今朝はなんだか鳥がやかましくさえずっていた。雨が降るぞと知らせていたのだろうか?。
医学生の頃、薬理学の教授が痰の絡む咳は止めるなと講義をした。成る程、痰を出すために咳をしているのだから止めない方がいいのだと納得した記憶がある。今でも大学病院や総合病院では感冒後の長引く咳は、そのうち止まるからと去痰剤のみで対応される所も多いようだ。確かに二三週間もすればだんだん止まってくるのだから、それでよいのかも知れない。どういうものか大病院だと患者さんはそれで引き下がってしまうことが多いようで、それで済むのだろう。
しかし、咳は中々辛い症状で我々第一線の医者はそのうち止まりますからと高飛車には対応できない。少なくとも辛い症状に一生懸命対応している姿勢を示さなければならない。手を変え品を変えといっても実は咳を止める薬を出すことは滅多になく、やはり原則に従い痰が出来って止まるまで、伴走して納得して戴いているのが実情である。
尤も中には咳喘息というのが紛れ込んでいることもあるので要注意なのだが、この辺は曖昧なところもあり、患者さんの訴えのしつこさに負けて、伝家の宝刀を処方してしまうこともあるようだ。
実は感染性の下痢も同じで、毒素やウイルスを体外に出そうと下痢をしているわけだから、無理に止めない方がいい。「はいはい、良いお薬を」と医師が出すのは整腸剤で、下痢止めを出すことは殆どない。幸い下痢は咳のように長引くことはなく治まって行くので、まだよくならないと訴えられることは少ない。もし何時までも下痢が続けば他の病気を考えなければならない。
勿論、医師の注意を守ることは大切で下痢をしているのにカレーやトンカツを食べてビールを飲むような患者には責任は持てない。
有り体に言えば、治療の原則は同じなのに第一線では患者の訴えに対応することが求められ、そうした姿勢に患者が納得してゆくという側面がある。実はこれは病気に限らないとても日本的な現象で、焼け石に水でもというか形の演技というか、様々な局面で見られる図式のように思う。