三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』(5)

2024年05月20日 | 問題のある考え
ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』によると、反ワクチン運動の源流は19世紀の種痘反対運動です。

種痘反対勢力にイングランド政府は妥協し、1898年に良心的拒否法を通過させた。
種痘を受けさせたくない親は受けさせなくてよくなった。
イングランドの種痘の接種率は急落し、天然痘感染と死亡の中心となった。
19世紀、イングランドの親たちは、種痘は純粋でも安全でもなく、自然や神に反する行為だと論じた。だが親の怒りは医師よりは政府の役人に向かった。役人は自分たちに指図する権利もないし、子どもに何を接種すべきか指図する権利などないと考えたからだ。抗議運動の参加者にとって、法定予防接種は許容しがたい自由権の侵害だった。

現代のアメリカも、行政はワクチン接種で妥協し、親の宗教、思想を理由として子供にワクチンを受けさせなくてもよくなっています。

1960年代末から1970年代にかけて、アメリカ疾病管理予防センターは小学校の入学条件として麻疹ワクチン接種を要件とし、1981年までに全ての州で入学に予防接種を義務づけた。
ところがワクチンの強制に反発する親が訴訟を起こした。

1966年、ニューヨーク州議会で入学にポリオワクチンの接種を必要とするという法案が議会を通過したが、親の宗教がワクチンを禁じている場合は免除した。
これはクリスチャン・サイエンスの陳情活動の結果だった。

アメリカではすべての州がワクチンの予防接種を受けないという宗教的免除を認めている。
さらには、2010年までに21の州が予防接種の思想的免除を許している。

クリスチャン・サイエンスはメアリー・ベイカー・エディが1879年に設立した。
信仰療法を説き、一切の医療を否定している。
神は完璧だから完璧な世界を作った、痛みなどは実際は存在しない。
病気は身体の症状ではなく精神によって起こるから、信仰によって病気は消える。
天然痘のような病気はワクチンではなく、祈りによって予防することができる。

メアリー・ベイカー・エディは著書に「我々が天然痘になるのは、他の人が天然痘になるからだが、それは物質ではなく精神が病気を取り込み運ぶのだ」と書いている。

クリスチャン・サイエンスの信者による医療ネグレクトによって死ぬ子供たちがいる。
糖尿病の子供にインスリンをやめさせて死亡させる。
定期検診のレントゲン撮影をしない。
高熱を出した子供に治療師が「神様は病気をお作りにならなかったので、病気は幻なのよ」と言う。
過失致死などで訴えても、不起訴、もしくは無罪判決になる。

信者の子どもたちに麻疹やポリオの流行が起きている。
1972年、クリスチャン・サイエンスの高校でポリオの流行が起き、11人の子どもが身体麻痺となった。
1985年、クリスチャン・サイエンスのプリンシピア大学で3人の学生が麻疹で死亡した。

ブルース・クック『トランボ』は、脚本家であり、赤狩りで刑務所に入ったドルトン・トランボの伝記です。
ドルトン・トランボの母親はクリスチャン・サイエンスの信者だったので、ドルトン・トランボたち子供は予防接種を受けなかった。
俺が言いたいのは、こうした信者たちは罪悪感を抱くことなく行動しているということなんだ。恐れをまったく感じることなく正義を追求している。宗教としてのクリスチャン・サイエンスに対する見解じゃないといわれるかもしれないが、メソジスト派やバプテスト派だけでなくて、どんな宗派についても同じようなことがいえるのだから。ただ、ひとつだけいえるのは、彼らは恐れを知らない心を持っているってことだ。

ウォーターゲート事件に関わったH・R・ハルデマン、ジョン・アーリックマンはクリスチャン・サイエンスの信者であり、ジョン・ディーン、エジル・クローはクリスチャン・サイエンスの大学であるプリンシピア大学の卒業生だった。
クリスチャン・サイエンスは信者数を公表していませんが、かなりの人数ではないかと思います。

クリスチャン・サイエンス・モニターという新聞は、クリスチャン・サイエンスの創始者メリー・ベーカー・エディによって創刊されています。
櫻井よしこさんは「ジャーナリズムの仕事に関心を持ったのは、アメリカの「クリス
チャン・サイエンス・モニター」という新聞の東京支局で助手の職を得てからのことでした」と語っています。
https://www.business-plus.net/special/1404/638001.shtml

