三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

認知の歪み

2014年10月28日 | 日記

数ある心理療法の中で効果があると実証されたのは認知行動療法だけだと、どこかで読んことがある。
ものの受け止め方や考え方(認知)の歪みに気づき、思考パターンを修正することで、行動が変わっていくということらしい。
たとえば性犯罪者は、たまたま女性と目が合っただけで、「こいつは俺に惚れている」と思い込み、強姦したときも「いやがっているふりをしているだけで、本当は喜んでいる」と決めつける。
こうした考えは歪んでいると、まずは気づかないといけない。

植木理恵『ウツになりたいという病』に、認知療法が対象とするよくある歪んだ思考のパターンが書いてあった。
①大げさに考える拡大解釈思考
仕事でミスをすると、「自分にはこの仕事は向いていない」と思う。

②黒か白かはっきり分ける

一つがダメなら、すべてダメ。この人は嫌いと思うと、やることなすことが気に入らない。

③相手に対する心の読み過ぎ

いつもは愛想のいい人がそっけないと、「自分が失礼なことをしたのか」と深読みする。

④先読みし過ぎる

「面接に落ちたらどうしよう」などと、将来のことを考えて不安を抱える。

⑤結論の飛躍

人がひそひそ話をしていると、「私の悪口を言っているのか」と自分の思い込みだけで結論を出す。

⑥感情の重視

ケンカをし、自分に非があっても、自分は絶対正しいと正当化する。通勤の電車に乗れなくて「今日一日はうまくいかないのかも」と思う。

⑦「~すべき」思考にとらわれる

「ミスをすべきではない」「こう振る舞うべきだ」という自分が決めたルールに縛られる。

⑧自己関連づけ

よくないことが起こると、何でも自分のせいにする。関係ないことでも自意識過剰から自分が関わっていると連想する。喫茶店で席についたら、隣の人が立ち上がって出たら、自分が嫌だからと思う。

こうしたふうに考える人の気持ちはよくわかる。

なぜなら私もそう考えてしまいがちだから。
私は普通に話しているのに「なぜそんなに否定的なのか」とか「マイナス思考だ」と言われる。
自虐的に歪んでいるわけで、まわりの人にとっては迷惑だろうと思う。
でも、井上陽水「あこがれ」に「さみしい時は男がわかる 笑顔で隠す男の涙」という言葉があるが、弱音を吐かない、愚痴を言わない、そんな人に私もあこがれます。
ジェンダーの視点からは問題ありだろうけど。

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「心のノート」

2014年10月24日 | 問題のある考え

ずっと以前に書いたものです。

西鉄バスジャック事件で重傷を負った山口由美子さんの講演を聞いた。
その中で山口さんは、以前は河合隼雄が好きだったが、「心のノート」なんかを作ったりするので嫌いになった、ということを話され、思わず笑う。
私も河合隼雄が嫌いになった一人だから。

河合隼雄文化庁長官が中心となって作った「心のノート」は、文部科学省が全国の小中学校に配布している副読本である。
「お国のために命を投げ出しても構わない日本人を生み出す」(西村真悟衆議院議員)ために教育基本法を改正しようという動きとつながっている。

私が河合隼雄を嫌いになったのはそういうことからではなくて、ニューエイジかぶれだからである。
「心のノート」にもニューエイジの影響があって、「心のノート」5,6年生用に、

わたしたちを生かす自然は不思議な摂理につつまれている。
目に見えない神秘の世界がある。
人間の力を超えたものがある。

という文章があるんですね。
袴谷憲昭『仏教入門』(入門書とは思えない高度な内容だが、一読三嘆のオススメ)には、

「心のノート」の「心」とはおそらく仏教が否定したアニミスティックな「霊魂」とは無縁のものではないだろう。

と書かれている。
すなわち、ニューエイジと保守反動が手をつないでできたのが「心のノート」ということでなのか。
そういえば船井幸雄もニューエイジと保守反動のごった煮です。

河合隼雄の『宗教と科学の接点』という本も、れれれと思うおかしいところが多々あり、しかしあの河合隼雄先生が書いているんだから私の思い過ごしかと思いました。
「心のノート」は極めてうまくできた本で、予備知識がなしに読んだなら、これまた一読三嘆したかもしれない。
お恥ずかしいことです。

