三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

A・R・ホックッシールド『壁の向こうの住人たち』(1)

2023年05月26日 | 

アメリカでは、金持ちを優遇し、医療保険制度改革に反対する共和党を南部や中西部の中流層、貧困層が支持しています。
日本でも右傾化した若者は自民党支持が多いそうです。

どうしてかと思ってましたが、A・R・ホックッシールド『壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き』を読んで少しわかったような気になりました。
A・R・ホックッシールドはカリフォルニア大学バークレー校の名誉教授で、おそらく70代です。

右派の人々は裕福な人々に共感する傾向があり、左派は貧しい労働者に心を寄せる傾向がある。

左派の人々の多くは、右派の共和党とFOXニュースが連邦政府の介入を大幅に排除しようともくろんでいると考えていた。貧困層支援の打ち切りを画策し、権力と富を握る所得上位1パーセント層の力と財産を増やそうとしていると感じていたのだ。一方、右派の人々の多くは、政府自体が権力と富を蓄積したエリート集団であるとみていた。そして、彼らが支配を強めるためにまやかしの大義名分をでっちあげ、安易に金をばらまいて忠実な民主党支持者の票を集めようとしていると感じていた。


右派と左派の分断はかなりのものだそうです。

1960年にアメリカの成人を対象におこなわれた調査では、子供が対立政党のメンバーと結婚したら〝不快感〟をおぼえますかという質問があり、どちらの支持者でも、イエスと答えた人の比率はわずか5パーセントだった。しかし2010年には、この割合が民主党支持者で33パーセント、共和党支持者で40パーセントに増えていた。
いまでは人種より、〝愛党心〟と呼ばれるもののほうが、対立につながる偏見を生みやすくなっている。
以前のアメリカ人は、よりよい仕事や、より安い住宅、より穏やかな気候を求めて引っ越しをしたものだ。しかし、いまはおなじ考えをもつ人のそばで暮らしたくて引っ越すケースが増えているらしい。人々は、感情を共有する小集団に分かれようとしている。


右派は大きな政府に反対します。

右派の多くの人々が、勤労者の家庭を政府が支援するという考え方そのものに反対しているのだ。それどころか彼らは、軍事以外の面では、政府の関与自体をあまり望んでいない。環境保護の強化、地球温暖化の回避、ホームレスの解消といった理想も同じく、固く閉ざされた扉に実現を阻まれている。


ティーパーティーの支持者には、中小企業の経営者や従業員が多いが、小規模事業は、大手独占企業の成長による痛手を受けやすい。
ところが彼らが支持する政治家は、隙あらば中小企業をのみこもうとつけ狙う大企業に肩入れし、独占的な力を強化する法案を後押ししている。
2008年、リーマンショックで多くの人が貯金や家、仕事を失ったのに、右派の多くが自由市場を支持し、政府の過剰規制に反対する。
企業の不正行為や身勝手な破壊行為の犠牲になった人が、なぜ政府の貧困者支援に反対するのだろう。

疑問に思ったホックッシールドは、2011年から2016年まで5年をかけて、ルイジアナ州レイクチャールズ市近辺で、ティーパーティーの中核メンバー40名(40歳以上の保守派中間層、労働者層の白人男女)にインタビューし、行動をともにします。
さまざまな職業(教師、ソーシャルワーカー、弁護士、政府高官)20名にも話を聞きました。

レイクチャールズは人口7万4千人。
大卒の住民は23%、世帯年収の中間値は3万6千ドル。
週3回教会に行く人もいれば、まったく行かない人もいる。
スーパーマーケットではオーガニック食品はまず手に入らない。
映画館では外国映画を上映していない。
小型車をほとんど見かけない。
屋根の上の太陽光パネルはない。
カフェのメニューにあるものは油で揚げてある。
主菜がグルテンフリーかどうか誰も尋ねない。
食事は祈りから始まる。
彼らの情報源は、自分たちの気持ちを代弁してくれるFOXニュースのほか、右派の友人達と交換するビデオやブログに限られている。

ティーパーティーは政治集団ではなく、ひとつの文化なのだ。
ティーパーティーに積極的に活動しているメンバーはおよそ35万人だが、アメリカ人の約20%にあたる4500万人がこの運動を支持している。
人間の活動がなんらかの形で気候変動に影響していると考える人の割合は、民主党員では90%だが、共和党穏健派では59%、共和党保守派では38%、ティーパーティーの主導者は29%である。

