一つの物事に対しても、知識があるのと無いのとでは、見方が大きく変わってくるものでありますが… 私がその昔、一畑の旧型車を追い掛けていた時も、見事な小窓とリベットの織り成すハーモニーと、クラシカルな内装に惹かれデハ20形やデハニ50形ばかり追いかけ、70系や旧西武の20m車はどちらかと言うと邪険に扱っていた節があります。例えば70系は、一畑入線時に西武所沢で大規模な近代化改装が実施され、同じ武蔵野のクハ100形や蒲原のモハ61と比べても原型の面影を崩していたし、内装も床が板張な以外は近郊型電車みたいで、当時は余りその良さが理解できませんでした。しかし後に、この電車が装備していた主電動機「MT-4」(GE244A、或いは芝浦SE102)が、旧鉄道院デハ6340系~33500系電車(後に称号規定改正でモハ1形に統一)が装備していた主電動機であることを知るに及び、ちょっと後悔した次第で。後悔しても現車は既に廃車解体され、今現在、この主電動機を装架した電車で営業運転できるものは日本には残念ながら現存しません。電気機関車まで範囲を広げれば、近江のED31がこの主電動機を持っている筈ですが、近年は稼働する機会が全く無いようで、これまた残念。
まあしかしネットは便利なもので、現役末期の一畑70系の音をUPしているサイトもあります。高速走行する大正期の院電最後の雄叫びを堪能してみるのも如何でしょうか。