三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

顕正会の終末論(2)

2023年11月23日 | 問題のある考え

「顕正新聞」には総幹部会での信者の発表も掲載されています。
皆さん、言葉も文体も似かよっていて、「大安楽」「大利益」「大確信」などというように、「大」が多用されています。

何人かの方の発表から引用します。
末次由美さん

正月勤行において先生は
「まもなく超インフレと食糧危機、さらに巨大地震、他国侵逼が必ず日本を襲う。そのとき全日本人は、始めて政治家たちの無力・無責任に気づくに違いない。そして「お救い下さるは日蓮大聖人ただ御一人であられる」と知り奉る」
と烈々と叫ばれました。この時はもう来ていると大歓喜が衝き上げました。


梅田敦子さん

「もし台湾侵攻が開始されれば、日本の尖閣諸島や先島諸島は同時に戦場となる。さらに米軍の航空基地がある沖縄の嘉手納、三沢・横田・岩国等の基地も先制攻撃を受けると思われる」
と先生より伺っては、じっとしていられない思いになりました。


永石正伸さん

仏法は完璧なる法則の上に成り立っていることを改めて実感しては、今の日本に起こる「総罰」が重なり、いよいよ三災七難はこれからなのだと覚悟を堅め直しました。


三災七難とは、正法に背き、また正法を受持する者を迫害することによって起こる災害のことで、飢饉、他国の侵略、内乱、伝染病の流行、風水害、干ばつなどのことだそうです。

日本が滅ぶという日蓮の警告は何年間有効なのでしょうか。
日蓮は1282年に亡くなっていますから、没後約740年もたっています。
それなのに、いまだに国立戒壇は建立されていません。
日本が滅びるならもっと早く滅びてもおかしくないと思うのですが、今のところまだ滅びていません。

日蓮は「日本国の大疫病と、大飢渇と、どしうちと、他国より責めらるゝは総罰なり」と書いている草ですが、伝染病の流行、飢饉、内乱、侵略は、今も昔も世界中で起きています。

大疫病
ペストや天然痘などで多くの人が亡くなっています。
1347年~1351年にはペストで2億人が死亡しているそうです。
日本では安政5年にコレラによって20数万人が死亡しています。

大飢渇
鎌倉時代では最大と言われる寛喜の飢饉では3分の1が死んだそうです。
1230年から1231年に起きていますから、日蓮が8歳から9歳のことです。

どしうち
南北朝の争い、戦国時代、戊辰戦争など、日本国内で何度も内戦が起きています。

他国より責めらるゝ
第二次世界大戦では約300万人が死亡しています。
空襲で死亡した民間人は41万人以上だそうです。

現在、世界では、結核で死亡する人は年に約100万人、マラリアで死亡する人は年に約60万人です。
飢えで苦しむ人は約8億人。
シリア、イエメン、スーダンなど内戦が続いている国はたくさんあります。

世界はこうした状況なのに、「大歓喜」するものでしょうか。
少しでも世界がよくなることを願うものだと思うのですが。
なんだか終末を待望するキリスト教徒みたいです。

そもそも国立戒壇が建立されることはかなり難しいでしょう。
国が宗教に支出するのは憲法違反なので、まず憲法第20条と第89条を改正する必要があります。
さらに、顕正会を国教にしないといけません。

もしもそうなったら、世界から白い目で見られると思います。
日本は信教の自由がない日蓮原理主義の国になるわけですから。

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顕正会の終末論(1)

2023年11月19日 | 問題のある考え

知人の住むマンションに入ろうとしたら、新聞をたくさん持った男女3人が出るところで、私に新聞をくれました。
見ると「顕正新聞」でした。

顕正会は「日蓮大聖人に帰依しなければ日本は亡ぶ」、「早く国立戒壇を建立すべし」と説いています。
国立戒壇とは、日本が国家として建立する本門の戒壇です。

「顕正新聞」を読み、顕正会も終末を説いていることを知りました。
「顕正新聞」(令和5年6月5日号)「阿部日顕の臨終」特集号にある浅井昭衞さんのお話の中にこうあります。

