飲めない吟醸酒のために販売総量が低迷している、という指摘はかなり実感としてもっともだと思いました。ただ著者は醸造の専門家ではないため、「しっかり醗酵させた酒」の定義が曖昧で説得力がないですね。

 去年の秋から冬にふるさと納税で伊万里の酒をいくつか試す機会があったのですが、食事に合わせやすくて、つい量を飲んでしまうのは吟醸でない純米酒の方でした。もちろん酒の楽しみ方にいろいろあっていいのですが、味わいが貧弱だったり、あるいは調味したような不自然で痩せた味なのに、エステル香だけ妙に主張が強い、無理した感じのある吟醸酒は好きになれません。かと言って、吟醸香に見合うだけのしっかりした味わいのある吟醸酒となると、かなり高価だと思います。とても気軽に普段飲みにできないですよね。これはワインにおける発泡酒の立場にも似ています。例えば白ワインとしてもおいしい発泡酒というのは、かなり高価です。それなら無理して発泡酒にしなくても、もっと楽しめる白ワインがあるでしょう。だから私は家飲み用にシャンパンなどは買いません。どうしても旨いシャンパンが欲しいなと思うときは、クリュッグとかの高価な有名銘柄ではなく、アルフレッド・グラシアンなどの丁寧に作られた小規模メーカーの品を選びます。

 日本酒をこれから楽しみたいという人が、吟醸酒から入るのは私も賛成できません。できるだけ飲み飽きのしない純米酒を、できれば1升瓶が空になるまでちびちび楽しんでみると、正当な評価ができると思います。冷酒では味がわからないということで、著者は燗酒と燗冷ましを推奨しているようです。かつて燗酒、特に熱燗の割合が今より高かったのは、質の低い清酒が出回った時代に悪酔いしない知恵でもあったと思いますが、それに触れていないのはおかしいですね。昔は「樽酒」と称してフーゼル油などの成分で杉樽の成分を付けた酒が出回っていて、冷やで続けて飲むとちょっと鼻につきました。悪酔いもしやすかったような印象があって、それで熱燗をつけてわざわざ香りを飛ばして飲んでいたわけです。それに対して「冷酒が旨い」吟醸酒が流行したのは、言ってみれば反動なので無理からぬことですね。昔から「酒は人肌」で、温燗ぐらいが一番味がよくわかると言われており、いい酒を熱燗にしないのは常識でした。

 それにしても本で燗冷ましを推奨する人は初めてだな。アルコール分が飛ぶので、特に年輩の方には体に優しい飲み方じゃないでしょうか。
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放射能は取り除ける

2016年07月25日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 「満身の怒り」で有名になった東大の児玉龍彦教授による除染啓蒙の本。土壌汚染の評価や農産物への移行の少なさ、除染による効果など、適切な除染と廃棄物処理の必要性がよくわかります。肩書きである「システム生物学」というのがよくわからないのですが、放射性物質の除染については十分な実績をお持ちのようです。

 ただし、事故の基礎データで「放射性物質の総排出量がチェルノブイリを超えている」など、専門家の間でも議論のある件につき考察なく記載しているとか、やはり被曝との関係が疑わしい第五福竜丸の乗組員死亡事件を説明なしに被曝事故の例として紹介していることとか、生物に対する放射線障害と被曝量の関係について「閾値がない」と言い切っていることなど、物理や細胞生物学、放射線医学の専門家からは異論が出そうな箇所がいくつもあります。また記述に繰り返しが多く、科学論文では常識である引用文献が紹介されていないことなど、学者が書いた本としてはいかにも粗雑な印象を受けます。残念ながら本としての完成度は低いですね。予備知識のない人が福島原発事故について勉強する本として、これ1冊だけというのはお薦めしかねます。

 これは本を出した幻冬舎がまともに編集作業をしていないということでもあります。同社は福島原発事故に関係する本をいくつか出しているのですが、かなり怪しい著者の本もあり、信頼性としては疑問があります。売れそうだから何でも出してやれ、内容のチェックもリファレンスもいらないから早く早く、というのでは出版社の責任を果たしているとは言えないでしょう。
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ホームシアターの作法

