受刑者は税金で優雅な刑務所暮らしをしていると思っている人がいるようです。
受刑者一人あたり、どれくらいのお金がかかっているのでしょうか。
ネットで調べると、年間約300万円だそうです。
ただし、刑務官の人件費などを含む金額です。
『犯罪白書』には、「平成31年度の刑事施設の被収容者一人一日当たりの収容に直接に必要な費用(予算額)は、1、924円である」とあります。
この金額には人件費などはおそらく含まれていないと思います。
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/65/nfm/n65_2_2_4_3_2.html
1924円×365日=702,260円
つまり受刑者一人当たりの経費は一年に約70万円です。
平成30年末の受刑者は44,186人なので、
702,260円×44,186人=310億3006万360円
全受刑者にかかる経費は約310億円。
ちなみに、ニューヨーク市では受刑者1人当りにかかる経費が年々増加し、2019年は「受刑者にかかる費用は1日当り約925ドル(約10万円)と過去最高だった。また、受刑者1人当たりの年間費用も33万7524ドル(約3670万円)と、499ドル(約5万4200円)だった2014年から85%増加していた。同会計監査官は、職員の残業代や人件費の増加が経費増大につながったと分析している」と、ネットの記事にありました。
https://www.dailysunny.com/2019/12/10/nynews1191210-5/
日本と計算の仕方が違うのかもしれませんが、日本の約10倍かかっているわけです。
日本では、受刑者は刑務作業を行なっており、その収入は国庫に入ります。
平成29年度の刑務所作業収入は約39億円です。
http://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei_kyouse10.html
受刑者は国の財政に寄与しているわけです。
・作業報奨金
作業に就いた受刑者には作業報奨金が支給されます。
作業報奨金について知人に教えてもらったり、ネットで調べたりしました。
作業報奨金とは、その人の等工の基準額に作業時間をかけて計算する。
それに作業態度や作業成績、危険手当、延長作業などの増加分が加算される。
等工は十等工から一等工まで10段階ある。
最初は十等工から始まる。
順調に昇等しても、一等工まで3年以上、三等工には22か月かかる。
作業はA、B、Cに区分される。
特別な理由がなければ、B作業(一般工場の機械を使わない作業や座業)は三等工が上限、C作業(居室内の作業)は五等工が上限となっている。
基準額(時給)は十等工から、7.3円、9.4円、12.3円、15.5円、19.9円、22.4円、27.8円、33.7円、41、7円、そして一等工の52、9円となっている。
基準額は毎年4月に更新される。(平成27年以降は増減していない)
施設や作業の内容が違っていても、同じ等工なら基準額は同じ。
紙折りも金属工場も洗濯や内掃も、五等工なら22.4円が1時間の計算額になる。
この基準額に割増が上乗せされる。
等工の基準額プラス割増分に作業時間をかけた金額が作業報奨金となる。
十等工だと、月に800~900円くらい。
懲罰を受けて他工場に転業すれば、十等工に落ちるのが原則。
一等工の人が十等工になれば、作業報奨金は10分の1以下になる。
作業報奨金は全国の全受刑者平均で月4000円ぐらい。
長期の刑務所は作業報奨金の平均額は5000円程度になる。
長期刑務所の場合、一等工が多く、割増も短期よりもらっている(無事故が多いことと、同じ作業を数年しているから)ので、作業報奨金の平均額が高くなる。
刑の確定から無事故で進んだ人で、月に1回集会に出れば、丸一年で約2万円、丸二年で5万円弱、丸三年で10万円ほど貯まる。
・制限区分
制限の緩和とは、生活や行動の制限を緩和していく制度。1種から4種までの制限区分がある。
1種は、舎房に鍵をかけなくていい、刑務官の同行なしで移動できる、面会は刑務官の立会いなし、外部に電話ができ、外出ができるなど。
3種は、舎房に鍵をかける、移動は刑務官の同行が必要、面会は刑務官の立会い必要など。
4種は、舎房に鍵をかける、基本的に舎房から出れない、面会はできないなど。
http://prisonfile.info/yugu.html
・外部通勤作業、外出及び外泊
1種は外部通勤や外泊などが認められる。
外部通勤作業・外出及び外泊の制度は、開放的施設で処遇を受けている受刑者や、仮釈放を許す決定がされている受刑者などに対して、社会復帰のために必要があると認める場合には、刑事施設の職員の同行なしに、刑事施設外の事業所に通勤、業務の従事、職業訓練を受けさせたり、刑事施設の外に外出や外泊することを許可したりする制度。
http://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei_kyouse03.html
長期の施設では外部通勤作業はほぼ認められない。
作業報奨金は基準額が決まっていて、割増が加算されるが、外部通勤も例外ではなく、基本月額の100分の100を超えない金額を加算することができる。
業種にもよるが、溶接などで500円ちょっとを切るぐらい。
最高でも1時間で529円の手当ということになる。
事業所が国に支払う金額は不明。
・優遇措置
優遇措置とは、受刑者を1類から5類までの優遇区分に指定し、その優遇区分に応じて、手紙の発信通数、嗜好品の購入、テレビの視聴などの待遇を与えること。
1類は、テレビは自由視聴、お菓子は月2回自費購入可、集会に出席してビデオを視聴、手紙は月に10通、面会は月に7回などで、手紙と面会は随時。
月1回お弁当(ホカ弁やコンビニのおにぎり、麺類)が自費で購入可という施設もある。
3類は、テレビは平日が18時~21時、休日が8時~10時、18時~21時、手紙は月に5通、面会は3回など。
5類はお菓子の購入、集会の出席はできない、手紙は月に4通、面会は月に2回など。
http://prisonfile.info/yugu.html
もっとも、知人によると、手紙や面会は施設によってことなる。
テレビの視聴もそうで、ある施設では平日19時~21時、休日9時~11時半、14時半~16時、19時~21時で、相撲の時は休日17時~18時で番組指定となっている。
テレビの自由視聴とは、おそらく刑務所長の裁量によるものではないかとのこと。
面会や手紙の回数は下限なので、それ以上ということもある。
大規模の刑務所では、面会が多いので面会時間は短いし、手紙の中身を確認するので発信も下限に近い。
面会は一日に2回してもかまわない。
たとえば、5類で月2回しか面会できなくても、月末に午前と午後に違う人と面会し、翌日(翌月)に前日と同じように面会することは可能。
2類以下の手紙の発信は工場によって発信の曜日が決まっている。
平成31年、受刑者の優遇区分別人員は、第1類852人(2.0%)、第2類6、767人(15.6%)、第3類1万8、450人(42.5%)、第4類3、753人(8.7%)、第5類4、025人(9.3%)、指定なし9、520人(22.0%)。
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/n66_2_3_1_4_3.html
調査・懲罰になると、優遇措置は、たとえば2類が5類になり、制限区分は2種が3種になり、作業報奨金は15分の1ぐらいになる。
さらに、クラブ活動は退会。
施設によって優遇措置は基準が大きく異なる。
制限区分も施設によってかなり基準が異なる。
等工や作業報奨金と関係する施設もある。
たとえば、2類になるのに継続無事故が必要となる。
刑務所は気楽だったという自分の体験を書いた記事をネットで時折見かけますが、優雅なものではないようです。
たとえば、舎房にはエアコンがないので、夏の暑さは特に大変だと思います。
具合が悪くなっても、すぐに医者に診てもらえるわけではないようですし。