ワクチンを否定する団体は他にもあります。
シュタイナー教育のルドルフ・シュタイナーは「予防接種はカルマの発達と輪廻転生のサイクルを妨げる」と考えた。
シュタイナーは神秘思想家、オカルティストでもあるので、やっぱりそうかと思いました。
シュタイナー教育を実践している学校もワクチンに反対しているのでしょうか。

カイロプラクティックはダニエル・D・パルマーが1895年に始めた。
背骨のずれが病気の原因だと考えるカイロプラクティックは細菌説を根拠がないと主張し、ワクチンの危険を説く。

創始者の息子バートレット・ジョシュア・パーマーはこんなことを言っている。
カイロプロクターは全ての伝染病と言われてきたものは背骨に原因があることを発見した。もし100人の天然痘患者がいたら、一人の患者のどこにサプトラクション(背骨のずれ)があるのかを見出し、他の99人の状態も同じであることを証明しよう。背骨を調整し、身体の機能が正常になる。伝染病などない。感染もないのだ。

日本カイロプラクターズ協会のHPを見ると、世界には約10万人のカイロプラクターがいて、日本には608人だそうです。
https://jac-chiro.org/aboutchiro/
会員数12000名規模のカイロプラクティック団体も日本にあります。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000093169.html
背骨の矯正であらゆる病気が治るんだったら、病人はいなくなるはずですが。

新型コロナウイルス感染防止のためにマスクをすることになぜ反対するのかと不思議に思っていましたが、強制を嫌うだけでなく、宗教的信念があるのかもしれません。
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ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』(4)

2024年05月15日 | 問題のある考え
モーリス・ヒルマンはおたふくかぜ、麻疹、風疹、水疱瘡、B型肝炎。MMRワクチンなど多くのワクチンを作りました。
子供たちの命を救った研究者がいれば、ワクチンを否定する医師や研究者、弁護士たちもいます。

モーリス・ヒルマンの伝記『恐ろしい感染症からたくさんの命を救った現代ワクチンの父の物語』を書いたポール・オフェットは『反ワクチン運動の真実』で彼らを告発します。

新型コロナウイルス陰謀論を拡散し、ワクチン接種に反対した弁護士のロバート・ケネディ・ジュニアは以前から反ワクチンの活動家でした。
2005年にロバート・ケネディ・ジュニアは製薬会社と医師と公衆衛生当局が共謀してワクチンの危険性を隠していると非難した。
https://jphma.org/topics/topics_47_Kennedy_Report.html

さらに、麻疹ワクチンを開発したジョン・エンダース研究班の一人サム・カッツをワクチンで金儲けしたと非難した。
ジョン・エンダースはワクチンでの特許取得には反対していたので、麻疹ワクチンでも特許は取っていない。

トランプは自閉症のワクチン原因説を支持しています。
https://gendai.media/articles/-/57708?page=3
2024年の大統領選挙にワクチン反対派が2人も立候補するわけです。

「ワクチン・ルーレット」を見て、自分の子供がDTPワクチンによって障害を負ったと信じたバーバラ・ロー・フィッシャーたちは「納得できない親の集い」を立ち上げ、政治にも大きな影響力を持つようになった。
バーバラ・ロー・フィッシャーはあらゆるワクチンに反対する。

共著で出版した『闇の注射 なぜDTPワクチンのPがあなたの子どもの健康を脅かすかもしれないのか』でこう主張している。
アメリカの赤ちゃんたちが打たなくてはいけないワクチンが増えるにつれ、大きな子どもや若者が慢性の免疫病や神経障害になるという報告が増えてきている。喘息、慢性の中耳炎、自閉症、学習障害、注意欠陥障害、糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、慢性疲労症候群、全身性エリテマトーデス、ガンなどもそうだ。

ワクチンで予防できる病気は実際にはそんなに深刻なものではないとも論じる。
私たちは病気がひどく恐ろしいと思い込んでしまっているのです。1950年代、誰もが麻疹とおたふく風邪にかかっていました。普通の何でもない出来事でした。
ワクチン開発以前は、アメリカでは麻疹で毎年10万人以上が入院し、500人が死亡していた。

インフルエンザについてブログに書いている。
インフルエンザを含む感染症を経験することは、人類の祖先が地球に登場して以来、人間の状態の一部でした。(略)
なぜワクチン学者は人間の免疫システムがその経験を乗り越えられない、益を受けないと考えるべきだと言い張るのでしょう。一度もインフルエンザにかからない方が良いというエビデンスはどこにあるのでしょう。
子供たちがインフルエンザの定期接種をする前は、毎年10万人が入院し、100人が死亡していた。