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リチャード・カーティス『アバウト・タイム』

2014年10月19日 | 映画

タイムトラベルものは過去の改変をするわけだから、タイムパラドックスは避けられない。
小説にしろ映画にしろ、どんなに緻密に考えられていても、どこかにほころびがあって、つじつまが合わなくなるように思う。

うまくできていると思うのが、ウォルター・テヴィス「幽明界(リンボ)に座して」(『ふるさと遠く』)で、こんな話です。
「わたし」は死んでから幽明界で座り、人生のさまざまな時点に立ち返って、ちょっとしたこと改善することをしている。
中学校のとき、先生に指されて立ち上がったら、ズボンのボタンがはずれていて、先生に注意されたことがあり、ボタンをかけて立ち上がるというふうにやり直す。
この変化は他の変化を惹き起こすことはない。
人生の特定の場面で、犯した誤ちを訂正することはできるが、重要な点を根本から変えることはできない。
「わたし」は二度結婚し、二度離婚している。
離婚することは変えられないが、妻との修羅場には手を加えることができた。
幽明界で妻たちの関係に必要な変更を加えることで安堵し、罪悪感もない。
だけども……、という話。

私は粗忽な人間なので、つまらないことをよく言ってしまう。

特に飲み会の翌日は自己嫌悪に陥り、死にたくなることがしばしばある。
恥をかいたり、気詰まりになったり、人を傷つけたり、不愉快にさせたり、白けさせたり……。
だから、私もこんなささやかな人生の改変ができたらと本気で思う。

リチャード・カーティス『アバウト・タイム』の主人公は代々の男系は過去に戻ることができる能力を持っている。
その方法はきわめてお手軽。
過去に戻ってやり直しても、失敗すれば、またまた過去に戻ればいいわけで、したいことができるはず。
でも、主人公は、世のため、人のために何かしようとは思わない。
父親は過去に戻っては読書をしたそうで、ディケンズの全作品を三度読んだと言ってる。

ケン・グリムウッド『リプレイ』では、金持ちになる、平穏な生活をする、社会を変革するなどいろんなことを試みる。

『アバウト・タイム』の主人公はいろんなことに挑戦するとか、社会を良くしようとして悩むとか、そんなことはしない。
半径1mの私的な事柄に終始する。

で、私なら何をするか考えたのだが、映画を見て、終わったら3時間前に戻り、別の映画を見る。

そのくり返しで、すべての映画を見る。
あるいは、レストランで食事をし、ちょっと戻って別の店で食べるetc。
自分でもせこいと思うが、主人公も同じことを何度か繰り返していました。

だけど、過去に戻ってやり直したいかと聞かれたら、ためらってしまう。
若い時に戻りたいが、また学校に行って勉強するのはイヤだし、そんな昔ではなくて今日の朝に戻るのも、同じことを繰り返すわけで、面倒な話である。
ちょっと過去に行って、まずかったことを訂正して、そして現在に戻れたらいい。

そこらも『アバウト・タイム』は都合よくできている。

それとか、美人で話が尽きない女性がなぜか壁の花とか、何度も過去に戻ってたら他の人よりも年をとるスピードが速くなるはずなのにとか、突っ込みたいとこはあるけども、楽しく見れたから文句を言いません。
妄想をかきたてる映画でした。

『アバウト・タイム』の主人公は優しくて退屈じゃない。
こういう性格の主人公と、こういう妻だったら、過去に戻ってやり直さなくても幸せな人生を送るのではと思う。

 

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1970年ごろ 懐かしのメロディ

2014年10月15日 | 日記

クリント・イーストウッド『ジャージー・ボーイズ』に『君の瞳に恋してる』が作られたいきさつが描かれている。
いつの曲かと思って調べたら1967年で、フランキー・ヴァリの娘の死は1980年なんだそうで、れれれでした。

フランキー・ヴァリ『君の瞳に恋してる』

中学、高校のころはラジオをよく聞いていたのですが、『君の瞳に恋してる』を聴いて懐かしくなり、どんな曲があったかをネットで検索すると、昔の曲を紹介するサイトがたくさんありました。
以前にも調べたことはあるけど、そのころはYoutubeがなく、曲名だけではどんなメロディかわからないままだったですが、今はいい時代です。
本を読んでて曲名が出てきて、どんなメロディなのかと関心を持っても、いちいちCDを買うわけにもいかない。
だけど、今はYoutubeで検索すればいいんですから。

