三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

バンディ・リー編『ドナルド・トランプの危険な兆候 精神科医たちは敢えて告発する』(1)

2020年01月05日 | 

2016年の大統領選挙からまもなく、トランプ大統領の精神状態に危機感を持ったジュディス・ルイス・ハーマンとバンディ・リーは、懸念を記した手紙を精神科医や心理学者に出して署名を求めた。
しかし、返事の大部分は署名拒否だった。
政府から無形の報復が心配なので拒否すると述べた人もいた。

ゴールドウォータールールといって、直接診察しない人物に診断を下してはいけないという決まりがアメリカの精神医学の世界にある。

1964年に「ファクト」誌が当時の大統領選で共和党の候補だったバリー・ゴールドウォーターについて精神科医たちの診断意見を掲載した。
回答した精神科医の大多数は、ソビエトへの核兵器使用を是認するゴールドウォーターはパラノイア、あるいは妄想型統合失調症だという意見だった。
ゴールドウォーターは名誉毀損訴訟を起こし、「ファクト」誌は敗訴した。

このことがきっかけで、アメリカ精神医学会は、有名人については直接診察しない限りはコメントしたり診断名を述べたりすることを禁じた。
そして後に、ゴールドウォータールールを拡大し、診断名だけでなく、どんなコメントも述べてはならないと決定した。

それにもかかわらず、2017年4月にイェールカンファレンスが行われ、その記録をもとに28人の精神医学・心理学の専門家、ジャーナリストたちが起稿したのが『ドナルド・トランプの危険な兆候』です。

大統領選での得票数はヒラリー・クリントンのほうが約300万票ほど多かったのに、それは不正があったからだ。
大統領就任式の参加者数は史上最高だった。
オバマがトランプタワーを盗聴している。
こういった明らかな嘘をトランプは言っています。
トランプは「人は他人を信頼し過ぎる。私は他人などまず信頼しない」と自著に書いています。

トランプについて多くの人が持っている疑問。
単にクレージーなのか、クレージーを演じているだけなのか。
病んでいるのか、単に悪い人間なのか。
自分が嘘を言っていることも自覚しているのか、自分の嘘が真実だと思い込んでいるのか。
他人を不条理に非難する時、被害妄想的になっているのか、演技であって、自分の悪行から注意をそらそうとしているのか。

人間とは、病んでいて、かつ、悪い人間であることがあり得る。

トランプの自伝作者「私はトランプと知り合ってからすぐに、彼の内面は危険に対して常に過敏な状態にあることに気づいた。気分を害されたときには衝動的かつ防衛的に反応し、自己を正当化する嘘の話を作り出し、常に他人に責任転嫁していた」
ホワイトハウスの元スタッフ「トランプの世界観は、人は誰もが自分の利益のためにだけ生きているというものだ」
ロバート・ジェイ・リフトン「トランプは極端に歪曲した現実を作り出す。自分が作り出した現実こそが正しい現実だと言い張る。そして人々がそれを受け入れるのが当然だと思い込む」
ダグラス・プリンクリー「トランプの世界では、どんなにコストを払ってでも勝つことだけがすべてだ」


精神医学・心理学の専門家はトランプについて、自己愛性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害、妄想性パーソナリティ障害、妄想性障害、悪性ナルシシズム、認知機能障害などの可能性を指摘しています。
これらの障害を私なりにまとめました。

・ありとあらゆる場面において特別扱いされることを強く求める。
・自分は特別であるという思いがとても強く、自分以外の人々をチェスの駒のように互いに戦い殺し合うものとして扱う。
・自分の欲する物を得るために、嘘で他人を騙して操り、人を傷つけても意に介さない。
・自分を特別視するために他人を相対的に悪くする必要、たとえば他人の評判を落とす必要があれば、そうすることを厭わない。
・他人への嫉妬にあふれており、その嫉妬は言動に表れる。
・他人の中に常に悪意を見出し、出来事の中に常に危険を見出す。
・感情的で大袈裟。
・他者への思いやりや共感を欠如しがち。
・反証があっても揺るがない確信を持つ。

外見は魅力的で優しく見え、自分の悪行を巧妙に隠蔽し、人を押しのけて高い地位に上りつめる、成功した社会病質者もいる。

ヒトラーやスターリンのような悪性ナルシシズムの指導者が支配者になれたのは、過度のナルシシズムが彼らを自信満々で大きく見せ、世界に必要なものが何かを知り尽くしているように思わせたからである。

独裁者(金正恩、アサド、フセイン、プーチン)を賞賛するトランプは、絶対的な専制政権が夢で、自分が独裁者になりたいと思っている。

心を病める人が権力を握れば、それは腐敗するだけでなく、病を悪化させたり、新たな病を生むことさえある。

今でもなお、トランプが理性の声を聴き自らの行動をあらためるのではないかという希望を抱いている人がいる。精神医学・心理学の専門的見地からすれば、それはあまりに甘い観測であるということができる。


ただし、トランプが精神疾患かどうかが問題なのではなく、危険(核戦争など)か否かが問題なのである。

トランプ氏のように精神不安定な人物は、人の生死を握る大統領という職責には不適格である。


アメリカはイラン革命防衛隊のガセム・ソレイマニ司令官を殺害し、そして中東に3500人の部隊を派遣します。
たしかに危険です。

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