2016年07月22日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 HiViあたりを継続して読んでいればだいたいこの世界の流れは掴めるのですが、しばらく情報から離れていたので買ってみました。液晶のバックライトがインテリジェントLED照明になった辺りからコントラスト表現でプラズマとの差があまりなくなり、プラズマを駆逐したという経緯が飲み込めました。単にコストで液晶に統一されたという訳でもなかったようです。極楽家のテレビは今でもブラウン管ですが、PCの液晶モニタは何台も入れていますので、(ある程度の価格帯以上で)液晶の画質向上が著しいのは実感しています。マニア層でも納得できるだけの性能向上があったのなら、大型液晶テレビを忌避する理由も既にないでしょう。と言うか、液晶以外のテレビはなくなってしまいました。

 となれば、安くなった液晶の恩恵を受けつつ、余った予算をオーディオに振り向けることもできるわけで、折角の大画面化と高画質化に反比例して、小型化、薄型化による音質低下が顕著なテレビ内蔵音声に頼ることは、「ホームシアター」には不適切です。できるだけスピーカーに予算配分を、という麻倉さんの主張はもっともだと思います。かと言ってマルチスピーカーを生活空間に持ち込むのは面倒で調整もしにくいし、家族の同意が得られません。ヤマハなどが高音質のシアターバー(同社はデジタルサウンドプロジェクターと呼称)を提供してくれるのは、私のような一般のファンにとっては有難いことです。
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石巻災害医療の全記録

2016年07月21日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 東日本大震災による地震と津波で最大の犠牲者を出し、医療体制が崩壊しかかった石巻地区で、地元関係者と全国からの応援部隊が7ヶ月間に渡り奮闘し、犠牲者の拡大を最小限に止めた貴重な記録。幾度もの悲惨な災害を通じて、救助体制や災害医療は進化をとげ、昔なら救命できなかった被害者を救助することができるようになってきました。これからも大小の災害と縁を切れない日本人にとって、災害に対処するノウハウの蓄積と実践的な準備は不可欠なことです。
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間違いだらけのクルマ選び2015年

2016年05月13日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 BOOKOFFで入手。新鮮な情報はネットで入手できるので、この手の本は情報のまとめに参考にするだけで、速報性を求めていませんので。

 「モーターファン」などの雑誌も、この「間違いだらけ」も若い頃は新本で買って、受験参考書みたいに読み込みましたが、続けて読んでみると、ある年で絶賛した車種が次の年には全く評価されてなかったり、逆に「変わりたくないBMWを象徴」などと酷評されてたのが次の年に埋め合わせの高評価になったりでガイドブックとしての評価基準に疑問が生じました。また途中から「自動車文化論」みたいな方向に走り出して、当初の「運転好きの普通の人のためのベスト・バイ」から外れだしたこともあって、長らく新本では買っていません。徳大寺さんは奥様との二人暮らしだったので、市場の動向がミニバン一色に変わってからも、なかなかミニバンを評価していませんでした。

 あと、趣味性のあるクルマを評価されたのは当然ですが、趣味が一般人にわかりにくいものだったのは不運でした。フェラーリやポルシェなどのスーパースポーツは多くの評論家が支持するからいいとして、徳大寺さんの独自の趣味と言えば、「一番好き」と公言してた古い英国車で、信頼性の点などでサラリーマンがとても維持できない12気筒ジャガーやオースチンなど、読者が接点を持てないクルマが多くて、支持が広がらなかったのは残念です。小林彰太郎さんの(ランチア・ラムダは無理にしても)エグザンティアとか、笹目二郎さんのムルティプラやパンダが、ちょっと思い切れば手が届くところにあるのに比べれば、徳大寺さんの趣味は貴族的で共有しにくいものだったかもしれません。

 それにしても徳大寺さんが、それまで資産家の高級外車趣味とか、逆に若い走り屋の自己満足と思われていた自動車趣味を大衆に紹介した功績は大きなもので、晩年は紙面に登場する回数も減っていたとはいえ亡くなられたのは寂しいことです。代表的な業績である本書が、島下さんの筆により受け継がれるのは有難い事と思いますけど、背負ってる物の中身も重さも違うのに、そのままのスタイルを踏襲しようとしているのはどうでしょうかね。徳大寺さんが若ければ、むしろ大胆に評価の仕方を変えていたんじゃないかと思います。同じ書名であっても、時代が違えば社会から求められる役割は違うでしょう。例えば40年前と違って自動車の買い替えサイクルが長くなったのですから、長期評価や中古の評価をネタにしてもいいんじゃないかと思います。2016年版からは単独執筆になるので、実質的に島下さんが言われるように本当のスタートになりますね。
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お父さんのためのピアノアルバム

