日本会議
上杉聰『日本会議とは何か』、菅野完『日本会議の研究』、青木理『日本会議の正体』を読み、日本はきわめてヤバイ状況にあるのではないかと不安になりました。
青木理氏は、日本会議を「戦後日本の民主主義体制を死滅に追い込みかねない悪性ウィルスのようなものではないかと思っている」と批判しています。
日本会議が結成されたのは1997年。
会員は個人が約35000人、役員総数62名のうち、24名が宗教関係者によって占められている。
日本会議に関わっている、神社本庁、霊友会、念法眞教、崇教真光、解脱会、黒住教、佛所護念会教団、オイスカ・インターナショナル、倫理研究所、モラロジー研究所などの宗教団体は、日本会議や関連団体が実施する数々の運動やイベントに多数の信者を動員する。
この動員力こそが日本会議の特徴で、日本会議は、選挙に際して公言したとおりの数字を確実に出すから、政治家は日本会議に魅力を感じる。
第三次安倍内閣の全閣僚のうち16人、84.2%が日本会議国会議員懇談会に参加している。
オーストラリア・ABCテレビ「日本会議とは、日本の政治をつくりかえようとしている極右ロビー団体である」
フランス・『ル・モンド』紙「日本会議とは、安倍氏も所属し、1930年代の日本の帝国主義を擁護する強力な超国家主義団体である」
ケネス・ルオフ(ポートランド州立大学教授)は、アメリカのキリスト教原理主義と日本における宗教右派の新たな台頭を比較し、「アメリカの最右派団体、キリスト教連盟と同じ」と言っている。
日本会議の実態は宗教右派団体に近い政治集団である。
こうした宗教勢力の台頭という様相は、中東のイスラム原理主義運動などにも及ぶ世界的な動向の一環として見るべきであろうと、上杉聰氏は書いています。
日本会議の源流となったのが生長の家に出自を持つ右派の政治活動家たちであり、組織運営面で生長の家の出身者が日本会議の中枢を支えている。
動員面、資金面、影響力など主柱的に支えているのが神社本庁である。
日本会議と関連団体が長年にわたって続けてきた「草の根市民運動」は、
・国旗国歌法の制定
・外国人の地方参政権反対
・教育基本法の改正
・女系天皇容認の皇室典範改正反対
などで成果をあげている。
育鵬社の歴史と公民の教科書が大阪で採択された経緯のえげつなさが、『日本会議とは何か』に書かれてありますが、これも市民運動の成果でしょう。
日本青年協議会の会長で日本会議事務総長の椛島有三、日本政策研究センターを率いる伊藤哲夫は、「生長の家学生運動」の出身である。
「生長の家原理主義」の中心団体である「谷口雅春先生を学ぶ会」には、稲田朋美、衛藤晟一などの安倍側近の政治家、百地章、高橋史朗など御用学者・言論人が参加している。
生長の家の教祖である谷口雅春を信奉する人たちは、日本国憲法やそれに象徴される戦後体制を嫌悪し、憲法「改正」運動は憲法の存在を認めるものであり、納得できないらしい。
憲法と戦後体制を突き崩すため、小異を捨てて大同につき、日本会議という政治集団に結集したと、青木理氏は書いています。
もっとも、生長の家は政治活動から離れ、2016年6月には「今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針」という声明文の中で、「当教団は、安倍晋三首相の政治姿勢に対して明確な「反対」の意思を表明するために、「与党とその候補者を支持しない」ことを6月8日、本部の方針として決定し、全国の会員・信徒に周知することにしました」と、はっきり宣言しています。
では、谷口雅春はどういう思想の持ち主なのか。
「極右的で、超復古主義としか言いようのない政治思想であり、自民族中心主義に陥りかねない」と青木理氏は書き、谷口雅春の著書から文章を引用しています。
『皇道霊学講話』(1920年)
谷口雅春『占領憲法下の日本』(1969年刊)
谷口雅春の唱える、国民主権の否定と天皇主権、祭政一致へのかぎりない憧憬と政教分離の否定、明治憲法への復元、国家重視と人権の軽視は、右派系の文化人、政界主流の与党幹部、財界人らに信奉されているそうで、三島由紀夫、鳩山一郎、三木武夫、平沼赳夫たちが谷口雅春に私淑したそうですが、信じられない話です。
政治的な力を持つ人たちが、今も谷口雅春を信奉しており、日本政策研究センターの目的は、憲法の緊急事態条項の追加、家族保護条項の追加、9条の改正だけでなく、最終的な目標は明治憲法の復元にある。
安倍政権が実現させようとしてのがまさにこれですから恐い。
天皇、皇后、皇太子への誹謗中傷を書く右派ブログがありますが、この人たちは、天皇や皇太子が「憲法を遵守する」と明言しているのが気にくわないのかもしれません。
日本会議などで実務を担当している谷口雅春信奉者たちは、きわめて真面目であり、勉強熱心で、富や名声を求めず、時には裏方に徹して尽力する。
鈴木邦男氏は大学時代、生長の家の学生道場で生活しています。
生長の家というのは当時、僕ら右派学生にとって、『宗教』という以前に『愛国運動をやっているところ』だと思っていました
生長の家が政治家との決別を宣言した後も、生長の家に出自を持つ者たちは、谷口雅春の政治的な教えを信奉しつづけ、右派の組織づくりに全精力を傾けつづけ、現在の日本会議があるわけです。
谷口雅春は自民族優越主義、天皇中心主義であり、明治憲法・教育勅語の復活を目指していました。
ところが、安倍内閣はアメリカの言いなりで、憲法を変えることで国の形を変えたとしても、対米追随という戦後体制は変わらないでしょう。
なのに、そのことに谷口雅春原理主義者はなぜ不満を持たないのか、不思議です。