もし日本の人々が、いつまでも日蓮大聖人の大恩徳を知らず、背き続けるならば、自身の成仏が叶わぬだけではない、日本が亡びる。

https://kenshoshimbun.com/issue/230605_depraved.html

「顕正新聞」(令和5年2月5日号)、一月度総幹部会での浅井昭衞さんの講演から引用します。

日本はいま戦後78年において最大の危機に直面しております。
そのゆえは、「悪の枢軸」といわれる共産主義・軍事独裁国家たる中国・ロシア・北朝鮮の三国に、この日本が包囲されてしまったからです。


出世本懐成就御書には次のようにある。

日本国の大疫病と、大飢渇と、どしうちと、他国より責めらるゝは総罰なり。


日蓮在世での「総罰」がいかに凄まじかったか。
正嘉2年・3年の大疫病と大飢饉では「死を招くの輩既に大半を超え」と『立正安国論』に書かれている。
そして、建治から弘安にかけての大疫病と飢渇はさらに激しかった。

「どしうち」とは、北条一門で内乱が起きたこと。
「他国より責めらるゝ」とは大蒙古による侵略。

なぜこのような総罰が起きたのか。

それは当時の日本国が、邪法の悪僧どもに唆されて、大慈大悲の御本仏日蓮大聖人を悪口罵言し、流罪に処し、ついには御頸を刎ね奉るという大逆罪を犯したゆえに、諸天がこの国を罰したのであります。


いま、再び「総罰」が現れつつあるを感じている。
「大疫病」は、コロナの大流行。
「大飢渇」は、地球温暖化に伴う異常気象で世界各地で大飢饉が起きている。
さらにロシア・ウクライナ戦争で食糧の輸出が停止された。
これまで食糧輸出国であった20数ヶ国が輸出制限にふみ切っている。
インフレと食糧危機がいま世界を覆いつつある。
「どしうち」とは、日本の中で内乱が起こること。
日本は親米派と親中派が激突して必ず争乱が起こる。
「他国より責めらるゝ」とは、日本は核兵器を保有し、かつ侵略的な中国・ロシア・北朝鮮の三国に包囲されている。

「王舎城事」には

今生に法華経の敵となりし人をば、梵天・帝釈・日月・四天罰し給いて、皆人に見懲りさせ給えと申しつけて候。

蒙古襲来の大罰は、大聖人様が諸天に申しつけてなさしめ給うた。

やがて中国をはじめとする三国の侵略が始まるとき、日本国の一切衆生は、国亡び命を失う恐怖から、始めて
「日蓮によりて日本国の有無はあるべし」
との大聖人様の絶大威徳と大慈大悲にめざめ、一同、頭を地につけ掌を合わせて
「助け給え、南無日蓮大聖人」「南無妙法蓮華経・南無妙法蓮華経」
と必ず唱えるに至る。

https://kenshoshimbun.com/issue/230205_crisis.html

「顕正新聞」(令和5年4月5日)、三月度総幹部会での浅井昭衞さんの講演からです。

日蓮大聖人を信じ奉るか、背くかによって、日本国の有無も、人類の存亡も決する――ということです。


台湾侵攻こそ第三次世界大戦の発火点である。
アメリカも中国との対決姿勢を一段と強める。
アメリカの尖兵的役割を担わされる日本を中国は憎み、血祭りに上げる。

これ日本が、御本仏日蓮大聖人に背き続けた罰であります。

https://kenshoshimbun.com/issue/230405_renewal.html

キリスト教が説く終末では、選ばれた人たちは天国へ生まれますから、信者にとって終末は希望です。
しかし顕正会は、日蓮に帰依しなければ日本が滅びると説きます。
顕正会の信者だけが救われるというわけではありません。

この終末論は日本中心史観というか、世界が目に入っていないように感じます。
日蓮にとって世界とは日本、朝鮮、中国ぐらいで、地球全体という視点はありません。
世界と無関係に日本が存在しているわけではないのですが。

それにしても、日本人全員が顕正会の信者になり、国立戒壇が建立されれば、中国は台湾を攻撃せず、北朝鮮は核兵器を廃棄、ロシアとウクライナは即時和平、地球温暖化は解消、飢餓はなくなる、新型コロナウイルスは消滅するというのでしょうか。