2016年02月25日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 斉藤さんのピアノレッスンシリーズは人気があるみたいですね。ピアノの素地のない「お父さん」がそう簡単に弾けるようになるはずはないのですが、やってみようと思わせてくれるだけでも有難い事です。極楽家の電子ピアノも無駄にならなくて済みますし。
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悪魔の発明

2016年01月18日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 ヴェルヌの名作「悪魔の発明」。本を余り読まない極楽息子(小)に途中まで読み聞かせたら、続きを熱心に読んでくれました。

 「悪魔の発明」と「世界を救った決死隊」の2編が収録されています。上が私のサイン、下が息子のサインです。44年の長きを越えて、1冊の本が読み継がれることに満足と感動を覚えます。
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大学への数学 マスターオブ場合の数

2015年10月30日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 極楽息子(大)が中3で、少しずつ高校の数学が入ってきました。教える側としても、錆び付いた回路を整備しとかないといけません。腕力である程度解ける問題はいいのですが、条件の錯誤や数え落としが発生しやすい場合の数や確率は、前もって勉強しとかないといけませんね。若い頃、塾で教えていた時も、準備には授業以上に手間と時間を掛けるのが当然でしたから。
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指輪物語

2015年10月29日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 かなり前に買って忘れていた大作、指輪物語を読んでいます。ファンタジー文学の元祖かつ金字塔で、これなくして剣と魔法の世界を描く多くのRPGや、ハリー・ポッターなどのファンタジーは生まれなかったとされます。

 作者のトールキンはオックスフォード大学の英文学教授であり、文献学の大家でもありました。ヨーロッパの膨大な神話、言い伝えを消化してファンタジー小説を創造するという何十年来の労作の結晶がこの本です。新しい分野の小説にして決定版と言えるほど完成度が高く、これを下敷きにしてファンタジー文学が勃興した業績は多大なもの。中世騎士物語などの影響を受けているのでしょうが、英雄譚はサイドストーリーであって、元々強くも賢くもないホビット族が、英雄や魔法使い、森の精などに助けられて暗黒の冥王と対峙します。各種族の中で一番取り得のないホビットが「一つの指輪」の担い手として選ばれたのは、強くないから力に頼らず、賢くないから魔法に頼らず、好んで敵を殺すことなく、多くの者を味方として結び付ける美質があってのことでしょう。

 ともすれば状況の過酷さに翻弄される肉体の弱さや、指輪の魔力に負けてしまう心の弱さを曝け出しながら、それゆえに、強くて賢い者の視点しか持たぬ冥王の奸智を避け、勇者や魔法使いには不可能な使命に向けて、困難な旅が続けられます。これだけの登場人物を魅力的に描き、纏め上げたトールキンの筆力は賞賛すべきですし、それを格調高い日本語で読めることも実に幸せなことと思います。名訳だと思いますよ。
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ぼくのふるさと 阿波吉野川

2015年10月27日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 吉野川の名前に惹かれてつい買ってしまいました。極楽家のルーツは徳島でも海に面した松茂町なので、吉野川と言っても馴染みがあるのは河口付近で、この写真集にある上流や中流域はあまり行ったことがありません。大歩危小歩危は名勝なので観光客として訪問したことはありますが、ふるさとという感覚はないです。それでも流域の町は美しいし、作者が言うように一種の楽園だと思います。徳島の写真集と言えば阿波踊りや鳴門の渦潮を連想しがちですけど、こうした生活者の視点からの写真集は稀少です。
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The Portrait of Mrs. Charbuque

2015年10月22日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 時は19世紀末。ニューヨークで肖像画家として定評を得ているイタリア系の画家ピアンボは、経済的には不自由のない気楽な独身生活を謳歌し、人気女優のサマンサとの関係も続いている。しかし芸術家としては、富裕な顧客に媚びるような肖像の技法に飽き飽きしており、また師匠であるサボットが制作意欲を失った晩年に、サボットを見限って独立したことにも後ろめたさを感じている。そんな折に、正体不明の盲人に呼び止められ、途方もない依頼を受ける。