バーバラ・ロー・フィッシャーがワクチン接種で健康被害が起こると話すことで、子どもの病気の責任という重荷を親たちの肩の上に乗せた。

てんかんと知的障害の本当の原因を突き止めたサミュエル・ベルコビッチのコメント。
ほとんどの親はずっと罪の意識を感じていたので、もう感謝でいっぱいでした。親たちは医者や母子保健専門看護師のところへ行って、子どもを彼らに渡してワクチンを打ってもらっていました。自分たちのせいだと、近所の「ワクチンを打ったらダメよ」という女性の言うことを聞いていれば、子どもは健康だったのにと思っていたのです。そして、我々がそうじゃない、あなたのお子さんは妊娠中にナトリウムチャネルに異常が起きて、それを防ぐ手立てはなかった、こうなる運命だったのだというと、大きな大きな重荷を下ろしたように見えました。何十年も続いた罪悪感から解放されたのです。

反ワクチン活動家は自分たちは安全なワクチンを望んでいると主張する。
だが、反ワクチン運動家のいう安全は自閉症、学習障害、注意欠陥障害、多発性硬化症、糖尿病、脳卒中、心臓発作、血栓、麻痺などの副作用がないというものだ。

これらはワクチンが原因ではないので、彼らのいう安全なワクチンは実現不可能だ。
たとえば、自閉症スペクトラムだと、脳の神経細胞表面のタンパク質を分子と結びつけている遺伝子に異常がある。

ワクチン裁判で負けたのは原告側の研究者、医師や弁護士ではない。
医師は自閉症児の治療を続け、危険性のある療法を行い、サプリを売り続ける。
たとえば、自閉症はチメロサール入りのワクチンが原因だから、体内の水銀や鉛などの重金属を排出させるキレーション療法。

弁護士は訴訟をし続け、勝とうが負けようが報酬は受け取る。
ある法律事務所はワクチン法廷に216万1564ドル10セントの請求書を提出した。
1980年代の百日咳ワクチン恐怖のときには、数百万ドルが補償金や和解金として支払われた。その結果、反ワクチン組織は人身被害弁護士と結託して活動するようになった。弁護士の多くは顧問委員会の一員となってワクチンの危険性を訴え、どう補償金を勝ち取るかを説明する小冊子を作る手助けをしている。

裁判に負けたのは医師と弁護士によって誤った道へ導かれ、自閉症の子どもを育てる負担から解放されたいと思った親たちだ。
ワクチンについて親を脅えさせ、反ワクチン運動活動家と結んでいる人身被害弁護士に金づるを与え、多くの場合、直接自分の診療所で偽りの希望を売る医師の待ち構える腕の中に親を追い込むのだ。

小児科医ラフル・パリク。
強く感情を揺さぶるアピールをして、親たちに子どもに予防接種をすることについて迷い、躊躇させてしまう。論理的に考える人もそうでない人も、こうした感情的な手法は忘れない。一方、医療、科学専門家は正確な証拠と研究を引いて対抗するが、これは多くの親には響かない。感情的ではないメッセージは印象に残りにくいのだ。

國枝すみれ「日本でも陰謀論が再燃?」(毎日新聞2024年5月10日)によると、反ワクチンが陰謀論と結びつき、トランプ、親ロシア、さらには極右がそれらを取り入れて規模を拡大しているそうです。
陰謀論者と反ワクチン派は全く同じグループではないが、かなり重なっている。(略)
いま盛り上がっているのは世界保健機関のパンデミック条約だ。
4月13日に東京・東池袋で行われた反パンデミック条約デモには数千人が集まった。
主催者は「英霊の名誉を守り顕彰する会」の会長で、バリバリの右派。昨年は、反米親露の立場からウクライナに平和を求めるデモを、「米国の内政干渉が日本の伝統文化を壊す」という理由からLGBT法案反対デモを主催している。
https://mainichi.jp/articles/20240509/k00/00m/030/091000c

反ワクチン運動はワクチンだけの問題ではなく、陰謀論や極右とも関係しているとなると、何とも困った話になってしまいます。
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ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』(3)

