三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』(6)

2024年06月03日 | 問題のある考え
ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』にはクリスチャン・サイエンスについても書かれています。

クリスチャン・サイエンスはメアリー・ベイカー・エディが1879年に設立した。
信仰療法を説き、一切の医療を否定している。

神は完璧だから完璧な世界を作った、痛みなどは実際は存在しない。
病気は身体の症状ではなく精神によって起こるから、信仰によって病気は消える。
天然痘のような病気はワクチンではなく、祈りによって予防することができる。
メアリー・ベイカー・エディは著書に「我々が天然痘になるのは、他の人が天然痘になるからだが、それは物質ではなく精神が病気を取り込み運ぶのだ」と書いている。

科学の特徴は再現性と反証可能性です。
再現性とは、理論で予想されたこと、実験で得られた結果を、他の人がいつでもどこでも再現できることです。
たとえば、STAP細胞は世界中の科学者は再現できませんでした。

ウィキペディアによると、反証可能性とは、自らが誤っていることを確認するテストを考案し、実行することができるということです。
それに対し、宗教や疑似科学などは「自らが誤る可能性を認めない」「誤っているかを確認するテストを考案できない」「検証不可能な説明で言い逃れする」のが特徴だそうです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8D%E8%A8%BC%E5%8F%AF%E8%83%BD%E6%80%A7

では、祈りで病気が治るのでしょうか。
ポール・オフィット『代替医療の光と闇』に祈りによる病気治療について書かれています。

自分のために家族が祈ってくれることを知っている患者は、回復率がわずかに高い。
祈ってもらっていることを患者が知らなければどうだろう。
こっそり祈ってくれる人がいることが患者の回復に効果あるなら、神の介入が示唆される。
しかし、研究では祈りには効果がなく、神の癒やしが行われる可能性はない。
信仰で病気が治るとしたら、これまたプラセボ効果なわけです。

百日咳、ジフテリア、麻疹などのワクチンは効果と安全性が検証されています。
手かざしによって病気が治ると説く宗教や代替医療があります。
どのようにしたら検証できるでしょうか。

左巻健男『陰謀論とニセ科学』にエミリー・ローザの実験が紹介されています。
1996年、アメリカのコロラド州ボールダー市(人口10万人ちょっと)に住むエミリー・ローザ(9歳)は小学校のサイエンス・フェスティバルという自由研究で、セラピューティック・タッチ(手かざし療法)を検証した。

セラピューティック・タッチはニューヨーク大学看護学部の名誉教授ドロレス・クリーガーが体系化したヒーリングの一種。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%83%83%E3%83%81

セラピューティック・タッチを習得したヒーラーは、患者の身体から少し離れたところに手をかざすとエネルギーの場を感じ取ることができ、その乱れを整えることで治療ができると主張している。

エミリー・ローザの呼びかけで、エネルギーの場が実在するかを検証する実験にボールダー市で開業する21人のセラピューティック・タッチのヒーラーが集まった。
ドロレス・クリーガーにも参加を呼びかけたが、時間がないとして断られた。
https://asios.org/rosa

1996年にジェイムズ・ランディがセラピューティック・タッチの検証実験を企画し、74万2千ドルの賞金を懸けた時は、60以上の団体や個人に申し込んだが、返答があったのは1人だけで、その1人は実験をクリアできなかった。

エミリー・ローザの実験は次のような手順で行われた。(材料費は10ドル)
① エミリーがヒーラーと1対1で向かい合って座る。
② テーブルにはダンボールで作った衝立を用意した。衝立にはヒーラーの左右の腕を通せるように2つの穴が開いている。穴から向こう側が見えないように布が被せられている。
③ ヒーラーは穴に手を通し、手のひらを上に向ける。
④ エミリーはヒーラーの左右どちらかの手の少し離れたところに手をかざす。左右どちらにするかは毎回コイン投げをして決める。
⑤ ヒーラーは左右どちらにエミリーの手があるのか、エネルギーの場を感じ取って当てる。
⑥ 実験の一部始終はビデオで録画する。

テストは280回行われ、当てられたのは123回、正答率は44%だった。
偶然でも半分は当たるはずなのに、それを下回る結果に終わった。

手かざしで病気が治ると主張する教団はエミリー・ローザが考案した実験を公開でしたらどうでしょうか。
信者が増えると思います。

セラピューティック・タッチやレイキは宗教ではありませんが、再現性と反証可能性に問題があるようです。
ホメオパシーやカイロプラクティックといった代替医療は一種の宗教じゃないかと思います。
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