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永遠に僕のもの

2019-11-20 16:02:08 | 映画(映画館)
El ángel@下高井戸シネマ/監督:ルイス・オルテガ/出演:ロレンツォ・フェロ、チノ・ダリン、セシリア・ロス、ダニエル・ファネゴ/2018年アルゼンチン・スペイン

1971年、ブエノスアイレスの邸宅。天使のように美しい17歳の少年、カルリートスは平凡な両親の心配をよそに住居侵入や窃盗を繰り返し、平然とウソをつく生活を送っていた。転校先でラモンという名の不良青年に魅了され執着するようになったカルリートスはラモンに取り入り、彼の父であり札付きのワルであるホセと共に3人で強盗を繰り返すようになる。犯罪者としての天性を発揮するカルリートスによって大金を手に入れた3人であったが、ホセはカルリートスのためらいなく発砲・殺人する無軌道ぶりを危険視するようになる。やがて警察の検問に引っかかり逮捕されたことからカルリートスとラモンの関係に決定的な亀裂が走り…。

12名の殺人を重ねた実在の殺人犯で、その美貌から「死の天使」と呼ばれてアルゼンチン全土を騒然とさせたカルロス・エディアルド・ロブレド・ブッチをモデルとし、彼をゲイのサイコパスとして描くことで、主演ロレンツォ・フェロの「空虚で不気味だが両性具有的な悪の魅力」を引き出すことに成功したクライム・サスペンス。

 

脱ぎたがーる。いやぼーい。すぐ半裸になる。自分でもかわいいと思っている。私からみて、イアン・ミッチェルとロバート・プラントを足して2で割ったような、まあそうかわいくない。イアン・ミッチェルというのは40代以下であればまったく知らないと思いますが、世界的に若い女性からキャーキャー騒がれた英アイドル・バンド、ベイ・シティ・ローラーズ全盛時に顔だけで選ばれて加入してすぐ辞めた、辞めて自分で組んだバンドも来日したりしばらく人気のあった人ですね。当時としてはかわいかった、いまは小さな童顔の初老。

ほぼすべてのロックバンドは女からモテたくて、たくさんの女を抱くことを目的の一つとして音楽を始める。何度も同じことを述べて恐縮ですが、クラッシュのフロントマン、ジョー・ストラマーには友人の恋人を寝取るという悪癖が…。もちろんそれは彼の自由奔放な音楽性と表裏一体であり、もう死んでしまったから私は安心して彼の自由な音楽を楽しむことができる。

この映画でも音楽が終始重要な役割を果たす。最も印象的だったのは、犯行に使った車を、証拠隠滅のためカルリートスがガソリンをかけて焼いてしまう場面で流れるアニマルズ「朝日のあたる家」スペイン語カバー。歌詞が改作されている様子。「なぜいつまでも過去から逃げられないのか。なぜあなたは俺を捨てたのか」。淫売の母、ギャンブラーの父。



ツイッターで「桜を見る会についての記者会見でbakaABEが『真実こそ重要』と述べると会場で失笑が起った」と目にし、この記事で使うためさかのぼって探したが見つけられなかった。それ自体ウソかも。でもその場にいる全員が「首相はウソにウソを重ねた犯罪者」と知っていることは確か。検察官のように問い詰めないのは、そうすれば上司や記者クラブによって排除され、路頭に迷うから。家族も。政治部の記者になるためのすべての努力が水の泡。記者だけでなく、大多数の国民が同じように現状維持を望み、安倍政権の犯罪を見逃して、こんにちの状況を招いた。

カルリートスは「淫売の息子」ではない。善良な両親、決して貧しくない生い立ち。でも「盗むということを知らない。そもそも誰かの所有物であるという概念がない」とうそぶき、犯罪を繰り返す。同性愛の傾向があり、不良の魅力を放つラモンとその父、次いでムショ返りのミゲルと組むが、いずれも裏切り、ラモンは心中同様に事故死させ、ミゲルについては殺してしまう。ラモンもミゲルも自己陶酔的に「犯罪こそ人間の正義」と語るから、殺されるのも道理だ。

カルリートスの自由は、自分がかわいいという幼児的な自己愛や全能感の表れであり、刹那的な快楽のため犯罪を繰り返し、他人を傷つけることで、だんだん苦しい状況へ追いやられる。車を燃やす場面は象徴的だ。自己愛性の人格障害のように描き、彼の特異性を際立たせ、映画としては軽く楽しくみられる。しかし中南米各国に政情不安が続き、貧富の差が激しく、治安が悪いという社会環境の問題と、彼の「犯罪の自由」を切り離して考えることはできない。

日本人は行列が好き。秩序を好み従順。労働者としては優秀。なのでアルゼンチンのように先進国から転落するとは考えにくいが、決して安倍晋三と側近たちだけのせいでなく、だんだんと中南米諸国に近い社会状況になってゆくことは避けられないでしょう。

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