2024年05月09日 | 問題のある考え
モーリス・ヒルマン(1919年~2005年)はおたふくかぜ、麻疹、風疹、水疱瘡、B型肝炎。MMRワクチンなど多くのワクチンを作りました。
子供たちの命を救った研究者がいれば、ワクチンを否定する医師や研究者、弁護士たちもいます。

モーリス・ヒルマンの伝記『恐ろしい感染症からたくさんの命を救った現代ワクチンの父の物語』を書いたポール・オフェットは『反ワクチン運動の真実』で彼らを実名で告発しています。

新型コロナウイルス陰謀論を拡散し、ワクチン接種に反対した弁護士のロバート・ケネディ・ジュニアは以前から反ワクチンの活動家でした。
2005年にロバート・ケネディ・ジュニアは製薬会社と医師と公衆衛生当局が共謀してワクチンの危険性を隠していると非難した。
https://jphma.org/topics/topics_47_Kennedy_Report.html

さらに、麻疹ワクチンを開発したジョン・エンダース研究班の一人サム・カッツをワクチンで金儲けしたと非難した。
ジョン・エンダースはワクチンでの特許取得には反対していたので、麻疹ワクチンでも特許は取っていない。

トランプは自閉症のワクチン原因説を支持しています。
https://gendai.media/articles/-/57708?page=3
2024年の大統領選挙にワクチン反対派が2人も立候補するわけです。

「ワクチン・ルーレット」を見て、自分の子供がDTPワクチンによって障害を負ったと信じたバーバラ・ロー・フィッシャーたちは「納得できない親の集い」(後に名称を「全米ワクチン情報センター」に変更)を立ち上げた。
百日咳ワクチンで自閉症になると最初に主張した一人であるバーバラ・ロー・フィッシャーはあらゆるワクチンに反対する。

共著で出版した『闇の注射 なぜDTPワクチンのPがあなたの子どもの健康を脅かすかもしれないのか』でこう主張している。
アメリカの赤ちゃんたちが打たなくてはいけないワクチンが増えるにつれ、大きな子どもや若者が慢性の免疫病や神経障害になるという報告が増えてきている。喘息、慢性の中耳炎、自閉症、学習障害、注意欠陥障害、糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、慢性疲労症候群、全身性エリテマトーデス、ガンなどもそうだ。

ワクチンで予防できる病気は実際にはそんなに深刻なものではないとも論じる。
私たちは病気がひどく恐ろしいと思い込んでしまっているのです。1950年代、誰もが麻疹とおたふく風邪にかかっていました。普通の何でもない出来事でした。
ワクチン開発以前は、アメリカでは麻疹で毎年10万人以上が入院し、500人が死亡していた。

バーバラ・ロー・フィッシャーはブログに書いている。
インフルエンザを含む感染症を経験することは、人類の祖先が地球に登場して以来、人間の状態の一部でした。(略)
なぜワクチン学者は人間の免疫システムがその経験を乗り越えられない、益を受けないと考えるべきだと言い張るのでしょう。一度もインフルエンザにかからない方が良いというエビデンスはどこにあるのでしょう。
子供たちがインフルエンザの定期接種をする前は、毎年10万人が入院し、100人が死亡していた。

バーバラ・ロー・フィッシャーがワクチン接種で健康被害が起こると話すことで、子どもの病気の責任という重荷を親たちの肩の上に乗せた。
てんかんと知的障害の本当の原因を突き止めたサミュエル・ベルコビッチのコメント。
ほとんどの親はずっと罪の意識を感じていたので、もう感謝でいっぱいでした。親たちは医者や母子保健専門看護師のところへ行って、子どもを彼らに渡してワクチンを打ってもらっていました。自分たちのせいだと、近所の「ワクチンを打ったらダメよ」という女性の言うことを聞いていれば、子どもは健康だったのにと思っていたのです。そして、我々がそうじゃない、あなたのお子さんは妊娠中にナトリウムチャネルに異常が起きて、それを防ぐ手立てはなかった、こうなる運命だったのだというと、大きな大きな重荷を下ろしたように見えました。何十年も続いた罪悪感から解放されたのです。

反ワクチン活動家は自分たちは反ワクチンではない、安全なワクチンを望んでいると主張する。
だが、反ワクチン運動家のいう安全は自閉症、学習障害、注意欠陥障害、多発性硬化症、糖尿病、脳卒中、心臓発作、血栓、麻痺などの副作用がないというものだ。

これらはワクチンが原因ではないので、彼らのいう安全なワクチンは実現不可能だ。
たとえば、自閉症スペクトラムだと、脳の神経細胞表面のタンパク質を分子と結びつけている遺伝子に異常がある。