このような隔たりが広がったのは、右派がさらに右へ移動したということがある。
現代の基準からすると、過去の保守派は穏健派かリベラル派のように見える。

アイゼンハワー政権の時代には、高所得者に91%の税率が適用された。
アイゼンハワーはインフラストラクチャーへの多額の資金投入を求めたが、いまは共和党下院議員のほぼ全員が、政府がそこまでするのは過剰介入だと考える。
極右勢力は、教育省、エネルギー省、商務省、内務省などの縮小を求めている。
1970年には、大気浄化法に反対する上院議員は皆無だったが、2011年には共和党上院議員は環境保護庁の廃止を要求した。

ティーパーティー支持者は小さな政府を望んでいる。
しかし、ルイジアナ州は予算の44%を連邦政府が負担している。
このことにはなぜか気にかけない。

日本でも右派はさらに右寄りとなり、今や極右と言ってもいいくらいです。
しかし、文化かというと、それは違うように思いますが、どうなんでしょう。

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少子化と人口減(2)

2023年05月20日 | 日記

どうしたら人口の減少を食い止めることができるのでしょうか。

50歳で一度も結婚したことがない人の割合を生涯未婚率といいます。
「少子化社会対策白書」によれば生涯未婚率は年々増加しており、1970年には男性1.7%、女性3.3%だったのに対して、2020年には男性28.3%、女性17.8%まで増加している。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00081/111000470/

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」
「あなたは、結婚についてどのようにお考えですか」
1 必ずしたほうが良い 14.0%
2 できればしたほうが良い 54.1%
3 無理してしなくても良い 29.3%
4 しなくて良い 1.7%
「結婚したほうが良い」の合計は68.1%。
「無理してしなくても良い」「しなくて良い」の合計が30.9%。
男性の方が女性よりも「結婚したほうが良い」の割合が高い。
男性の「400万円以上」では、「結婚した方が良い」が78.2%と、「収入はない」、及び「400 万円未満」に比べ10 ポイント以上高い。

「あなたは、あなたご自身の結婚の時期について、どのように考えていますか」
1 すぐにでも結婚したい 9.2%
2 2-3 年以内に結婚したい 21.5%
3 いずれは結婚したい 47.0%
4 結婚するつもりはない 7.0%
5 わからない 15.0%
「結婚したい」の合計は全体で77.7%。
「結婚するつもりはない」とする割合は、7.0%と1割未満にとどまる。
女性(81.9%)の方が男性(73.2%)よりも「結婚したい・計」の割合が高い。
男女とも20代の方が、30代よりも「結婚したい・計」が高い。
「結婚するつもりはない」は30代男性(12.6%)で、「すぐにでも結婚したい」は30 代女性(21.7%)でそれぞれ最も高い。
男女とも、「正規雇用」の方が、「非正規雇用」よりも「結婚したい・計」の割合が高い。特に、男性では、「正規雇用」(78.5%)が、「非正規雇用」(62.1%)を約16ポイント上回っている。
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/research/h26/zentai-pdf/pdf/2-2-2-2.pdf
結婚したほうがいい、結婚したいと考えている人のほうが、結婚しなくていい、結婚するつもりはないと答える人よりもはるかに多いわけです。

「結婚生活をスタートさせるにあたって必要だと思う夫婦の年収(税込み)は、どのくらいだとお考えですか」
1 100万円未満 0.1%
2 100万円~200万円未満 1.3%
3 200万円~300万円未満 6.6%
4 300万円~400万円未満 19.8%
5 400万円~500万円未満 23.2%
6 500万円~600万円未満 20.8%
7 600万円~800万円未満 12.8%
8 800万円~1000万円未満 2.8%
9 1000 万円以上 1.2%
10 収入は関係ない 2.9%
11 わからない 7.5%
全体では平均490.3万円。
男女間で大きな差はないが、男女とも30代の方が、20代よりも必要と考える年収額平均が高い傾向にある。
「未婚」(497.9 万円)の方が、「既婚」(484.2 万円)よりも、必要と考える年収額平均が、14万円ほど高い。 
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/research/h26/zentai-pdf/pdf/2-2-2-3.pdf

