駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

普通に話せるとよい

2011年11月14日 | 診療

 研修医が回ってくる季節だ。いろんな若者がやってくる。その個性に触れるのが楽しい。大抵は素直で向上心に満ち溢れ、医院に若さを運んでくる。

 正直なところ、狭い医院の日常診療の中で彼らを遇するのは楽ではない。しかしそれでも、若さと向上心に触れることはかけがえのない刺激で、毎年六、七人を受け入れている。

 試験ではないが、最終日に彼らに患者さんを一人診療して貰う。非常に丁寧で網羅的に時間を掛けて診てくれる。最新の知識や希な病気の知見には彼らの方が詳しい部分もあるのだが、総合的な知識経験や技量は不十分なので、気が付いた勘所を教える。素直に聞いてくれるのが嬉しい。

 若く慣れないから当然ではあるが、問診の内容は妥当でも話し方が不自然な研修医も多い。小学生が劇の台詞を話すように質問するので患者さんが戸惑ってよく聞こえているのに聞き返してくる。そうすると声が大きくなりゆっくり話し出すので、同じ答えを引き出すのに私の倍くらい掛かる時がある。

 これは経験を積み、社会性が身に付けば自然に改善されてゆくので、もう少し普通に話せると良いという程度にアドバイスしている。唯、医学用語は言い換えるように注意する。例えば誰にでもわかりそうな動悸がしますかとか胸痛がありますかと聞かれても分からない人もいるからだ。患者さんは孫のような若い医者でも、なかなか分からないとは言わない。よく分かっていなくても適当に答えてしまう爺婆が結構いる。

 四人に一人は女医さんだ。花のように美しくなくても、診察室に花が咲いたようで嬉しく楽しい。 

コメント (2)
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