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終末を待望する人たち

2023年11月11日 | キリスト教

ダーレン・アロノフスキー『ザ・ホエール』に、引きこもっている主人公のアパートに、キリスト教の一派であるニューライフの宣教師が訪れる場面があります。
終末がもうじき訪れ、自分たちは天国に行くが、信仰しない人は地獄に堕ちるので、一人でも多くの人を救おうとして訪問したわけです。

ニューライフの教義がどのようなものかわかりませんが、『ザ・ホエール』で語られる終末思想はキリスト教福音派やエホバの証人などと同じように思います。

イエスが再臨(キリストが再びこの世に現れる)して、携挙(信徒を空中に引き上げる)があり、艱難(患難とも。天変地異や疫病の流行、戦争、飢饉など)が起こる。(この順序には諸説あり)

A・R・ホックッシールド『壁の向こうの住人たち』はルイジアナ州でティーパーティーの支持者たちにインタビューした本です。
2010年の調査によると、アメリカ国民の41%が2050年までにキリストの再臨が「おそらく」、あるいは「必ず」起こると信じている。
アメリカでは5000万人が携挙を信じている。(アメリカの人口は約3億3千万人)

A・R・ホックッシールドがインタビューしたハロルド・アレノはこう語ります。

もし魂の救いが得られれば、天国へ行ける。天国は永遠だ。そこへ行けばもう、環境のことを悩まなくなる。それがいちばんたいせつなことだ。

工場の廃液によって自分や家族、親戚がガンになったのに、環境破壊や公害問題は信仰に比べると大したことではないと考えているのです。

アレノ夫妻と息子ダーウィンは携挙を信じています。
終末のときに大地が焼かれ、千年後に地球は浄化される。
それまではサタンが暴れまわる。

ダーウィン・アレノはこう語ります。

神がご自分の手で修復なさるまでは、神が最初に創造なさったとおりのバイユー(アレン家が住む場所)を見ることはできないでしょう。でもその日はもうすぐやってきます。だから人がどんなに破壊しようとかまわないんですよ。

終末を信じる人たちにとって、環境破壊、戦争、災害、伝染病などは終末のしるしであり、喜ばしいことだと思っているようです。

グレース・ハルセル『核戦争を待望する人びと 聖書根本主義派潜入記』には、アメリカにはイエスの再臨と世界の終末を信じる人が大勢いて、かなりの影響力を持っていることが述べられています。

善であるアメリカとサタンに率いられた軍隊が核兵器を駆使するハルマゲドンは避けられない。
しかし、このことは歓迎すべきことである。
なぜなら、キリストが再臨すれば自分たちは天上に引き上げられる(携挙)からである。
彼らにとって地球はかけがえのない惑星ではない。
資源が枯渇しようと、環境を破壊しようと、もうすぐ終末なのだから。

『核戦争を待望する人びと』の原著は1986年の出版です。
サタンであるソ連はすでに崩壊していますが、終末を信じる人たちの考えは揺らいでいないようです。

新型コロナウイルスの流行、ロシアのウクライナ侵攻などが起きると、イエスの再臨が近いと喜ぶ人がいるのです。
そういう教えは現実を軽んじているように思います。

統一教会も終末の前の患難を説いています。(すでに文鮮明が救世主として再臨している)
https://familyforum.jp/2023062448410

藤田庄市「宗教2世(カルト2世)、その苦闘の歩み」(井上嘉浩さんと共にカルト被害のない社会を願う会「Compassion」)に、エホバの証人の信者だった女性が息子から次の質問をされ、答えることができなかったと書かれています。

・予言がはずれたこと
エホバの証人では、この世の終末がいつ来るかが、何度も予言している。
しかし、終末の予言はいつもはずれ、いまだに終末が来ない。
予言がはずれたのではなく、調整されたとする。
ハルマゲドンが近いということは教義の中心である。

それは調整ではなく,変更でしょう。


・エホバの証人は自分たちだけが唯一の神を知っていると主張する
信者はエホバの証人の出版物以外の書籍は読んでいない。

神は存在するかもしれないけど、他のキリスト教の本や宗教の本を読むのを禁じていて、どうして唯一と言えるのか。証拠はあるのか。本物のお札を知っているからニセ札を見抜くことができる。根拠もなく、ただ信じているだけではないか。


