毎年恒例のキネマ旬報ベストテンの予想です。
まず日本映画から。
『万引き家族』
カンヌ映画祭パルムドールなので。
『寝ても覚めても』
ヨコハマ映画祭第1位だが、主人公にまったく共感できず腹が立った。
『カメラを止めるな!』
『菊とギロチン』
『日日是好日』
『止められるか、俺たちを』
『孤狼の血』
『ニッポン国vs泉南石綿村』
『斬、』
『きみの鳥はうたえる』
佐藤泰志原作の映画はこのあたりが定位置。
以上がベスト10。
『鈴木家の嘘』
『生きてるだけで、愛。』
『愛しのアイリーン』
『モリのいる場所』
『教誨師』
『ギャングース』
『素敵なダイナマイトスキャンダル』
『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』
『ここは退屈迎えに来て』
『リバーズ・エッジ』
これで20位まで。
『海を駆ける』
『犬猿』
『ちはやふる ー結びー』
『焼肉ドラゴン』
『検察側の罪人』
『来る』
『ハード・コア』
これらもいいところに入るのではないでしょうか。
私のベスト5
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』
『カメラを止めるな!』
『生きてるだけで、愛。』
『ここは退屈迎えに来て』
『リズと青い鳥』
外国映画です。
『スリー・ビルボード』
『シェイプ・オブ・ウォーター』
『ファントム・スレッド』
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
『15時17分、パリ行き』
クリント・イーストウッドだが1位は無理か。
『アンダー・ザ・シルバーレイク』
『レディ・バード』
『ボヘミアン・ラプソディ』
『心と体と』
アメリカ映画ばかりではなんなので。
『犬ヶ島』
ウェス・アンダーソンだし、日本を舞台にした映画は上位に来る。
以上がベスト10。
『運命は踊る』
『1987、ある闘いの真実』
『君の名前で僕を呼んで』
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』
カンヌ映画祭パルムドールだけど。
『判決、ふたつの希望』
『2重螺旋の恋人』
フランソワ・オゾンはこのあたりが定位置。
『ハッピーエンド』
ミヒャエル・ハネケもこのあたり。
『苦い銭』
王兵もこのあたり。
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』
これで20位まで。
上位候補です。
『ナチュラルウーマン』
アカデミー外国語映画賞だけど。
『ラッキー』
『アリー/ スター誕生』
『リメンバー・ミ-』
『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
『華氏119』
『女と男の観覧車』
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』
などなど。
ホン・サンスの作品が何本の公開されましたが、どれが上位に入るかはわからなかったので。
『ROMA/ローマ』は劇場公開ではないから対象外ということなんでしょうか。
私のベスト6
『スリー・ビルボード』
『アンダー・ザ・シルバーレイク』
『ラブレス』
『アイ,トーニャ』
『心と体と』
『ぼくの名前はズッキーニ』
旧作はこの4本がよかったです。
『狐が呉れた赤ん坊』
『赤ちゃん教育』
『ラストワルツ』
『スパイナル・タップ』
江川紹子さんはオウム真理教事件について、「個々の事件の動機、どういう方向に教団が進んでいたのか、という点もほぼ分かりました」と言っています。(2018年8月22日の対談、『年報死刑廃止2018』所収)
しかし、早川紀代秀さんはこのように書いています。
このまま刑が執行されたなら、〝正解〟は永遠に謎のままとなるでしょう。
ぜひとも、ご本人の意見を聞いてから、死にたいものです。
アンソニー・トゥー『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』にもこのように書かれています。
オウム真理教事件がなぜ起きた、麻原彰晃は何を考えていたのか、死刑執行によって事件の真相が明らかにならないまま闇に葬られたわけです。
麻原彰晃だけではありません。
菊地直子さんは都庁小包爆弾事件において原料をアジトに運んだが、それが何だったか知らなかったと主張。
中川智正んは菊地直子に対してむしろ有利に証言した。
ところが、井上嘉浩さんは菊地直子さんが運んだ中身が何であるか知っていたと証言している。
高橋克也さんの裁判でも井上嘉浩さんと中川智正さんの証言は正反対になっている。