懐メロのベスト3は『ミスター・マンディ』、『マンチェスターとリバプール』、『悲しき鉄道員』といったところ。

オリジナル・キャスト 『ミスター・マンディ』

ショッキング・ブルー『悲しき鉄道員』

ピンキー&フェラス『マンチェスターとリヴァプール』

これらの曲はいずれもアメリカではヒットしなかったそうです。
私は名前を覚えてるのが苦手なこともありますが、オリジナル・キャストとかピンキー&フェラスといったグループは全く覚えがありません。
オリジナル・キャストはカナダ、ショッキングブルーがオランダのグループ。
聴いてて、どこの国の曲かなんてことは意識してなかったです。
意味は分からないのだから、英語ならみな同じみたいな感じで。

で、いろんな曲を聴いているわけですが、マッシュマッカーン『霧の中の二人』はほんと忘れてたし、チェイス『黒い炎』はブラスの部分だけ覚えていたとか、ベスト1の曲に全く記憶がなかったり。

なつかしいなと思っても、当時の記憶ではなく、その後テレビや映画で耳にしたのかもしれません。
『君の瞳に恋してる』にしてもフランキー・ヴァリの歌だったかどうか。

私の懐かしのメロディベスト3はアメリカでヒットしなかったそうなので、たぶんアメリカ映画では使われていないと思います。
日本ではヒットしたということは日本人好みだからでしょうから、CMに使ったら再ヒットしそうな気がします。

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小川洋子『やさしい訴え』

2014年10月11日 | 

小川洋子『やさしい訴え』にこんな会話がある。
新田「瑠璃子さんは、レンブラントの絵に出てくる女の人に似てるな」
瑠璃子「レンブラント……ですか?」
新田「そう。サスキアっていう名前の女の人」
薫「ええ、確かに。そう言われれば」
瑠璃子「どんなところが似ているんでしょう」
新田「目元や口元や、額の感じが……。輪郭に柔らかみがあって、髪の毛が豊かなところも」
薫「新田さんは女性がほかの誰かににているか、見抜くのが上手なんです。ツボを心得ているんです」

そこでネットで調べてみました。
サスキアはレンブラントの妻で、29歳でなくなっている。
レンブラントは妻の肖像画をたくさん残している。


瑠璃子はサスキアに似ていると言われて喜んだのだろうかと思いました。

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アメリカの死刑の現在

2014年10月08日 | 死刑

「FORUM90」に載っていた澤康臣「記者が見たアメリカの死刑と廃止運動」と堀和幸「アメリカ死刑廃止最前線」から、アメリカの死刑の現在についてご紹介します。

アメリカの死刑議論が盛り上がる背景には情報がオープンだということがある。
死刑囚の情報は州当局のサイトを見れば分かる。

アメリカの死刑廃止州は18州。
アメリカ50州の過半数の州が死刑を廃止すれば、おそらくアメリカの最高裁は、過半数の州が廃止しているということは死刑は残虐だというので、違憲判決が出されるのではないか。
あと10年経てば、28州で死刑が廃止され、アメリカでは死刑が廃止されるのではないかという意見がある。

実際、アメリカでは死刑判決、執行、ともに減っている。
2000年に224件あった死刑判決が2013年には80件。
死刑執行も2000年に85人だったが、2013年は39人。
死刑判決、執行がアメリカで一番多いテキサス州では、2005年に仮釈放のない終身刑を導入したら、判決や執行が減少傾向にある。

ギャラップ調査による死刑の賛否でも、死刑賛成の人が減り、反対の人が増えている。
            1993  2000  2003 2013
死刑に賛成  80   66   64  60
死刑に反対  16   26   32  35

廃止・減少の理由を大きく分けると、冤罪の問題。
それから人種的差別問題で、有色人種のほうが白人よりも死刑になる可能性が高い。
そして、犯罪の抑止効果はあまりないのではないかということ。

最近では薬物注射が問題化されている。
ヨーロッパの薬品会社が供給しなくなったため、執行のための薬剤が入手できなくなっている。
代わりの薬物を試しているが、失敗する危険、苦しむ危険がある。

