マガジンひとり

オリンピック? 統一教会? ジャニーズ事務所?
巻き添え食ってたまるかよ

国家が破産する日

2020-01-28 19:09:57 | 映画(映画館)
국가부도의 날@下高井戸シネマ/監督:チェグクヒ/出演:キムヘス、ユアイン、ホジュノ、チョウォジン、ヴァンサン・カッセル/2018年韓国

すべての投資家はいますぐ韓国から離れなさい
1997年、前年にOECD加盟した韓国の誰もが国の躍進・好景気を信じて疑わなかったそのとき、巨大な通貨危機が近づくことを察知した韓国銀行通貨政策チーム長ハンシヒョン(キムヘス)は、政府が債務不履行(Default = 映画の英題)におちいらないよう対策を練り始める。

一方、あちこちに露呈し始めた不況のサインをみた総合金融会社(韓国のノンバンク)の社員ユンジョンハク(ユアイン)は会社を辞め、通貨危機に逆張りして儲けるため投資家を募る。この危機を知るよしもない小さな工場の社長ガプス(ホジュノ)はデパートと手形取引契約を結び家族の幸福を夢みる。

国家不渡りの日(原題)までわずか一週間。対策チーム内で危機対応をめぐってハンと対立する財政局次官パク(チョウォジン)はIMFから融資を受ける代わりIMF・米政府主導の構造改革によって韓国の旧弊を一掃できると考え、密かに根回しを進める。しかしこの改革は多くの企業の倒産や、正規から非正規雇用への転換を容認する非情なものであった…。


ご存じ山本太郎は積極財政論者だ。消費税を減税あるいは廃止、金持ちから取るようにして国債を発行し、財政出動する。正直どういうつもりなのかと思う。

政府・自治体の借金がGDPの2倍を超える大戦末期のような事態でも、通貨危機におちいらないのは、民間の金融資産がそれを大幅に超える担保になっているから。銀行や企業のような言い方であれば「自己資本比率が高い、100%以上」。もちろん金融資産を持っているのは全国の高齢者や投資家や企業が銀行などを通じて。彼らは、たとえば安倍昭恵が短大卒資格であるが社長の娘なので電通に縁故採用され、いまは政府の桜を見る会の仕事をお友だちの業者に発注させているというように、縁談や就職の世話、融資の斡旋、法律相談、子どもの学校などなど巨大で直接的なネットワークを形成している。地方の医者や世襲経営者が愛人にスナックを経営させ、自分も夜毎そのスナックで異業種交流を行ったり、親学だの日本会議だの青年会議所だの、活発にお金と情報が動く生きたネットワークであり、経済そのものともいえよう。

金持ちから取るということは、このネットワークを乱し、銀行や人材企業や地方の斜陽企業に退場を迫り、彼らの一部を路頭に迷わせることを意味する。彼らがそれ以外に生産的な仕事をできるとは思えない。入居者のいない賃貸物件の資産価値はゼロに近づく。株や不動産、人的ネットワークで結ばれている金融資産は連鎖的に目減りし、政府のデフォルトだけでなく、健全経営の企業も次々倒産し、日本発で世界を巻き込む金融危機に至るかも分らない。

わが国のGDPは内需中心であり、変化を拒む既得権の構造が確立しているからGDPの2倍も借金を膨らませることができたので、貧乏人が生活苦で借金すれば金利と消費税と2重に取られることになり、消費税をやめろという山本太郎の主張はもっともなのであるが、革命でも起こさない限り不可能で、不可能と分っている理想論を掲げるのはどういうつもりなのかと。


韓国国民にとって、たくさんの倒産・失業者・自殺者が出て運命の変ったIMF危機は大きな傷になっており、この映画の監督は「あの時のあなたの選択は仕方がなかった」というように国民を慰撫する目的で危機全体を図式化・単純化してしまっている。90年代タイやフィリピンや韓国の通貨危機のころ、わが国もバブル経済の後始末で政府が揺れていた。住専などの不良債権をどうするか、責任問題を恐れる大蔵省(財務省)が弥縫策に終始したことも、失われた30年を招いた一因といえよう。

金融危機は「流動性の危機」であり「返済能力の危機」ではない。不良債権なら、不動産とみればどんどん貸した銀行と、銀行や農協の傘下のノンバンク(住専)が悪い。巨大で複雑すぎるネットワークで結ばれ、連鎖的に目減りし、貸し手が資金回収に走る。日本は先行して貿易で儲け、内需型の自己資本が確立しているから、山一や拓銀が潰れてメガバンクなど銀行再編されたけれどもシステムそのものは温存される。韓国は後発で、外需依存でありながら通貨危機で外資が一斉に逃避し、IMF管理による構造改革が行われ、ますます外資に適した国になる。K-popや韓国映画はいまや世界ブランド。立場が弱いから外圧で変化を強いられた。

パプリカっていう曲はあの子どもらが作詞作曲したのかってくらい音楽性が虚無である。情報量が少なく、人間らしくない。システムが変化していないから、そこを母体として育つ若い世代もロボットみたいになる。ただ、いわゆるK-popも、商品として世界で受け入れられているだけで、記号的で人間らしくないことは変らない。少子化も自殺率も日韓共通。もっと大きな、金融とインターネットの結びついたシステムが国家を超えた影響力を持ち、金利と消費税の2重取りのような形でわれわれを縛っているのである—
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ベイビー! 逃げるんだ | トップ | 1-Feb-2020 Top 20 Hits »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(映画館)」カテゴリの最新記事