・エホバの証人の救済論におけるエゴイズム
まもなくハルマゲドンが来て、エホバの証人の信者だけが天国で楽しく暮らすが、それ以外の人は地獄に堕ちると説く。

組織は信者でない人たちが殺されるのを待っているんだ。


鋭い指摘です。

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小熊英二『日本社会のしくみ』(2)

2023年11月02日 | 

小熊英二さんへのインタビュー「もうもたない!? 社会のしくみを変えるには」と小熊英二『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』に、日本社会のしくみについて述べられています。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/heisei/interview/interview_08.html

1960年代後半から1970年代のはじめに完成した構造を「社会のしくみ」と呼んでいる。
「社会のしくみ」とは、「終身雇用」「年功序列の賃金システム」「新卒一括採用」などに象徴される日本の雇用慣行と、それに規定されてできた教育や社会保障のあり方、さらには家族や地域のあり方など、日本社会の慣習の束を指している。

戦後の民主化運動の中で、労働組合は「同じ企業の中の労働者はみんな平等であること」を望み、一部のエリートだけに適用されていた「終身雇用」「年功序列の賃金システム」「新卒一括採用」を同じ企業の社員全員に適用されるように拡大した。

平成は国際環境が大きく変わる中で、「社会のしくみ」を無理にもたせてきた時代だった。

1970年代後半から1980年代は、日本は西側陣営の工場という位置にあった。
NHKの世論調査では、「日本人と西洋人の優劣」という質問に対し、1951年に「日本人が優れている」が28%、「劣っている」が47%だった。
1963年にはこれが逆転し、1968年は「日本人が優れている」が47%。

1980年代後半に、GMは約80万人の従業員で年間約500万台の乗用車を生産した。
トヨタは約7万人の従業員で年間約400万台を生産していた。
GMが部品の約70%を自社生産していたのに対し、トヨタは部品の多くを約270社の下請企業グループで生産していた。
もっとも、トヨタのカンバン方式を鎌田慧『自動車絶望工場』は批判していますが。

冷戦が終わると、西側の工場という日本の地位は失われていく。
旧ソ連圏や中国などの社会主義圏が世界市場に参入し、世界の製造業の中心は日本から中国や東南アジアにシフトしていった。

現代日本での生き方を「大企業型」「地元型」「残余型」の3つの類型に分ける。
・大企業型 毎年、賃金が年功序列で上がっていく人たち。大学を出て大企業の正社員や官僚になった人などが代表。
・地元型 地元にとどまっている人たち。地元の学校を卒業して、農業や自営業、地方公務員、建設業などで働いている人が多い。
・残余型 所得が低く、人間関係も希薄という都市部の非正規労働者など。平成に増加してきた。

2017年のデータで推計したところ、大企業型が約26%、地元型が約36%、残余型が約38%。

大企業型の雇用形態や働き方は1970年代初めに完成した。
欧米では、同じ仕事は会社に関係なく同一賃金だが、日本は同じ仕事をしていても会社によって賃金が違う。

2012年の所得上位5%から10%は年収750万円から580万円にあたる。
2015年の給与所得者のうち、年間給与600万円を上回るのは18%で、男性の給与所得者の28%である。

現代日本では、大企業正社員クラスの人と、それ以外の人との格差が開いている。
成果主義は上級職員だけで、下級職員や現場労働者は管理職から与えられた職務をこなしていく。

大企業型もそれほど豊かな暮らしができる世帯収入とはいえない。
年収から税金・保険料などの公租公課と、教育費を除いた場合、どれくらい生活費がのこるか試算すると、地方小都市に住む年収400万円の世帯で公立小中学校の子供が2人いると、生活保護基準を下回ってしまう。
大都市の世帯で子供2人が大学に進学すると、年収600万円でも生活保護基準を下回る可能性がある。

普及率が90%を超えている社会的必需項目(電子レンジ、湯沸器、親戚の冠婚葬祭への出席、歯医者にかかるなど)について、経済的理由で持たない・していない項目の多さを調査した。
年収400万円は、普通の暮らしの必需品が欠けていくラインといえる。

1990年代からの就職氷河期は、20代の非正規社員の増加が正社員の減少と関係すると言われているが、そうではない。
人数が多い世代は競争が激しくなり、職を得られない確率が高くなる。