結婚するかしないかの大きな要因の一つが収入のようです。
国税庁の「民間給与実態統計調査」(2021年)によると20代前半(20歳~24歳)の平均年収が269万円で、男性328万円、女性249万円、20代後半(25歳~29歳)の平均年収は371万円で、男性404万円、女性328万円です。
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2021/pdf/002.pdf

ところが、20代で年収300万円未満の男性が49%、30~34歳でも年収300万未満は43%だそうです。
https://news.yahoo.co.jp/byline/arakawakazuhisa/20220414-00291339

結婚観が違ってきているので単純には言えませんが、結婚したいけど、収入が少ないので結婚できない人が多いわけです。
となると、まずは正規雇用を増やし、子育てのできる収入にし、国は助成金を出すといった施策を行わないと、少子化は解決しないと思われます。

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少子化と人口減(1)

2023年05月14日 | 日記
世界人口増、鈍化傾向 アフリカは急増
 世界の人口は20世紀以降、技術革新や医療の発達などにより、増加の一途をたどってきた。国連によると、1950年に約25億人だった人口は2022年には80億人に到達。86年に104億人でピークに達し、その後は微減が始まると推計されている。
 22年の世界の人口は①中国(14億2600万人)②インド(14億1200万人)③米国(3億3700万人)④インドネシア(2億7500万人)の順だったが、23年4月にインドが中国を上回り、50年は①インド(16億6800万人)②中国(13億1700万人)③米国(3億7500万人)④ナイジェリア(3億7500万人)の順になると予測されている。
 しかし、世界全体の人口増加率は鈍化傾向だ。20年には1950年以降で初めて1%を割り込んだ。1人の女性が生涯に産む子どもの数に当たる合計特殊出生率は世界全体で、1950年の4・86から21年には2・32まで下落。22年から50年の間、61の国と地域でそれぞれ人口が1%以上減少すると予想されている。世界全体で65歳以上の高齢者の割合は22年の10%から50年に16%に上昇し、国連は「年金の持続可能性を改善するなど公的制度の見直しをすべきだ」と指摘する。(毎日新聞2023年5月8日)。

https://mainichi.jp/articles/20230507/k00/00m/030/106000c

石弘之『砂戦争』に2100年の世界の人口予想が書かれています。
ワシントン大学の研究者2020年の論文で、2100年の世界人口は88億人にとどまり、国連が予測した人口よりも21億人も少なくなると発表した。
出生率の低下と、人口の高齢化が原因だとしている。
日本、スペイン、イタリア、タイ、韓国など20か国以上で、2100年までに人口が半減する。
中国は14億人から7億3000万人に減る。

2019年に出版された『2050年世界人口は大減少』は、2100年には70億から80億人の間に収まると予言している。

発達途上国で女性の教育水準が上がれば出生率が下がる。
女子の教育期間が1年伸びると、出生率が10%下がる。
都市生活者は生活や教育の支出増で出生率が低下する。

都市に住む人の割合が増えている。
1950年 30%
2018年 55%
農村人口が減っているわけです。
食料のことを考えると問題だと思いました。

日本の人口は2015年の国勢調査で1億2709万4745人と、初めて人口減少した。
2022年の総人口は約1億2494万7千人、日本人人口は約1億2203万1000人です。
年間出生数は2016年に100万人を割り、2022年は79万9728人になりました。

国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口。
https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp_zenkoku2023.asp
総人口:出生中位(死亡中位)推計(令和5年推計)
2023年 1億2440万8000人
2030年 1億2011万6000人
2040年 1億1283万7000人 
2050年 1億468万6000人
2056年 9965万4000人
2067年 8973万9000人

出生数(2018年の推計)
2030年 81万8000人
2040年 74万2000人
2050年 65万5000人
2060年 58万3000人

死亡者数(2018年の推計)
2030年 160万3000人
2040年 167万9000人
2050年 159万6000人
2060年 156万2000人
高齢者数は2042年がピーク。

国土交通省は「国土のグランドデザイン2050」(2014年)で、サービス施設の立地する確率が50%及び80%となる自治体の人口規模を計算しています。

食料品の小売店、郵便局、一般診療所の存在確率80%は500人だから、その人数規模の集落はこれらの事業が成り立つ。
介護老人福祉施設は4500人で存在確率80%。
銀行は9500人、一般病院や訪問介護事業は2万7500人、大学や映画館は17万5000人で存在確率80%。
https://www.mlit.go.jp/common/001055413.pdf
これ以下の人口だと、これらの施設や事業は成り立たないわけです。