ワクチン裁判で負けたのは原告側の研究者、医師や弁護士ではない。
医師は自閉症児の治療を続け、危険性のある療法を行い、サプリを売り続ける。
たとえば、自閉症はチメロサール入りのワクチンが原因だから、体内の水銀や鉛などの重金属を排出させるキレーション療法。

弁護士は訴訟をし続け、勝とうが負けようが報酬は受け取る。
ある法律事務所は、ワクチン法廷に216万1564ドル10セントの請求書を提出した。
1980年代の百日咳ワクチン恐怖のときには、数百万ドルが補償金や和解金として支払われた。その結果、反ワクチン組織は人身被害弁護士と結託して活動するようになった。弁護士の多くは顧問委員会の一員となってワクチンの危険性を訴え、どう補償金を勝ち取るかを説明する小冊子を作る手助けをしている。

負けたのは医師と弁護士に誤った道へ導かれ、自閉症の子どもを育てる経済的な負担から解放されたいと思った親たちだ。
ワクチンについて親を脅えさせ、反ワクチン運動活動家と結んでいる人身被害弁護士に金づるを与え、多くの場合、直接自分の診療所で偽りの希望を売る医師の待ち構える腕の中に親を追い込むのだ。

小児科医のラフル・パリク
強く感情を揺さぶるアピールをして、親たちに子どもに予防接種をすることについて迷い、躊躇させてしまう。論理的に考える人もそうでない人も、こうした感情的な手法は忘れない。一方、医療、科学専門家は正確な証拠と研究を引いて対抗するが、これは多くの親には響かない。感情的ではないメッセージは印象に残りにくいのだ。

日本でも、ワクチンは効かないとか有害だなどいう主張を信じる人たちがいます。
人間は弱いものだと、あらためて教えられます。
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ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』(2)

2024年05月06日 | 問題のある考え
ワクチンによって子供の命が助かるようになったんから、親はワクチンを信用していいはずです。
ところが、ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』によると、子供にワクチンを打たないという選択をする親が増えており、防げるはずの感染症のアウトブレイクが起き始めています。

テレビの司会者、俳優、コメディアン、記者、議員、研究者、医師、弁護士たちが、ワクチンによって自閉症、糖尿病、多発性硬化症、注意欠陥障害、学習障害、知的障害、発達障害などになると脅し、それを信じた親がワクチンを拒む。
大卒か大学院卒の上層中産階級で、情報化社会で自分もインターネットを使えば専門家になれると思い、自分の健康については自分で決めると考える親たちだ。

1973年、イギリスで小児神経科医のジョン・ウィルソンはロンドン王立医学協会で、百日咳ワクチンは脳に損傷を与え、健康被害を引き起すと発表した。
その半年後、ジョン・ウィルソンはテレビに出演して、百日咳ワクチンが生涯にわたる健康被害を引き起こすと語った。

1972年にイギリスの子供の79%が百日咳ワクチンの予防接種を受けていたが、1977年には31%に減った。
ある調査では、47%の一般医が自分の患者に百日咳ワクチンを勧めないと答えた。
その結果、10万人以上の子供が百日咳にかかり、36人が死亡した。

日本でも1975年に厚生省が百日咳ワクチンの接種を一時停止したため、それ以前の3年間に400件の百日咳感染が起こり、10名が死亡したが、ワクチン中止後の3年間で百日咳の感染は1万3000件となり、113名が死亡した。

イギリス保健省は百日咳ワクチンのリスク調査をデイビッド・ミラーに依頼した。
調査チームは1976年から1979年にかけて調べ、DTPワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風の三種混合ワクチン)を3回接種した子どもの1万人に1人が永久的な脳損傷を起こしていると報告した。

1982年、アメリカで「DTP ワクチン・ルーレット」というテレビ番組が、百日咳のワクチンのために子供が自閉症、知的障害、てんかんなどになり、死亡する子供もいると主張した。

人身被害を専門にする弁護士たちは、ワクチンによって子どもが被害を受けたと信じている親に、正義の裁きと賠償を受けるように促した。
「ワクチン・ルーレット」が放映される1年前の1981年にワクチン製造会社を相手取った訴訟は3件だったが、1986年には255件となった。
原告が求める金額の総額は、1981年の2500万ドルから1985年には32億ドルに増えた。