団塊2世世代は前後の世代より人数が3割ほど多い。
1985年の経済企画庁の報告書は、団塊2世の就職難を予想していた。
この報告書は1990年代の経済成長率を年率4%として試算していたが、現実は1~2%だった。

1985年の新卒就職者は108万人。
団塊2世が就職を始める1992年は132万人が新卒就職することになる。
大卒者が1.5倍に急増したために、大卒就職率が下がった。
大卒者が中小企業に就職口を求めれば、高卒者の就職数が下がるので、大学に進学せざるを得ない。
この状態は1990年代いっぱい続いた。

大企業型の割合は1982年から2017年までほとんど変化がなかった。
正社員の中で年功序列で賃金が上がっていく人たちの比率もほとんど変化がない。
3割の大企業型は比較的安定しているが、下の約7割は自営業主や家族労働者が減って非正規が増え、地域社会の安定が低下して、貧困が増えている。

日本は高校・大学の進学率が伸びたところまでは、西欧諸国と比べても早かった。
しかし、大学院レベルの高学歴化はおきていない。
大学院進学率が低く、修士や博士号を持つ者が少ないため、現在では低学歴な国になりつつある。

1980年代以降、アメリカは大学院で学位を取った人間が高い地位に就くというシステムを作った。
特定の役職に就くには、その役職に対応した専門の修士号や博士号が要求される。
修士号、博士号を持っていれば、他企業からの人でも、勤続年数が少なくても、女性でも黒人でも構わない。

世界各国の新規採用教員は教育学などの修士号を持つようになってきた。
全体の国際平均でも、小学校・中学校の教師の20%以上が修士号を取得している。
ところが、日本の教師で修士号を取得しているのは、2010年の調査によれば、小学校で3.1%、中学校で5.8%にすぎない。

その最大の理由は、日本では「どの大学の入試に通過したか」は重視されても、「大学で何を学んだか」が評価されにくいことである。
日本企業が求めているのは、大学入試突破までの実績であって、大学などで学んだ専門知識ではない。

日本の社会は行政の人手が少なすぎる。
人口千人当たりの公務員の数は、フランスの3分の1、アメリカの2分の1くらい。
自民党が、家族と地域と会社で助け合うのが日本型福祉社会だという本を出したのは1979年。

地域コミュニティーに頼って、公務員が少なくてもやっていけ、公的な社会保障が少なくともよいという安上がりの国家は一時的に偶然成り立っていた現象だった。

この「しくみ」を変えない場合、3割の大企業型と、そのほかの7割の間の格差が、ますます開いていき、下の7割はかなり苦しい状態になる。
具体的には地方の疲弊、都市部の非正規労働者の貧困、高齢者貧困者の増大という形ですでに表れている。

さらに、企業が新卒採用を絞り込んでいくとすれば、大企業型の3割弱も減って、3割が2割になり、1割になっていくかもしれない。
そうなってくると、戦前の秩序にだんだん近づいていく。

戦前の日本の社会は企業の中で階級差や身分差がはっきりある社会だった。
エリートで官立大卒のホワイトカラーの事務系の上級職員、実業学校卒の下級職員、現場の作業員とでは、身分差別ともいえる格差があった。

日立製作所日立工場の1936年の職員給与。
職員は年功給で、勤続20~24年では0~4年の3倍。
各年齢層の職工を基準にすると、賞与と住宅手当を含めた年間所得の平均は、25~29歳の官立大卒の上級職員で3.5倍、40~44歳で6.15倍だった。
実業学校卒の下級職員は25~29歳が同年齢層の職工の1.7倍、40~44歳が4.41倍だった。

安上がりな国家はもうもたなくなっている。
企業の正社員を増やすのが限界だとすれば、即効性があるのは公務員を増やすこと。
これで下の7割の正規雇用を増やすとともに、ケアワーカーなどを増やして、行政サービスが行き届くようにする。
これはスウェーデンなどがとってきた戦略でもある。
そうなると税金を上げざるを得ない。

日本が小さな政府のままだと実現不可能です。
橘木俊詔さんと小熊英二さん、どちらも格差は広がるばかりだという結論のようです。

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