 主人であるシャルブーク夫人の肖像をお願いしたい。報酬は他の仕事をすべて断っても、更に上回る額を出そう。ただし夫人の姿を見ることはできない。もし満足できる肖像画が完成すれば、更に巨額の成功報酬をお支払いする。

 芸術家としての新しい境地を目指して依頼を受けるピアンボだが、さすがに依頼者とのスクリーン越しの会話で肖像を描く作業には困惑する。しかも肖像の手掛かりとしてシャルブーク夫人の語る履歴は謎に満ちている。神秘主義者だった伝説の富豪。富豪は何人もの神秘研究家を抱えており、彼らは雪の結晶や糞便の形状から未来を予測する使命を与えられていた。夫人の父親は雪の結晶の研究に没頭し、年のかなりの期間を家族と共に冬山にこもって雪の結晶集めと、結晶が社会にもたらすメッセージの解読に専心していた。このような特異な環境で育った一人娘は、雪の結晶の声を聞くことができる巫女として世に出ることになる。

 これだけでも雲を掴むような話ながら、仕事を続けるうちに、夫人の夫と称する謎の人物に脅迫を受けたり、親友の画家が妙に手回し良く情報を収集してくれたり、ニューヨーク市内で奇怪な出血病による女性の連続死が発生したりと、ピアンボの周りには理解しがたい事件が次々に起きる。これらの事柄には関連があるのだろうか?夫人の正体と、奇妙な依頼の意図は何だろう?ピアンボは無事に肖像画を完成させることができるのだろうか?


 19世紀末ですから、ロンドンではシャーロック・ホームズが活躍していた頃です。ニューヨーク市民の足は鉄道と馬車。大きな店に電話が入り始めていますが、一般的な情報交換はまだ手紙。ホームズ物にも共通しますが、神秘主義が人々の思考回路に入り込む余地が大いにある時代設定で、文体も当時を模して上品で丁寧。医学的に無理な設定はあるのですが、それは当時の解釈ということで。何せ、ベーリングと北里柴三郎によるジフテリア菌の発見が1883年、破傷風菌が1889年、ペスト菌が1894年です。謎の劇症出血病があっても不思議はありません。盛り沢山なミステリーでビジュアル面も見所があるので、映画化したら面白そうですね。
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ベートーヴェン全集

2015年09月29日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 リサイクルショップのオークションで入手しました。ベートーヴェンの「大人買い」です。

 何枚か欠品があり、それで安く出したみたいですね。それでも残り80枚以上あって、ほとんど使った形跡がありません。これで本体価格3千円はタダみたいなものw

 とりあえず車の中でピアノソナタを続けて聞いています。いわゆる大家のなまえはありませんが、東欧の実績のあるピアニストが多いみたいで、しっかりした演奏だと思います。ピアノはデジタル録音が発達して多大な恩恵を受けた楽器で、こんな廉価版でも細かい音まで聞き取れますし、タッチもよくわかります。いい買い物でした。
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最強日本ワイン完全ガイド

2015年09月10日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 せっかく買ってみたんですが、前書きに「日本ワインは品質表示も規格もばらばらで、いいワインが提供されるかどうかは生産者の良心による」などと身も蓋もないことが書いてありり、読む気を挫かれました。状況は周知でしたが、長らく日本ワインには手を出していなかったので、少しは改善されたのかと期待していたのです。

 これはもう何十年も前から言われてきた日本における酒造業の業病みたいなもので、私としては表示が正確にならない限りは手を出す気になりません。少数の良心的な醸造家を探し出して、海外ワインに比べて高価な商品を継続的に買って育成する、などという行為は文化的に望ましいのでしょうが、一般消費者には負担が大きすぎます。せめて流通側が良質なワインを発掘して紹介してくれればいいのですが、日本のワインを積極的に販売する酒屋は、それこそ例外的です。

 カリフォルニアを始め、オーストラリアや南米、または中国にまで大規模なワイン醸造が広がって、品質も次第に上がっている現状で、狭い日本でワイン作りをするなら、圧倒的な高品質を狙うしかないはずです。ところが実態は、業界を律して高品質な産地としての定評を得るのに立ち遅れてしまった感が強く、今後も苦戦が続くのじゃないでしょうか。
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