駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

TPP再び

2011年11月19日 | 小考

 NHKのTPP徹底討論を半分くらい見た。どうも徹底的という印象を受けなかった。討論する顔ぶれがまず公平ではない。居並ぶ人は、総てエスタブリッシュメント。身分は保障され収入の少ない人など居ない。しかも賛成派の方が数が多い。視聴者の意見の取り上げ方も賛成か反対かに力点が置かれていて徹底分析に繋がらない。

 賛成派の人は痛みから遠く総論賛成、慎重派の人は痛みに近く各論反対と噛み合わず、言い合いに終わる感じなので見るのを止めてしまった。

 賛成反対の前にTPPはどういうものかをわかりやすくそれこそ歴史的政治的背景を含め、徹底的に説明することが第一で、それで終わってもよいくらいだ。どうなるかの予測をこれからの交渉次第と様々な可能性も提示しないのでは国民は判断できない。大体国民に説明して交渉したことなどないでしょうと、背広の下には鎧が見えることを政府要人が言う。

 TPPに参加した方がプラスがやや多そうに思えるが、それはプラス30とマイナス20を合算するとプラス10になりそうだから良いということで、その思考過程では人の人生が数字に置き換えられている。正直に言えばTPPという外圧を利用して足手まといの弱者(零細農家や畜産業者・・・)を整理(切り捨てる)しようというのが本音のように思える。それを言葉巧みにエスタブリッシュメントが痛みを感じる人達には緩和治療をしながら関税を無くしてゆけば良いと推進論を展開する。

 驚くべきことは年収のさほど多くなく、学業成績も作戦本部(前線から遠く命の危険もない)に入れてもらえないと思しき国民のかなりの人が、保護貿易で栄えた国はないとか、坐して道は切り開けないとか、御用学者顔負けの意見を言うことだ。 

 仕事を奪われて寒さに震える五分の一には見返り一時金が与えられ、潤う四分の一は可哀そうだが止むを得ないと自らを納得させ、残る二分の一は潤うはずが当てが外れて空を見上げるというのがTPPの真相だろう。残った二十分の一(5%)がどうなるかと言えば徹底抗戦、路頭に迷うあるいは鉄格子の向こう側だろう。

 多少誇張して書いたけれども、問題は極めて深刻根源的で、それで良いとか悪いとかはとても簡単には言えない。

 それにしても日本人の中流意識は凄い。甘えの構造は自分にだったのだろうか。

コメント
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