グリム兄弟の「ハーメルンの笛吹き男」の話は、子どもの頃に一度は聞きかじり、恐怖に震えたのではないでしょうか。
聖ヨハネ祭の頃、ネズミの大量発生に困っていた村に派手で大きな笛吹き男が現れ、報酬をもらえるならネズミを退治してあげよう、と言い、笛を吹くと村中のネズミが男の後をついていき、川で溺死します。
ところが村人が報酬を支払わなかったところ、翌年の聖ヨハネ祭の日に村に現れて笛を吹くと、村中の子どもたち130人が笛吹き男の後をついていき、二度と戻らなかった、というお話しです。
じつはつい最近までハーメルンでは、この事件が起きたとされる西暦1284年を元年とする暦を使う風習があったそうです。
多分子どもが大量に消えたことは歴史的事実だろう、と多くの研究者が憶測をたくましくしています。
遭難説、戦死説、東方植民説、舞踏病説、など。
私が興味をそそられたのは、当時ヨーロッパで広く知られていたという舞踏病説です。
これはお祭りのときなどに大勢で踊っていると、子どもや若者などが熱狂して忘我状態になり、倒れるまで(ひどい時は死ぬまで)踊り続けたというものです。
聖ヨハネ祭は夜に火をたいて踊ると言いますから、舞台装置としては最高じゃないでしょうか。
ナチの祭典などもあえて夜中に篝火を焚いて行い、人々が熱狂しやすくした、と聞きます。(一番熱狂したのは総統でしょうけど)
日本でも狐憑きや、何者かに憑依された者が踊り狂う映像を時折見かけますね。
多分そのひどいやつじゃないでしょうか。
いわゆる、集団催眠による熱狂、脳内快楽物質の異常分泌。
最近は、手っ取り早く、違法ドラッグなどでトランス状態を求める輩が多くいますね。
不幸な大事件が起こると、人々は人知を超えた力が働いたものと推測し、その力を怖れ、鎮めようとしてきました。
ここでは、笛吹き男が大きくて派手だったことが強調され、それは言わば異界からの使者だったことでしょう。
日本で行われる神道の祭祀は、ほとんどが山や海などの自然神、怨みをもって亡くなった怨霊などの魂を鎮め、豊穣と安全を願うものです。
ヨーロッパにおいても、キリスト教社会が聖ヨハネ祭とこじつけて、古代の火祭りを残したことは、人間は普遍的に自然を怖れ、これを鎮めようとしてきたことを痛感させられます。
ちなみにヒトラーは、ドイツが日本に絶対に劣る点として、神道の存在と皇室の伝統をあげたそうです。
ヒトラーは大のキリスト教嫌いで、SS将校のキリスト教棄教率は90%を超えていたというから驚きです。
そして日本が真珠湾攻撃をすると、「我々は3000年間一度も敗れたことのない国を味方につけた」と叫んだそうです。
なんでも最初はあるもので、運の悪いことにヒトラーは日本最初の敗戦に付き合うことになりましたね。
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