ハの字に拡がったフロント・サスのロアアームと、激しくえぐれたサイドポンツーンが特徴的なMP4-20。
ロアアームの付け根を高い位置にすることでノーズ下の空気の流れをスムーズにするデザインですが、改めて見てみるとノーズ下からバージボード、サイドポンツーン脇からミッション部まで、太い空気の通り道が見て取れ、ノーズからの空気を、なるべく剥離させずに後方まで流そうとする様子が手に取るように分かります。(手に取ってるんですけどね)
こうやって、まじまじと最新のマシン・デザインを観察することが出来るのも模型の楽しみ。映像や写真では分からないし、実車を間近で観察する機会もあまりないですからねー。
(以下、駄文。F1オタの人だけ読んで下さい。)
それにしても、こういった複雑なデザインにしなければいけないのも、1983年から導入されたフラットボトム規定のせい。
フラットボトムという空力的に全くナンセンスな構造を堅持したまま、少しでも有利な形を追求した結果が現在のF1の形なんですよね。
初期のフラットボトム車は無様なほど空力に苦慮したスタイルだった。やがて新しいアイデアが取り入れられ洗練されるにつれてマシンにも美しさが戻ってきて、94年以降は新しい規定と新しいアイデア・技術の追っかけっこにより今のようなスタイルに辿り着きました。
20年以上に渡る発展は興味深くもあり、よくぞここまで変貌したと思うほど様々な技術革新を楽しめましたが、昨今のマシンはどれも形が似通ってきて、上位チームのデザインを下位チームが模倣するという情けない状況になりつつあります。
実際、複雑化した空力デザインをテストするには風洞装置が不可欠で、それを持つ有力チームのみが開発能力を持つことになります。
たとえばスーパーアグリがどう頑張っても、オリジナルの空力デザインを成功させることは難しいでしょう。
先に書いたノーズ下をクリアにして空気の流れを良くするアイデアも、4年前に弱小チームのアロウズが採用したツインキールが始まりだと思いますが、せっかくアイデアを出してもそれを昇華させて成功するのはマクラーレンやトヨタといったお金のあるチームなんですよね…。
なるべく差がつかないようにしてイコール・コンディションで戦わせようとするのがFIAの意向だと思いますが結局は複雑なレギュレーションをクリアしながら開発を進められるのは上位チームですから、差は縮まらないんですね。
このあたりでF1は、規定のあり方を根本的に見直す必要があるのかも知れない。
場当たり的に導入される新レギュレーションが果たしてどのチームにも平等に作用しているのか?
進化してゆくF1を見るのは楽しいし技術革新を阻害するような後ろ向きな規定には反対ですが、一方でアイデアと情熱で上位チームを食うことが出来たかつてのグランプリが懐かしい…
そんなことをチラッと考えてしまいました。
来年はエンジン開発の規制、タイヤのワンメイク化など今までにない大きな変革があるようですけど、果たしてかつてのどのチームにも夢のあったグランプリが復活するのでしょうか?
(写真:タメオ1/43 マクラーレンMP4-20 日本GP05)