三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

バンディ・リー編『ドナルド・トランプの危険な兆候 精神科医たちは敢えて告発する』(2)

2020年01月11日 | 

バンディ・リー編『ドナルド・トランプの危険な兆候 精神科医たちは敢えて告発する』を読み、安倍首相や麻生財務相たちにも精神科医や心理学者が診断をしてほしいと思いました。
しかし、「はじめに」でロバート・ジェイ・リフトンが「悪性の正常」ということを書いていますが、私たちにも大きな責任があるように感じます。

物の見方も、考え方も、行動も、望ましいと考えられているもの、正常と考えられているものが、その社会の主流となるのが常である。
ところが、時には、本来は悪とみなされるべきものが正常の基準内に入れられることがある。
それが「悪の正常」である。
アメリカ社会全体に、正常でないのに正常とされてしまっている「悪性の正常」が定着しつつある。
トランプ大統領と彼の政権が作り出した空気も悪性の正常の一つの形である。

トランプは空想と現実の区別がつかない。アメリカ大統領が必ず直面する危機を管理する能力がない。しかも彼はアメリカの法も掟も尊重せず、民主主義の存続を脅かしている。しかしトランプが大統領として行動している以上、彼の行動はアメリカ民主主義にそったもの、すなわち正常であるとみなされがちである。このようにして、危険な大統領が正常扱いされるようになった結果、悪性の正常がアメリカを席巻しつつあるのだ。


悪性の正常の維持には、専門家の集団による支持が最も有効である。
たとえば、外国からの核攻撃に備えるように煽る専門家、地球温暖化を認めないように煽る専門家など。

日本では、集団的自衛権の行使を可能にする安保法案は憲法違反だと、憲法学者の9割が表明しましたが、安保法制が成立しました。
公文書の改竄、破棄、隠匿などがまかり通っていますが、大場弘行「公文書クライシス 官邸の隠蔽体質 もはや民主主義ではない」によると、記録そのものを作らなくなっているそうです。

驚いたのは、首相の下で重要政策や大規模災害対応を担当する内閣官房が1年間を通じて70回以上、首相と面談をしていたのに、打ち合わせ記録を一件も作っていなかったことだった。
 未作成の理由は「記録が必要な打ち合わせがなかった」と説明されたが、真相を省庁幹部らから聞いて耳を疑った。「官邸は情報漏えいを警戒して面談に記録要員を入れさせない」「面談中にメモを取ると注意される」。首相が発言したことの記録が事実上禁じられているのだ。(毎日新聞12月26日)

今の日本は健全な国家ではなく、「悪性の正常」状態になっていると思います。

ジュディス・ルイス・ハーマン、バンディ・リーは「プロローグ」にこう書いています。

大衆からの歓声や賛美によって肥大した権力者の自我は、グロテスクな誇大妄想にまで変化するであろう。社会規範に違反しても、さらには犯罪を犯しても、罰を受けなければ、彼の社会病質的な傾向は憎悪(増大、悪化の間違い?)するであろう。恐怖や嘘や裏切りを駆使するリーダーはどんどん孤立して被害妄想的になり、自分の側近にさえ猜疑の目を向けることになるに違いない。

「権力者」とはトランプのことでしょうけど、「安倍晋三」と置き換えてもいいように思います。

「悪性の正常」が常態になるのは、国民のあきらめも大きいです。
どんなことがあっても、「どうせどうにもならない」と思っています。

2019年に安倍晋三首相が主催した「桜を見る会」を巡り内閣府が、飲食物提供や設営の業務を18年に請け負った2社と入札公告前の19年1月に打ち合わせをしていたことが7日、分かった。」(共同通信1月7日)

通常ではあり得ない事柄が次々と明らかになっても、何も変わりません。
これで正常と言えるのでしょうか。

ヘンなのにこんなの普通と言う異常 万能川柳

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