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人民警察

2021-08-25 16:02:01 | 映画(映画館)
Volkspolizei 1985@下高井戸シネマ/監督:トーマス・ハイゼ/1985年東ドイツ

4月の復活祭(イースターホリデー)を直前に控えた人民警察内部。警官はコーヒーを飲みながらアイスホッケーや映画のラブシーンに見入っている。働く大人たちは無気力に日々を送り、働かない若者は体制反発者となる。彼らに共通するのは現在も将来も見えない漠然とした不安の中で思考停止せざるをえない寂しい姿。監督はまだ10代前半の男の子に将来の夢を訪ねる。男の子は目を輝かせながら人民警察で働くと語る。この男の子も今は50歳となっているだろう。そして社会主義体制だったドイツ民主共和国はこの子が成人する時に消えてしまった。 



1955年東ベルリンの知識人家庭に生まれる。東独国営映画会社デーファ(DEFA)で監督助手として務めた後、70年代後半からドキュメンタリーを志す。ポツダムの映画アカデミーを中退した後フリーの創作活動を開始するが、独自の企画は実現しなかった。ラジオドラマ、演劇、記録映像撮影などに携わり、その間に準備を進めた企画をドイツ統一後に次々と発表した。これまで20作以上のドキュメンタリーを完成させ、今や世界の注目するドイツの映画監督の一人である。戦争・ホロコースト・体制の転換に翻弄された一家の歩みを描く新作『ハイゼ家 百年』が日米初劇場公開作品となる。


花輪和一『刑務所の中』は真の宝石だ。何度読んでも飽きるどころかますます面白い。「あのさ~飯にしょう油かけて食うとすごくうまいよ。一回やってみな」「おれたちの房にもいるんだよね。体に悪いって言ってもビチョビチョにかけて食うの」//「知ってる? 島田の乳首すごくちっちぇえよ。今日風呂だからよく見てみ」。会話の内容は幼児そのものだが誰もそのことに気づかない、と執筆時の花輪氏。

何しろ一癖も二癖もある元犯罪者なので徹底した一元管理によって、受刑者が不満を持って暴動を起こしたりしないよう誘導。素行によって懲罰房、逆に等級による映画鑑賞(お菓子付き)や作業賞与金など、受刑者が進んで秩序に従うよう仕向ける。いま読み返してみると、政府のコロナ対応が無能無責任でも日本の重症化・死者数が依然として欧米先進国を下回っていることにつながる特異な民族性が浮かび上がる。「会話が幼児」「進んで秩序に従う」。

米国のQアノン=トランプ信者は反マスク反ワクチン一辺倒であるが、逆に日本のネトウヨはワクチンを絶対視する傾向がある。私は「日本の音楽は世界一みっともない」が持説なのでフジロックなどそもそも賛同できないが、政府・東京都がオリンピックやGoToをやっているのにフジロックだけ叩くのもスケープゴートそのもので気持ち悪い。いまだ「遊び回ってたから感染したんだろ」的な言説が健在。職場・学校・家族間が圧倒的に多いに決まってるでしょ。ネトウヨや自民党支持層による人をおとしめて自分を守ろうとするエネルギーはものすごい。刑務所の中のチクリ屋だ。私を含め日本人は自由と責任が嫌い、憎んでおり、差別・いじめが好きな権威主義の子どもなのだ。

『人民警察』は学校の研究発表、文化祭の(映画でなく)演劇のよう。手作り感。ニート青年の騒音トラブルで出動してみたら父子ゲンカだったという寸劇も。ありのままの東ドイツ。それだけに同時代の教条主義の東ドイツでは公開を許されなかったとのこと。知識人一家なので秘密警察シュタージによる監視対象だったともいう。刑務所や東ドイツのような一元管理でなく、中心のない、誰も管理責任を問われない多元管理・監視社会に生きる私たち。
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