そして、アンソニー・トゥー氏はこのように書いています。
井上は中川氏、遠藤をはじめ他の多くの信者の事件への関わりを重くしようとしたようだ。
誰の証言が正しいかということもわからないままになってしまいました。
リチャード・ダンジッグ元海軍省長官が中川智正さんや広瀬健一さんたちと面会し、テロについて聞いたと、『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』にあります。
ところが、日本では行政の人や専門家がオウム真理教事件の死刑囚に会ったとは寡聞にして知りません。
仮に日本人研究者からそうした要望があったとして、法務省や拘置所が許可を出すかは疑問です。
なぜアメリカからの要望には応じたのかと思います。
こうした事件を繰り返さないために、日本政府も研究者に依頼すべきでした。
だからといって、オウム真理教事件がなぜ起きたのか、死刑執行によって真相が闇に葬られた、だから執行すべきではなかったと言いたいわけではありません。
それだったら、真相が明らかになれば処刑してもかまわないということになります。
トゥー氏はこんな話を書いています。
そのとおりだと思います。
『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』に、「地下鉄サリン事件21年の集い」では、同じ死刑でも罪の大きさに不公平があるから、これを契機に是正する方法を考えるべきだという意見が出たとあります。
すると、「中国の死刑判決を参考にしろ」と誰かが言ったそうです。
中国では、すぐに執行される死刑判決と、2年の執行猶予がつく死刑判決がある。
後者の死刑判決では、執行するかどうかを、2年の執行猶予期間の犯人の悔悟の具合、服役中の態度を見て決める。
態度がよければ無期懲役に減刑される場合もある。
死刑廃止論者ではないという江川紹子氏も。死刑にも執行猶予をつけられるように、法改正すべきだと説いています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20181228-00109396/
中国の死刑制度は悪くないと思いました。
村上春樹氏はオウム真理教死刑囚の大量処刑について、「胸の中の鈍いおもり 事件終わっていない オウム13人死刑執行」を書いており、その中でこんな文章があります。
ただ、遺族感情というのはなかなかむずかしい問題だ。たとえば妻と子供を殺された夫が証言台に立って、「この犯人が憎くてたまらない。一度の死刑じゃ足りない。何度でも死刑にしてほしい」と涙ながらに訴えたとする。裁判員の判断はおそらく死刑判決の方向にいくらか傾くだろう。それに反して、同じ夫が「この犯人は自分の手で絞め殺してやりたいくらい憎い。憎くてたまらない。しかし私はもうこれ以上人が死ぬのを目にしたくはない。だから死刑判決は避けてほしい」と訴えたとすれば、裁判員はおそらく死刑判決ではない方向にいくらか傾くだろう。そのように「遺族感情」で一人の人間の命が左右されるというのは、果たして公正なことだろうか? 僕としてはその部分がどうしても割り切れないでいる。みなさんはどのようにお考えになるだろう?
https://mainichi.jp/articles/20180729/ddm/003/040/004000c
たしかにオウム真理教事件の判決は公正とはいえません。
アンソニー・トゥー『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』も不公平さを指摘しています。
山形明 VX事件の実行犯。被害者が死亡したが、自首して懲役20年。
林郁夫 地下鉄サリン事件実行犯で2人が死んでいる。教団で果たした役割も大きかった。逮捕されると、すぐに全部しゃべり、警察の罪状糾明に役に立ったので無期懲役。
中川智正氏の弁護士「林はたくさん警察に真実を述べたと言っているが、でたらめなこともしゃべっている」
ところが、自首した人、人を殺していない人が死刑になっています。
岡崎一明 田口事件と坂本弁護士一家殺人事件の実行犯の1人。自首したが、自首が遅すぎるという理由で死刑。
横山真人 地下鉄サリン事件実行犯だが、死者はいないのに死刑。
中川「林郁夫さんが極めて話すのが上手なのに対して、横山君はひどく口下手でした。横山君が林郁夫さんのようなコミュニケーション能力があれば、死刑にはならなかったかも知れません」
土谷正実 サリンを製造したが、何に使われるのか知らなかった。
中川「土谷君は、一連の事件の首謀者ではなく、しかも化学兵器の使用にも直接関わっていないのですが、死刑判決でした」
松本サリン事件では「何に使われるか知らなかった」ので殺人幇助罪とされたが、地下鉄サリン事件でも知らなかったのに、殺意があったとして殺人罪に問われて死刑になった。