費用の問題も大きい。
テキサス州では1件あたり1億円から2億円、あるいは数億円かかるらしい。

アメリカの死刑制度は9審制。
日本でいう地裁、高裁、最高裁で有罪、あるいは死刑が確定する。
そのあとに、確定判決の手続きに誤りがなかったかという、確定後の手続きがまずは州レベルで3段階あり、さらに連邦レベルで3段階あるので、9段階を経る。

確定前手続きには、弁護人・検察官・陪審員・裁判官等に不適切な言動はなかったか、事件記録の精査、担当弁護人・証人・被告人等へのインタビューや再鑑定などがある。
確定審の審理が公正ではないと判断された場合は、審理のやり直しが命じられる。

死刑事件では、このすべての段階で国選弁護人が選定される。
死刑求刑事件では弁護費用の中間の値が49万ドル(約5000万円)ぐらい、最高が178万ドル(約1億7800万円)ぐらい。
弁護費用が高くなれば、それだけ充実した弁護活動ができるので、それによって死刑判決も減少する。

アメリカの死刑廃止運動の特徴の一つは、被害者との結びつきが非常に強いこと。
被害者遺族が中心となり、被害者のための死刑廃止だと訴えている。

メリーランド州では、2008年に殺人被害者遺族49人が州議会に手紙を出した。
その内容
・私たちの間で死刑についての考え方は異なるが、刑罰は迅速、確実であるべきだ。死刑はいずれも欠く。長い異議申し立ての過程は被害者を苦しめる。
・死刑には私たちの多額の税金が使われる。
・その金を警察官増員と治安改善、犯罪防止、そして被害者遺族支援にあてるべきだ。
死刑判決(一審判決)から執行までの期間は16年弱だそうだ。

袴田事件の再審開始が決定しても、死刑問題についての議論はあまり起きていないように思う。
犯罪被害者との結びつきが弱いということもあるかもしれない。

曽根崎哲也「体をもって名を知らしむ」(「更生保護」8月号)にこんなことが書かれてある。
法務省が主唱する「社会を明るくする運動」は、犯罪をした人の立ち直りの支援をする運動だが、加害者の更生だけを訴えるのではなく、犯罪被害者の声や実状を知ることで、一般の人からも更生保護への賛同が得られるのではないか。

犯罪被害者当事者団体の会長がこんなことを言われている。

『社会を明るく』と言って犯罪をした人の立ち直りの支援を進めておられ、それも大切なことかもしれませんが、犯罪被害者が置かれた過酷な現状に目をやっていただくことなく、犯罪者の更生を助けることだけで社会は明るくなっていくのでしょうか。

被害者との関わりを続ける中で、犯罪の被害者も加害者も生活を回復していけるよう支援していくことが大切である。

犯罪被害者の方々が味わった悲痛な状況を知り生活の回復を手助けするとともに、二度とそのような悲劇をもたらすまいと決意する。そこに動機付けられ加害者に更生してもらう努力をする。そうするからこそ、更生を助けるという活動も芯の通ったものになり、「更生を助けなければならない」ということを第三者に納得してもらえると思う。


アメリカのように日本の死刑廃止運動も被害者と協働したらいいと思うが、「FORUM90」を見ても被害者との関わりは少ないらしく、そんな簡単にはいかないようです。

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ケビン・ベイルズ『グローバル経済と現代奴隷制』

2014年10月03日 | 

奴隷というのは過去の遺物だと思っていたが、ケビン・ベイルズ『グローバル経済と現代奴隷制』によると、世界には約2700万人の奴隷が存在するそうだ。
奴隷は農作業、レンガ作り、炭焼き、宝石加工、鉱石掘り、売春、絨毯織り、家事労働などに従事させられ、暴力によって脅され、拘束され、給料はない。
『グローバル経済と現代奴隷制』には、タイの売春、モーリタニアの水売り、ブラジルの炭焼き、パキスタンのレンガ作り、インドの農業での奴隷の実態が述べられている。

小作人は厳しい生活を送っているが、彼らは奴隷ではない。
児童労働はひどいものだが、必ずしも奴隷制ではない。
インドでは14歳以下の6500万人から1億人の子供が一日8時間以上、低賃金、長時間、不衛生な労働、働かされていて、そのうち約1500万人が児童労働者ではなく児童奴隷だという。
先進国でも、パリに約3000人、ロンドンに1000人ほどが家事奴隷として虐待を受けている。
日本には約8万人の奴隷がいるそうだ。

