山口県光市で99年、母子を殺害したとして殺人や強姦致死罪などに問われた当時18歳の元少年の差し戻し控訴審は20日、広島高裁(楢崎康英裁判長)で3日目の集中審理が始まった。検察側の依頼で遺体の法医鑑定をした川崎医療福祉大学の石津日出雄教授の証人尋問があり、石津教授は、元少年が右手の逆手で首を締めたとする弁護側主張について、「逆手だと力が入らず、簡単に払いのけられ、現実的にはあり得ない」と否定した。(略)
石津教授は、弥生さんの殺害方法について「被害者は必死に抵抗するので押さえるための力が必要で、逆手では力が入らない」と指摘。夕夏ちゃんについては、弁護側が頭にあった皮下出血は打撲程度で、たたきつけるなどはしていないと主張している点について、「乳児の頭の骨は薄くかわら状になっているので弾力があり、衝撃を吸収して骨折は起こりにくい」と話した。(毎日新聞9月20日)
山口県光市の母子殺害事件で、殺人などの罪に問われ、最高裁が1、2審の無期懲役判決を破棄した元会社員の男性被告に対する差し戻し控審の第10回公判が20日、広島高裁(楢崎康英裁判長)で開かれ、検察側が申請した法医鑑定人の証人尋問が行われた。
尋問で鑑定人は、被告が被害者の本村弥生さんを死亡させた際、「右手を逆手にして、あごの下付近を押さえているうちに死亡した」と供述していることについて、「逆手では力が入らず簡単に払いのけられるため、現実的にはありえない」と否定する証言を行った。
また、弁護側は「上告審判決が認定した殺害方法と遺体の首に残った跡は整合しない」と主張しているが、「順手で絞めた場合は親指と小指に力が入り、手のひらの側面が跡として残っても不思議でない」と、検察側の主張を裏付ける証言も行った。
長女の夕夏ちゃんについては、「ひもで絞められた際にできる首の表皮剥奪がない」とする弁護側の主張に対し、鑑定人は「首を絞めるのにはひもを引っ張る力の一部が作用するため、接触部分に剥奪がなくても不思議ではない」と疑問を示した。(産経新聞9月20日)
光市事件の裁判で一番の要となるのが、法医学者の遺体鑑定だと思う。
昨日の検察側鑑定人の証人尋問は5時間もかかったというのだから、かなり突っ込んだやりとりがなされただろう。
ところが、弁護側、検察側両方の鑑定人の証言については、なぜかニュースであまり取り上げられない。
弁護側、検察側の鑑定結果はまったく異なっている。
素人の感想だが、石津証人の話は説得力がないように思う。
片手では簡単に払いのけられるから、両手で首を絞めたと説明している。
しかし、被告は次のように供述している。
僕は今度は、僕の左手の親指と人さし指を開いてMさんの喉仏の辺りに置き、その左手の上に僕の右手の親指と人さし指を開いた状態で右手のひらを重ね、全体重をかけて思い切りMさんの首を絞めました。僕はMさんを殺すために、全体重をかけて、かなり長い時間Mさんの首を思い切り絞めました。(略)Mさんの首を絞めて殺した直後、僕の手がまるで接着剤でMさんの首にくっ ついて離れず、僕の指も、Mさんの手を締めたままで固まってしまったことでした。(略)僕がUちゃんの首を絞めた時には、Uちゃんの首をいくら絞めようとしてもMさんの首を絞めたままの形で指が固まってしまい、Uちゃんの首をうまく絞められませんでした。
このように首を強く絞めつけたのなら、首の左右と喉仏のところに指の跡があるはずではないか。
また、幼児の頭の骨は弾力性があるから骨折は起きにくいということだが、被告は次のように供述している。
両手でUちゃんの脇の下を持って抱き上げ、そのままコタツの脇のカーペットの上にUちゃんを後頭部から仰向けに思い切り叩き付けました。
思い切り叩きつけたのに外傷がないのはなぜか。
Uちゃんの首に巻いた紐の先端を僕の左右の小指と薬指紐がはずれないように一回巻き付け、手を左右に力一杯引っ張って首を絞めた。
紐を力一杯絞めても痕跡が残らないものだろうか。
