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400mハードルで優勝したウガンダのジョン・アキブア。優勝候補とされたマン(米)とヘメリー(英)を世界新記録となる47秒8で破ったとのことだが、実はいよいよ始まる今年のロンドン五輪を控えた同種目の今期ランキング上位もほとんど同じ水準で、日本選手権で48秒41を出した岸本鷹幸選手も、記録だけなら決勝進出可能な位置にある。
400mハードルはオリンピックで日本勢が決勝進出したことのない種目だが、世界選手権やユニバーシアードでは結果を残してきた「お家芸」に近い種目であり、他にも三段跳やハンマー投げ、近年では競歩など、陸上の中ではわりと選手層の薄い、熱心に取り組む国が少ない種目でコツコツ努力してきたってことでしょうな、日本人は。これは競技の単位でも言えることである。
今回のトライアスロンに出るナントカいう女子の選手は、1日に6000キロカロリーの食事をとるのだそうな。激しい練習をこなすため。すなわち、学校の部活で採用して全国大会を開くとか、卒業しても企業チームのリーグ戦などがあって、興行だけで成立するプロとまでいかなくても、選手や指導者を養っていける市場というかシステムがなければお話にならない。
ということで「社会主義」の出番。かつての体操やバレーボールで日本のライバルになった国、あるいはテレビ映えのしないマイナー競技でメダルをごっそり持っていく国というのは、ソ連や東ドイツ、ハンガリー、だいたいが旧東側の国であった。この1972年のミュンヘン大会でも、金メダルの獲得数ではソ連、アメリカ、東ドイツの順となっている。
たびたび触れてきたように、高度成長期の日本というのは、社会保障もできる限り企業に委ねる「会社中心の社会主義」のようなところがあったわけで、殖産興業のための人材確保・育成という見地からオリンピックの実状をかんがみるに、社会主義・共産主義とは自由主義・資本主義と完全に対立的で相容れないものではないと考えざるをえません。
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文句なしで大会の顔となった水泳7冠のマーク・スピッツ(米)。22歳の歯科大生で、ユダヤ系。
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男子の100mはアメリカの選手が予選に遅刻して失格したのも手伝い、ソ連のワレリー・ボルゾフが完勝。200mでも優勝した。
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メイン・スタジアムの観衆を釘づけにする長丁場の戦いは、シーグレン(米)が5m45を3回目もクリアできず、棒高跳でオリンピック16連勝してきたアメリカがついに王座を陥落。
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東京で銅、メキシコで銀の日本男子バレーが決勝で東ドイツを破り念願の金。私は小2でしたが夕方に『ミュンヘンへの道』とか放映されて、ほとんどの選手の名を覚えてましたな。
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女子バレーはソ連に敗れ2位。髪型が時代をしのばせる。
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前回メキシコでは行われなかった柔道が復活。しかし今回も重量級・無差別級はヘーシンクの後継者、ウィレム・ルスカ(オランダ)が日本勢を阻んだ。
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体操日本は団体総合など4つの金メダルを獲得し、個人総合、鉄棒、平行棒では1~3位を独占。画像は個人総合を2連覇した加藤沢男の跳馬。
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ソ連の女子体操選手オルガ・コルブトは年齢こそ17歳ながら妖精のようなかわいらしさで実力者のツリシチェワ以上の人気を呼び、次回以降コマネチ(ルーマニア)らローティーンの選手が席巻する呼び水となった。モントリオールやモスクワ当時の女子体操を扱う写真集は、現在古書市場では別の目的で高値となっている。
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カヌーのスラローム競技はミュンヘンで初めてオリンピックに採用され、15億円かけた西ドイツご自慢の人工渓流で行われたものの、東ドイツが4種目の金メダルを独占。
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「金日成首相の励ましどおり標的を敵だと思って撃った」と語り、物議をかもしたリ・ホジュン選手。北朝鮮に初めての金メダルをもたらした。
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8月26日には初参加のイスラエル選手団も入場行進したメイン・スタジアムは一転、9月6日にはベートーヴェンの葬送行進曲で始まる、パレスチナ・ゲリラによるテロ事件の犠牲者を追悼する場となった。
日程も順調に消化され、成功裏に終盤に入ったかに見えた9月5日、不幸な事件がミュンヘンを襲った。「黒い9月の手」と名乗るパレスチナ・ゲリラの襲撃により、イスラエル選手団28人中11人が殺害されるというこの事件は、大会の競技を34時間ストップさせ、オリンピック史上にぬぐいがたい血痕を残したというだけでなく、国際関係に新たな緊張を生み、複雑な尾を引いて各国を巻き込むことになった。ことに、ナチの宣伝に終始したベルリン五輪を払拭しようと「平和なドイツとオリンピック」を掲げ、並々ならぬ努力を重ねてきたホスト国・西ドイツ政府と国民の衝撃・苦悩は計り知れない。
事件の経過は、5日未明、ゲリラ8人が選手村のイスラエル宿舎に侵入、格闘の末2人を殺し、逃げ遅れた9人を人質に立てこもった。ゲリラ側は人質の命と交換にイスラエルが捕えている230人の政治犯の釈放を要求。西ドイツ当局はゲリラ側との交渉を延ばしたが不成功に終わり、ゲリラと人質を国外に運び出す約束をする。午後10時過ぎ、3機のヘリコプターでゲリラと人質は空港へ。待機していた警備陣は一気にゲリラ側の戦力をそごうと発砲、しかし闇も手伝ってうまくいかず、銃撃戦となり、人質のヘリはゲリラの手榴弾で炎上、全員死亡した。ゲリラ側も全員、死亡するか捕えられた。衝撃の1日はしかし、あまりに大きな傷を残した。 ─(画像は毎日グラフ臨時増刊1972・9・27 栄光と衝撃の17日間・ミュンヘンオリンピック、より)
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