30年も前に刊行された黛まどかの句集「B面の夏」を昨夜読みました。
この人の名前はもちろん30年前から知っているし、代表的な句のいくつかはなぜ覚えたのか分かりませんが、諳んじることもできます。
それなのに句集を読まなかったのは、この人、もしくはその周辺のファン達のイメージが恋愛依存的な雰囲気を醸し出し、気持ち悪くて面倒くさいように感じたからです。
改めて読んでみると特段恋愛依存とは感じませんでした。
ふらここや 恋を忘るる ための恋
のような句が恋愛依存的に感じたのかもしれません。
公園デートでしょうか、ぶらんこに乗りながら前の恋を忘れようと新たな恋を求めているというほどの意かと思います。
また、こんな句。
夜桜や ひとつ筵(むしろ)に 恋敵
なんて、怖いですねぇ。
私が最も好む句は、
飛ぶ夢を 見たくて夜の 金魚たち
です。
近頃では高校の国語の教科書に載っているのだとか。
一生を狭い金魚鉢で過ごす金魚でさえ、せめて夢の中では広い世界を飛び回りたいのでしょうか。
もはや大御所となり、いくつかの大学で客員教授を務めているそうです。
一口に30年と言いますが、それは途方もなく長い年月です。
30年前、私は24歳で、仕事にも少し慣れ、悪い遊びを覚え、天下を取ったような気持ちでいました。
まさか30年後、今の私のような疲れて冴えないおっさんが出来上がろうとは思ってもみませんでした。