ケビン・ベイルズは現代の奴隷制(新奴隷制)はかつてのアメリカ南部のような奴隷制(旧奴隷制)とは違うという。
旧奴隷制ではアフリカから奴隷を輸入するために奴隷の値段は高かった。
1850年に、平均的屋外労働者は1000ドルから1800ドルで売られていた。
当時のアメリカ人労働者の平均年収の3倍から6倍で、今だと600万円から1200万円くらい。
奴隷は所有者の資産だった。

現代に奴隷が存在する原因の一つは人口の増加で、発展途上国の人口は求人数をはるかに上回るために安価なので、搾れるだけ搾り取って使い捨てする。
奴隷の維持に多大の投資をする必要はない。
新奴隷制では人間は使い捨て商品となった。

約2700万人の奴隷のうち、1500万人から2000万人は、インド、パキスタン、バングラデシュ、ネパールの債務奴隷で、借金の担保として奴隷となる。
債務奴隷制 自分の身を借金と引き換えにする。働いても債務は減らない。親が死ぬと子供に債務が引き継がれ、子供も奴隷にされる。
契約奴隷制 雇用を保証すると契約をし、仕事場に連れていかれて奴隷にされる。
インドでは500~1000ルピー(約1500円から2800円)の借金で債務奴隷になる。
インドの債務奴隷は先祖代々で、一日働いて、その日の食べ物をもらうだけなので、農業を機械化するより債務奴隷に働かせるほうが安上がり。

アメリカの奴隷は年5%くらいの利益を生み出したが、インドの農業債務労働者は年間50%の利益をあげる。
タイでは12歳から15歳くらいの少女は10万円から25万円程度で買え、売春宿の利益率は年800%になる。

タイの売春婦はすべて奴隷だというわけではなくて、タイには50万~100万人の売春婦がいるが、奴隷にされた売春婦は約35000人。
奴隷にされた少女たちが奉仕する相手は30分で100バーツ(約500円)しか払えないような人夫、学生、労働者である。
どのようにして奴隷売春婦にするか。

・だます
いい仕事があると持ちかける。

・親が売る
経済発展にともなって、冷蔵庫、テレビ、エアコンなどの消費物資が氾濫し、それらを手に入れるために娘を売る親がいる。
タイ北部地方で娘を売った親の3分の2は、娘を売らなくてすませることができたのに、「それでも新しいカラーテレビとビデオが欲しかった」という。

・さらう
タイだけでなく、ビルマやラオスからやってきた女性や子供を誘拐する。

慰安婦の中には同じようにして連れてこられた人がいたのではないかと思った。
もっともタイの売春宿は国や軍が管理しているわけではないが。

娘を売った金が借金とされ、売春婦は給料をもらっているとしても、利息、部屋代、飲食代、薬代、そしてヒモの取り分と売春宿の取り分を天引きされ、元金を減らすことはできないどころか、かえって借金が増える仕組みになっている。
逃げ出しても行くところがないし、ワイロをもらっている役人、警察は奴隷主の味方なので助けてはくれない。
国は法律を作っても、実効的なことは何もしない。
日本のタコ部屋も奴隷労働なのかと思いました。

新奴隷制の特徴の一つは、奴隷支配者が見えないということ。
アメリカの奴隷は所有者の農場で生活していた。
それに対し、タイの売春宿を所有する投資家は、経営をヒモに委ねており、投資家は少女たちがどのようにして連れてこられるのか、どういう状態にあるのかを知らない。
少女たちも所有者である投資家を知らない。

新奴隷制が日本に住む私たちに関係ないわけではない。

奴隷制から利益を得ている人―という定義には、世間一般の全員が含まれる―あなたも私も。

児童奴隷が作った製品を私たちが使っているかもしれない。
年金信託や投資信託が買った株が、奴隷労働を下請けに使う会社を所有する企業のものだという可能性がある。
これは奴隷問題にかぎらないわけで、たとえば対人地雷を作っている会社に投資しているかもしれない。
では私たちに何ができるかというと、児童労働によって作られたものではなく、不当に安い価格で買い叩かれてもいない製品を買うというフェアトレード商品を買うといったことぐらいかとタメイキでした。

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