河合雅司『未来の年表』はこんな暗い未来を予想しています。
人口減により、労働者不足で産業が衰退する。
介護職の不足、警察官・消防士などの人員確保が困難、生活保護受給者の激増と財政の悪化など。
2018年、全国の空き家数は848万9000戸、全住宅の13.6%を占めている。
2033年の総住宅数は約7126万戸で、空き家数は2167万戸、空き家率30.4%となる。
地価は下落し、銀行が破綻する。

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人口と寿命

2023年05月09日 | 

人口増加の要因の一つが寿命が延びたことです。

保立道久『中世の女の一生』に、父母によって売買された子供の年齢は、文書に残された事例ではほぼ7歳から15歳となっているとあります。
乳幼児の死亡率が高いため、子供が7歳になるまでは名前をつけなかったそうです。

七歳以前は、葬式も仏事もしない。普通は、袋に入れて、山野に捨てる。(「仲資王記」1207年)
七歳以下は海川に捨て、七歳以上は下人に売る。(「異本塔寺長帳」1402年)

飢饉になれば、痩せ細った子どもたちは山野に放棄された
鎌倉時代の平均寿命の推定値は24歳。

鬼頭宏『人口から読む日本の歴史』によると、江戸時代は女より男の平均寿命が長かった。
妊産婦の死亡が多いから。
江戸時代初期の女性の平均死亡年齢は20代後半、男性は30代半ばで、この数字には2歳以下は入ってない。

農村のほうが都市よりも寿命が長かった。
江戸など大都市は人口密度が高く、栄養不足で伝染病が蔓延したので、農村より死亡率が高かった。

平均寿命は江戸時代中期では40歳くらい。
19世紀中ごろまで、40歳以上生きた人はまれ。
明治時代・大正時代は、男性の平均寿命は43才前後。

乳幼児の死亡率が高かった。
6歳に達するのが10人のうち7人以下。16歳まで生きるのは5~6人だった。
1702年の5歳までの乳幼児死亡率は50%以上。
江戸時代後半、出産のうち10~15%が死産。20%が1歳未満で死亡。
明治初期もほぼ同じ。
乳幼児死亡率が高かったため、0歳より5~6歳のほうが平均余命が長い。

奉公人は結婚できないし、低賃金の労働者は晩婚なので、結婚する年齢に達するまでに半分が死んだ。
そのため、都会では出生率は低かった。
だから、江戸時代は人口があまり増えていない。

キム・トッド『マリア・シビラ・メーリアン』に、17世紀のドイツでは、女は40歳までに10~12回妊娠するのが普通だったとあります。
多産多死はヨーロッパでも同じだったようです。

阪本順治『せかいのおきく』は安政5年から文久元年の話ですから、コレラが大流行した時です。
安政5年(1858)、コレラで23万~26万人(江戸の人口は約100万人)が死亡した。(死者数を3~4万人、10万人とするサイトもあります)
町ごとに50、60人から百余人の死者が出て、火葬しきれない棺が山積みになった。
https://www.archives.go.jp/exhibition/digital/tenkataihen/epidemic/contents/50/index.html
ちなみに、スペイン風邪の死亡者は日本で74万人、内地では45.3万人。

大雨が降れば便所から糞便があふれるのですから、コレラが流行するのもわかります。
汚穢屋(おわいや)は江戸市中の家の糞尿を買い取り(映画では50文)、農家に売るのが仕事です。
農家の肥溜めに糞尿を入れる際、こぼした糞尿を手で肥溜めに入れる場面がありました。

山際素男さんは、1960年ごろにインドの大学に留学していた時の体験を『不可触民と現代インド』に書いています。
友人の家に遊びに行った時、人糞が山盛りになっている大きな壺を頭に載せた女性を見かけた。
壺を両手で支えて外に出て行き、道の脇に止めてある大きな箱車の荷台の屋根の一部を開き、その中にどさっと中身をぶちまけた。
そして、再び壺を頭に載せ、トイレに戻した。
バンギーというクラスの人びとは、街角で汚物、ゴミの清掃をさせられているので、疫病にまっ先にやられる。

