いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

指輪物語

2015年10月29日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 かなり前に買って忘れていた大作、指輪物語を読んでいます。ファンタジー文学の元祖かつ金字塔で、これなくして剣と魔法の世界を描く多くのRPGや、ハリー・ポッターなどのファンタジーは生まれなかったとされます。

 作者のトールキンはオックスフォード大学の英文学教授であり、文献学の大家でもありました。ヨーロッパの膨大な神話、言い伝えを消化してファンタジー小説を創造するという何十年来の労作の結晶がこの本です。新しい分野の小説にして決定版と言えるほど完成度が高く、これを下敷きにしてファンタジー文学が勃興した業績は多大なもの。中世騎士物語などの影響を受けているのでしょうが、英雄譚はサイドストーリーであって、元々強くも賢くもないホビット族が、英雄や魔法使い、森の精などに助けられて暗黒の冥王と対峙します。各種族の中で一番取り得のないホビットが「一つの指輪」の担い手として選ばれたのは、強くないから力に頼らず、賢くないから魔法に頼らず、好んで敵を殺すことなく、多くの者を味方として結び付ける美質があってのことでしょう。

 ともすれば状況の過酷さに翻弄される肉体の弱さや、指輪の魔力に負けてしまう心の弱さを曝け出しながら、それゆえに、強くて賢い者の視点しか持たぬ冥王の奸智を避け、勇者や魔法使いには不可能な使命に向けて、困難な旅が続けられます。これだけの登場人物を魅力的に描き、纏め上げたトールキンの筆力は賞賛すべきですし、それを格調高い日本語で読めることも実に幸せなことと思います。名訳だと思いますよ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 極楽学区大運動会 | トップ | Amazon覚え書き空気入れなど »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

極楽日記(読書、各種鑑賞)」カテゴリの最新記事