弁護団の一人である今枝仁弁護士はこう書いている。
(遺体の)解剖医は、現在東京大学の法医学教授にまで出世しているようですが、検察側がなぜこの人を証人とせず、ほかの証人を立ててきたのか、疑問を感じます。
弁護人は、「実際に遺体の解剖を担当した解剖医に聴くのが一番いいじゃないか。」と考えていますが。
https://seesaawiki.jp/w/keiben/d/%ba%a3%bb%de%ca%db%b8%ee%bb%ce%a4%ce%c5%ea%b9%c6%a1%ca%a4%de%a4%c8%a4%e1%a1%cb
もっともな疑問である。
マスコミは鑑定をどうして検証しないのか不思議である。
光市事件の被告が拘置所から「友人」に出したという手紙にしても、マスコミは相変わらず被告が反省していない証拠だとする。
しかし、手紙を証拠として取り上げた二審の判決文にはこうある。
被告人の上記手紙の内容には、相手から来た手紙のふざけた内容に触発されて、殊更に不謹慎な表現がとられている面もみられる。(略)
本件各犯行に対する被告人なりの悔悟の気持ちをつづる文面もあり
テレビ局は「ま、しゃーないですわ今更」ばかりでなく、「悔悟の気持ちをつづる文面」も紹介すべきだ。
それに、7年以上も前のことを持ち出して、今も反省していないと決めつけるのはどうかと思う。
この手紙だが、実はかなりアヤシイものである。
今枝仁弁護士は次のように書いている。
これは私は、手紙の相手が酷いと思います。仮に相手をA君とします。
A君は、検察に「こういう手紙をもらっている」として被告人の手紙を提出しながら、並行して、被告人に手紙を書き、その中で被告人を挑発し、誘惑してことさら不謹慎な手紙を書かせています。
『天国からのラブレター』を差入れ、「こんなん書いてるけど、どう思う?」と感想を求めたのもA君です。ほとんど「おとり捜査」です。
一方被告人は、自分の認識している事実とは異なる事実に反省を求められ、親からも見捨てられ、親しく話や手紙ができるのはA君でした。A君とは拘置所の部屋が隣りだっただけの関係なのに、A君を「親友」と呼びます。
A君には分かってもらいたい、A君に離れていってほしくない、そういう寂しい状態の被告人が、A君が手紙の中でふざけた手紙や本村さんへの非難に迎合して、書いたものに過ぎません。少年記録にも、「その場ごとの期待に合わせて振る舞う順応性を見せる」「周囲の顔色をうかがいながら行動することが習性になっている」等と評価されています。
http://t-m-lawyer.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_6056.html
今枝仁弁護士はこういうことも書いている。
その「友人」は、検察庁に被告人からの手紙を提出しながら、並行して、被告人にふざけた手紙を出して煽り、また返事を検察庁に出すということを9ヶ月間続けていました。
また「天国からのラブレター」を被告人に差し入れたのもその「友人」で、そ
れを揶揄して被告人に本村さんの悪口を書かせています。検察庁に提出を始め
た後で。
これには驚いた。
https://5ch-ranking.com/cache/view/newsplus/1190182460/1-100
『天国からのラブレター』に感動した「友人」が手紙をまとめて検察に提出し、それで文通をやめたかと思っていたら、そうではない。
検察に手紙を提出した後も、被告と文通し、その手紙も検察に渡していたのである。
となると、検察が「友人」に何か指示をしたのではと邪推したくなる。
そもそも「友人」はどうして手紙を出そうと思ったのか。
被告がその拘置所にいること、そして被告の名前をどうして知っていたのか。
また、拘置所にいながら拘置所にいる被告に手紙を出すことができるとなぜ知っていたのか。
テレビ局は「友人」にインタビューしてもらいたいと思う。