製薬会社はワクチンの値段を上げ、そしてワクチン製造から撤退した。
1960年に7社がDTPワクチンを製造していたが、1986年には製造供給する会社がなくなった。
麻疹ワクチンを製造する会社も6社から1社に、ポリオワクチンは3社から1社になった。

1986年、アメリカで小児予防接種被害法が成立した。
ワクチン被害を訴える人が訴訟を経ることなく補償金を受け取ることができる、製薬会社を訴訟から守る、ワクチンの研究と製造を続けるよう助成することが目的だった。

1988年、DTPワクチンによって子供が知的障害になったとして損害賠償を請求した訴訟で、イギリスの法廷はジョン・ウィルソンの論文やデイビッド・ミラーの研究の誤りを指摘し、百日咳ワクチンが乳幼児に永続的な脳損傷を引き起こす可能性を否定した。

1989年にイギリス小児科学会とカナダ国立予防接種勧告委員会は、百日咳ワクチンが永続的障害を引き起こすという証拠はないという結論を出した。
1991年、アメリカ科学アカデミーの医学研究所が百日咳ワクチンと脳損傷の関係は証明されていないと結論を出した。

「ワクチン・ルーレット」が放映されてから現在までに、百日咳ワクチンで脳損傷も乳幼児突然死症候群も起こらないことがはっきりした。
つまり、百日咳ワクチンによって脳損傷を起こすという「ワクチン・ルーレット」の主張はでたらめだったわけです。

ところが、その後もワクチンによる健康被害が主張されています。
1998年、MMRワクチン(麻疹・風疹・おたふく風邪の混合ワクチン)を打つと自閉症などになるというアンドルー・ウェイクフィールドの論文が医学誌「ランセット」に掲載された。

アンドルー・ウェイクフィールドがMMRで自閉症になると仮設を提示した1年後の1999年、ワクチンに含まれるチメロサール(エチル水銀に由来する防腐剤)が原因で自閉症になると考える団体が現れた。

チメロサール入りワクチンを受けた子と受けなかった子の自閉症リスクを検証する大規模な疫学研究が行われ、結果はチメロサールでは自閉症にならないという結論だった。
ところが、自閉症児の親と弁護士が損害賠償の裁判を起こそうとした。

ワクチン健康被害補償制度(VICP)は数年にわたって5000件を超えるワクチンが子どもを自閉症にしたと主張する親たちの訴えを検討してきた。
5000人の子どもへの補償金のコストは45億ドルに達する。

総括的自閉症訴訟と命名された裁判では、2つの仮説が問題になった。
・MMRとワクチンの中のチメロサールの組み合わせが自閉症を引き起こすというもの。
・チメロサールだけが原因だというもの。

2009年、VICPの特別主事はMMRワクチン+チメロサールを含むワクチンが自閉症を起こすという主張を退けた。
2010年、特別主事はチメロサール自閉症原因説は科学的に認めがたいと裁定した。

アンドルー・ウェイクフィールドの論文に取り上げられた8人の子どものうち、5人の両親がMMRワクチンが自閉症を起こしたと製薬会社を訴えるところだった。
2010年、アンドルー・ウェイクフィールドは子どもたちを代表して薬害訴訟を計画する弁護士から44万ポンド(約80万ドル)をもらって論文を作成したこと、証拠の捏造や改竄などをしたため、イギリスでの医師免許を剥奪され、イギリスで医師としての診療活動は不可能になった。
しかし、アンドルー・ウェイクフィールドはその後も反ワクチンの人たちからは政府や製薬会社に立ち向かった英雄扱いされている。

HPV(ヒトパピローマウイルス)は子宮頸ガン、頭部、頸部、肛門、性器のガンの共通する唯一の原因であり、ワクチンはこうしたガンの85%を防ぐ。
反ワクチン運動家がHPVワクチンで、脳卒中、血栓、心臓発作、麻痺、痙攣発作、慢性疲労症候群を起こすと主張した。

2013年、厚労省は副作用を恐れ、HPVワクチンの定期接種勧奨を差し控えた。
しかし、HPVワクチンは認可後に百万人以上を対象にして調査が行われ、主張されているような病気は起こっていない。
毎年約1万人の女性が子宮頸ガンにかかり、約3000人が死亡している。

『反ワクチン運動の真実』の日本語版は2018年発行なので、新型コロナウイルスワクチンについては触れていませんが、反ワクチン信奉者の主張は同じものです。
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