芥川龍之介『尼提』は、便器の中の糞尿を始末する除糞人と釈尊の話です。
「糞尿を大きい瓦器の中に集め、そのまた瓦器を背に負った」と芥川龍之介は書いています。
『賢愚経』がタネ本だそうです。
「尼提 持一瓦器 盛滿不淨 欲往棄之」とあるので、背負ったかどうかはわかりません。
いずれにせよ、糞尿の処理の仕方が2500年前とあまり変わっていないわけです。

現在のインドでもアウトカーストの人が糞尿の処理をしているそうです。
「素手で排せつ物を処理するインド「最下層カースト」の悲哀」
https://courrier.jp/news/archives/187951/
3日に1人が死亡しているとあります。

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人口と食料

2023年05月01日 | 

人類はどのように人口が増えていったのでしょうか。
C・W・マリーン「祖先はアフリカ南端で生き延びた」(「日経サイエンス」2010年11月号)にこうあります。

約19万5000年前から約12万3000年前まで、地球は長い氷期が続いた。
この時期の気候は寒冷で乾燥しており、アフリカ大陸のほとんどは住むのに適さない土地になった。
この氷期の間に人口は急激に減少し、子どもを作ることができる年齢の人は、1万人以上からほんの数百人になった。
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/1011/201011_040.html
6~7万年前、ユーラシア大陸に渡った群れの人口は数百から数千だった。

宮路秀作『経済は地理から学べ! 』によると、人口増と食料の供給は大きな関係があります。
ある地域における収容可能な人口数のことを可容人口という。
可容人口は、就業機会と食料供給量で決まる。
食料を自然界から獲得していたため、食料が安定して手に入らず、人口はさほど増えなかった。

ところが、1万年前の最終氷期の終了によって温暖化し、メソポタミアを中心とした西アジアで小麦の栽培が始まると、人口が急増した。
人口500万人だったのが、紀元0年には2億5千万人になった。

加藤徹『西太后』でも人口と食料の関係について書かれています。
中国では、一つの王朝の寿命はせいぜい2百数十年である。
ある王朝の建国当初は人口が少なく、農民1人あたりの農地面積も広いが、平和が続いて人口が急増すると1人あたりの可耕地面積も激減し、最低限の食糧の自給も不可能になる。国民は困窮し、国力は低下し、内乱や外国の侵攻によって社会は混乱する。
飢饉や戦争で人口は減少し、最後に王朝が倒れ、新しい王朝が始まる。その繰り返しだった。

康煕帝のころの人口は1億人。
その後の150年間で4倍に急増し、西太后が生まれる1835年の直前に4億人になった。
当時、人類の3人に1人は清朝人だった。
人口爆発の結果、1人あたりの農地面積は激減し、社会は困窮化し、官僚機構だけが肥大し、清朝の国力は衰えた。

鬼頭宏「「歴史人口学」からみる 食と人口の関係」によると、食料と人口の関係は日本でも同じです。

人口は農業技術の発達などにより増えるが、その一方で、人口増加による食料不足、社会の困窮、気象条件、干ばつ、飢饉、疫病などで減ることもあり、増減をくり返しながら、次第に増えていった。

食料生産の増加により、弥生時代の59万人から、奈良時代~鎌倉時代にかけて10倍以上の600万人から700万人くらいに増加する。
鎌倉時代から江戸時代に入る頃までの人口動向は資料がなくわからないが、15世紀の人口は1000万人と推定されている。

戦国期に1200万人になり、江戸中期に人口を3000万人に増える。
18世紀の人口は停滞期となり、最も多かった時に3200万~3300万人だった人口が、18世紀末には3000万人を切った。

18世紀の人口減退からの回復は18世紀末から始まって、19世紀に入るとほぼ順調に進む。
凶作や疫病がない状態が続いて出生率も高まり、農村の産業発展によって生活に余裕が生まれ、その需要増加が経済成長を促した。
明治維新以降は人口が急上昇し、1872年に人口は3481万人、1900年には4385万人になる。
https://www.yakult.co.jp/healthist/243/img/pdf/p02_07.pdf

国立社会保障・人口問題研究所HPに、世界と日本の人口の推移と推計があります。
世界の人口です。

紀元前7000~6000年 500万~1000万人
西暦0年 2~4億人
1650年 4億7000万~5億4500人
1800年 8億1300万~11億2500万人
1900年 15億5000万~17億6200万人 
https://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2022.asp?fname=T01-09.htm

世界の人口は80億人弱。
地球全体での食料の最大供給量はどれくらいなのでしょうか。
いささか心配になってきます。

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