ワインのテイスティングではまず色を観察してから香りを楽しむ。料理でも香りは重要な要素だ。お前はちょっと怪しいのではないかと言われては心外だが、本も手触りと香りが大切だ。内容が第一なのは勿論だが、読書を愛する人は本の手触り、香り、装丁そして活字を愛でると確信している。
ブログを開くのも楽しいが、本屋に入った時のあの楽しさ嬉しさには遠く及ばない。本の香りが心躍らせる。私の贔屓は丸善だ。別に丸善の回しものでも何でもない。恐らく、多くの読書家が同意してくださると思う。丸善には文化の薫りがあるなどと書くと他の書店や他の書店贔屓の方からけしからんと言われるかもしれないが、余裕のあるディスプレイ、店員の応対知識、文具にまで広がる書斎人への配慮を感じれば同意していただけるだろう。
書籍数を誇ったところで、本棚の間隔が狭く客がすれ違うのに背を伸ばさねがならないような本を詰め込んだ本屋は本と缶詰を混同しているように思う。そうは言っても、丸善も活字離れの危機を感じているらしくどこかと提携したようだ。願わくば丸善の良き伝統を失わないで欲しいと願っている。