ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

共同参画

2010年10月19日 | 社会・政治
 近頃では婚活という言葉を耳にしない日はありません。
 結婚紹介会社だけではなく、野球の席をペアで売り出せば婚活シート。結婚詐欺は婚活詐欺。お相手探しの活動をブログにすれば婚活ブログ。
 誠におめでたい社会です。

 一方、30になっても40になっても結婚しない未婚率は、依然として高水準です。35歳の男性未婚率は35%を超え、女性でも25%。
 少子化はますます進んで、最も重要な社会資源である人間が減ってきています。
 事態はすでに、憂慮すべき段階に達しています。

 婚活という言葉の生みの親である山田昌弘中央大学教授の最新刊、「『婚活』現象の社会学」によれば、結婚したい人の比率は変わっておらず、理想の相手がいれば明日にでも結婚したい、という人はかなり多いそうです。
 
 ではどうして結婚しないのか。
 
 理由は簡単。理想の相手がいないからです。
 
 女性から見た理想の相手は、専業主婦になっても安心して暮らせるだけの収入がある男性。
 しかしバブル崩壊後20年、日本は沈みっぱなしで、それだけの収入がある男性が激減しています。
 そして山田教授がインタビューする未婚女性は決まって、「出会いがない」「いい相手がいない」「いい人だと思ったら、結婚していた」と嘆くそうです。 
 ある結婚相談所の職員によると、女性の母親が口出しする例が多く、「宮様連れてきても断るわよ、きっと」なんて陰口をたたくこともあるとか。
 
 一方男性は自分の収入では妻子を養っていけない、と悲観し、「高収入を稼げるようになったら結婚する」とか、「低収入の自分を好きになってくれる人が現れたら結婚する」と言い訳するそうです。

 婚活の多くが、失望しか生まない、というのは皮肉な現実です。
 元々無理な高望みをしているのですから当然ですが、世の中には高給取りの男は数%しかいないし、低収入の男と結婚しようと思う女は滅多にいないのです。
 しかし婚活の最大の意味は、失望にあるのかもしれません。
 厳しい現実を知り、高望みをやめるきっかけにはなるでしょう。
 待っていても白馬の王子様は現れず、普通の男さえ現れない。
 どんなに頑張ってもたいして給料は上がらず、低収入でもいいからあなたと結婚するわ、なんて女は現れない。
 いつまでも、高収入で気も合い、外見も良い相手を求めて独身を続けるか、適当な相手とくっつくか。
 昔のお見合い結婚は、条件がそこそこ合えば、嫌いではない程度で結婚していたので、ほとんどの人が家庭を持ったのでしょう。

 私は収入のミスマッチをクリアするには、共働き、共家事しかない、と考えます。
 もはや男が稼いで女が家事育児、という時代は、日本では終焉を迎えつつあるでしょう。
 男も女も稼いで、女も男も家事育児に従事する。
 男は女を差別せず、女は男に頼らない。
 二人で稼げば、高給取りの男一人分くらい稼げます。
 稼ぐ能力は、個人差はありますが、性差はないものと考えます。家事育児も同様。
 男は男らしく、女は女らしく、という呪縛からいい加減逃れましょう。
 その人らしく、で良いのです。
 
 それには男女とも、性別による社会的な役割分担はもはや存在しないことを肝に銘じることが大切です。
 そして日本社会全体が、男も女も収入を得、家庭を守り、地域の事業に参加するのが当然だと、意識改革する必要があります。
 そういう社会になれば、婚姻という制度自体が溶けていき、自己の選択としての生涯独身も事実婚も許容され、人間本能の結果として、婚外子を含めて人口減に歯止めがかかるのではないでしょうか。
 内閣府男女共同参画局には、気合をいれて奮励努力願いたいものです。
 
「婚活」現象の社会学 日本の配偶者選択のいま
山田 昌弘
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山田 昌弘,白河 桃子
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常識と「ゆきゆきて、神軍」

2010年10月19日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 中国の反日デモがますます盛んになっているようです。
 困った事態です。

 日本では、特定の国を非難するために略奪や破壊活動をするなんてことは、常識外れの誹りを免れません。
 しかし一方、日本の常識は世界の非常識、とよく言われます。
 これは多分、世界の、ではなく、米英の、なんだろうと思います。
 米英に敗れて現在の国の形ができたので、米英追随が習い性になったわが国で、国防面だけは両国と常識が異なっている、ということでしょう。
 常識ということを言えば、場所、時代で異なるのは当然です。
 イスラム原理主義の人々の常識と我々日本人の常識はまるで異なっているでしょう。
 また、戦国時代の日本人と現代を生きる我々とでは、常識は全く違っています。
 当然、今の中国と日本の常識もまた、相容れることができません。
 唯一とれる手段は、分からないけど相手の言い分をとりあえず聞くこと。そしてこちらの言い分を言うこと。両者は理解しあえなくてもいいから、落としどころを探ることでしょう。

 奥崎謙という人をご存知でしょうか。
 「ゆきゆきて、神軍」というドキュメンタリー映画で有名な元日本兵です。
 金銭トラブルから傷害致死事件を起こしたり、天皇陛下にパチンコを打ったり、猥褻図画をばらまいたり、何かとお騒がせな人物です。
 しかし最も有名なのは、映画で描かれた、日本軍の暴行を暴くため、かつての上官を訪ねて、時には脅したり、殴りつけたりして、飢餓ゆえの人肉食や、違法な部下殺害を白状させた事件でしょう。
 応対に出た元上官の長男に発砲し、刑務所に収監されています。
 出所して、五年ほど前に亡くなっていますが「ゆきゆきて、神軍」の強烈さは、ますます輝いています。

 彼は自らを神の兵と呼び、天皇の兵であった犯罪者たちを裁こうとします。
 その目は異常な正義感に燃え、行動は狂気を帯びています。
 彼の常識は、現在の日本人とは相容れません。
 もちろん、戦前の日本のそれとも、相容れなかったことでしょう。
 しかし彼は、おのれこそ正義と信じ、他の人々の常識を受け入れようとしません。

 高校での銃乱射事件を取材した「ボウリング・フォー・コロンバイン」や、ブッシュ前大統領をコケにしてカンヌでパルムドールを受賞した「華氏911」等で有名なドキュメンタリーの第一人者、マイケル・ムーア監督は「ゆきゆきて、神軍」をこれまで観たなかで最高の作品と讃えています。

 重臣がみな狂気に陥ったとき、正気の殿様が狂人にされそうになり、殿様は気が狂う薬を飲んで狂気となり、殿様と重臣は仲良く暮らした、というお話しを子どもの頃に聞きました。
 常識も正気も、狂気や盲信と紙一重。
 おのれ一人の小さな常識に捉われることなく、常に自分が非常識なのではないかと疑いつつ、しかし常識人を装って生きていく他ありますまい。

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