アメリカでは、金持ちを優遇し、医療保険制度改革に反対する共和党を南部や中西部の中流層、貧困層が支持しています。
日本でも右傾化した若者は自民党支持が多いそうです。
どうしてかと思ってましたが、A・R・ホックッシールド『壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き』を読んで少しわかったような気になりました。
A・R・ホックッシールドはカリフォルニア大学バークレー校の名誉教授で、おそらく70代です。
右派の人々は裕福な人々に共感する傾向があり、左派は貧しい労働者に心を寄せる傾向がある。
右派と左派の分断はかなりのものだそうです。
いまでは人種より、〝愛党心〟と呼ばれるもののほうが、対立につながる偏見を生みやすくなっている。
以前のアメリカ人は、よりよい仕事や、より安い住宅、より穏やかな気候を求めて引っ越しをしたものだ。しかし、いまはおなじ考えをもつ人のそばで暮らしたくて引っ越すケースが増えているらしい。人々は、感情を共有する小集団に分かれようとしている。
右派は大きな政府に反対します。
ティーパーティーの支持者には、中小企業の経営者や従業員が多いが、小規模事業は、大手独占企業の成長による痛手を受けやすい。
ところが彼らが支持する政治家は、隙あらば中小企業をのみこもうとつけ狙う大企業に肩入れし、独占的な力を強化する法案を後押ししている。
2008年、リーマンショックで多くの人が貯金や家、仕事を失ったのに、右派の多くが自由市場を支持し、政府の過剰規制に反対する。
企業の不正行為や身勝手な破壊行為の犠牲になった人が、なぜ政府の貧困者支援に反対するのだろう。
疑問に思ったホックッシールドは、2011年から2016年まで5年をかけて、ルイジアナ州レイクチャールズ市近辺で、ティーパーティーの中核メンバー40名(40歳以上の保守派中間層、労働者層の白人男女)にインタビューし、行動をともにします。
さまざまな職業(教師、ソーシャルワーカー、弁護士、政府高官)20名にも話を聞きました。
レイクチャールズは人口7万4千人。
大卒の住民は23%、世帯年収の中間値は3万6千ドル。
週3回教会に行く人もいれば、まったく行かない人もいる。
スーパーマーケットではオーガニック食品はまず手に入らない。
映画館では外国映画を上映していない。
小型車をほとんど見かけない。
屋根の上の太陽光パネルはない。
カフェのメニューにあるものは油で揚げてある。
主菜がグルテンフリーかどうか誰も尋ねない。
食事は祈りから始まる。
彼らの情報源は、自分たちの気持ちを代弁してくれるFOXニュースのほか、右派の友人達と交換するビデオやブログに限られている。
ティーパーティーは政治集団ではなく、ひとつの文化なのだ。
ティーパーティーに積極的に活動しているメンバーはおよそ35万人だが、アメリカ人の約20%にあたる4500万人がこの運動を支持している。
人間の活動がなんらかの形で気候変動に影響していると考える人の割合は、民主党員では90%だが、共和党穏健派では59%、共和党保守派では38%、ティーパーティーの主導者は29%である。
このような隔たりが広がったのは、右派がさらに右へ移動したということがある。
現代の基準からすると、過去の保守派は穏健派かリベラル派のように見える。
アイゼンハワー政権の時代には、高所得者に91%の税率が適用された。
アイゼンハワーはインフラストラクチャーへの多額の資金投入を求めたが、いまは共和党下院議員のほぼ全員が、政府がそこまでするのは過剰介入だと考える。
極右勢力は、教育省、エネルギー省、商務省、内務省などの縮小を求めている。
1970年には、大気浄化法に反対する上院議員は皆無だったが、2011年には共和党上院議員は環境保護庁の廃止を要求した。
ティーパーティー支持者は小さな政府を望んでいる。
しかし、ルイジアナ州は予算の44%を連邦政府が負担している。
このことにはなぜか気にかけない。
日本でも右派はさらに右寄りとなり、今や極右と言ってもいいくらいです。
しかし、文化かというと、それは違うように思いますが、どうなんでしょう。