井上嘉浩 謀議に加わったが殺人はしていない。
これら死刑になった人たちは、山形明・林郁夫の2人と比べて罪が重いのでしょうか。
村上春樹氏はこんなことも言っています。
裁判官や弁護士に当たり外れがあるわけですが、死刑かどうかが決まるわけですから、運不運ではすみません。
では、麻原彰晃だったら死刑にしてもいいのでしょうか。
地下鉄サリン事件当時、東京地検刑事部副部長だった神垣清水氏はこう語っています。
アンソニー・トゥー氏と高橋シズヱさんのやりとり。
高橋シズヱさん「いいえ、一番恨んでいるのは警察です」
トゥー「それはなぜですか」
高橋「坂本事件のときも、上九一色村の施設建設のときも、警察への訴えはみな無視された。もしあのとき警察が行動を起こしていたら、地下鉄事件も起こらず、主人がなくなることもなかったのです」
そうか、と思いました。
2018年1月25日、高橋克也さんの刑が確定し、オウム真理教事件の裁判が終結しました。
そして、半年後の7月6日と7月26日に13人の死刑囚が処刑されました。
逃亡していた高橋克也、平田信、菊地直子の3名が逮捕されるや、死刑執行までの具体的な日程が検討されたのだと私は思っていました。
というのも、2017年に再審請求中の死刑囚3人が死刑執行をされていますが、このことについて安田好弘弁護士が「昨年の3人の死刑執行は今年のオウム死刑執行を射程距離において、再審請求しているオウムの人たちを執行できるための地ならしとしか思えません」(「FORUM90」VOL.160)と語っているからです。
しかし、アンソニー・トゥー『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』によると、もっと早い時点で執行の準備がなされていたようです。
アンソニー・トゥー氏は1930年生まれ、毒性学および生物兵器・化学兵器の専門家です。
中川智正さんとは拘置所で15回ほど会っています。
2011年11月21日、遠藤誠一の死刑が確定した。
毎日新聞の記者から、法務省は13人のオウムの死刑囚の死刑を2012年の初めに執行する予定だったと聞いた。
そのため2012年3月に、東京拘置所にいる13人のオウムの死刑囚を絞首刑の設備がある7つの拘置所に移送する予定だった。
しかし、執行しようとしていた矢先、2011年12月31日、平田信が警察に自首したので、死刑執行ができなくなった。
共犯の裁判が終わるまでは死刑は執行できないからである。
トゥー氏の推測が正しければ、オウム真理教事件が審理されているころから、執行の日程が考えられていたのでしょう。
このように言い切るからには、トゥー氏には情報がどこかから入っていたのでしょう。
2018年1月、高橋克也は最高裁によって無期懲役が確定した。
トゥー氏は3月に訪日することにしていた。
中川氏はこう言った。
翌14日に中川は広島拘置所に移動した。
どうして中川智正さんは移送が近いことを知っていたのでしょうか。
トゥー氏によると、死刑囚は自分の将来や仲間の消息については案外詳しい。
弁護士を通じてほとんど誰とでもやり取りすることができる。
獄中ではパソコンは使えないので、書いたものを弁護士に渡し、弁護士がメールをする。
そして、他の人の弁護士が代理でタイプしたものが送られてくる。
このようにトゥー氏は書いています。
しかし、早川紀代秀さんはこのように書いています。
夕方の点検が終わってしばらくしたころ、ちょうどリンゴを食べようとしていたやさきに、突然数人が来られて「移送」と告げられ、即房内の荷物全部、ダンボール箱詰めです。入れ終わったものはすべて持って行かれ、後には、お茶もコップもなく、もちろんリンゴは食べそこねて、がらんとした房内で一夜をすごしました。
行き先を尋ねても教えてもらえなかったので、「ひょっとしたら明朝執行か??」と思いつつ寝ました。(『年報死刑廃止2018』)
死刑囚の弁護士だって、いつ移送されるかは知らないでしょうし、まして執行がいつあるかはわかりません。
安田好弘「13人死刑執行という大量虐殺」(『年報死刑廃止2018』)にこうあります。
当の処刑される人たちには、この段階でもまったく知らされていない、ましてや、家族に対しても、また再審弁護人に対しても知らされない。
それと、新実智光さんの妻のメッセージに、7月6日、面会に行ったが会わせてもらえなかった、執行されたと悟った、支援者に電話をすると、昨日の夜にアレフ支部にマスコミがきていたらしい、とあります。
法務省はマスコミにはそれとなく知らせているようです。
死刑囚本人やその家族たちには黙ったままなのに。
おかしな話です。