<07月08日プレイリスト>
[JERRY RAGOVOY特集]
チャンスの前髪(TV Size)/竹内まりや 8月8日発売ニュー・シングル
THIS SILVER RING/THE CASTELLS '54
A WONDERFUL DREAM/THE MAJORS '62
CRY BABY/GARNET MIMMS '63
TIME IS ON MY SIDE/KAI WINDING '63
TIME IS ON MY SIDE/IRMA THOMAS '64
TIME IS ON MY SIDE/THE ROLLING STONES '64
STAY WITH ME/LORRAINE ELLISON '66
PIECE OF MY HEART/ERMA FRANKLIN '67
PIECE OF MY HEART/BIG BROTHER & THE HOLDING COMPANY '67
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■内容の一部を抜粋
・近況
竹内まりやにまた新たなタイアップが決まった。現在、まりやさんが曲を書いていて、上がり次第スタジオ入り。
・チャンスの前髪(TV Size)
竹内まりやニュー・シングル「チャンスの前髪」は先週7月5日(木)午後10時からTBS系ではじまったドラマ『肩ごしの恋人』の主題歌。サザンオールスターズの原由子とのコラボレーション。8月8日発売予定。カップリング曲は「人生の扉」。
今週はテレビ・サイズをオンエア。来週、フル・サイズをかける予定。
・JERRY RAGOVOY特集
今週、来週はソングライター「ジェリー・ラゴヴォイ」の特集。
ジェリー・ラゴヴォイはハンガリー系のユダヤ人で、1930年フィラデルフィア生まれ。現在77歳になるソングライター、プロデューサー。白人なんだけれど'60年代のソウル・ミュージックにものすごく深い功績を残している。フィラデルフィア出身でニューヨーク、フィラデルフィアで活動しているが、作る音楽は滅茶苦茶ディープなソウル・ミュージック。
クラシックを聴いて育ち、両親が音楽をやっていたのでピアノが弾けた。ハイスクールを卒業後の1948年、東フィラデルフィアの黒人街にあった電器屋に勤める。その当時、1940年代から1950年代は電器屋でレコード(78回転のSP盤)を売っていた。ここに数年間勤めて、店で売られている黒人のためのR&Bのヒット、ゴスペル、ブルースを聴いて十代の後半を過ごし、すっかり黒人音楽のファンとなった。ソウル・ステンアライズ、スワン・シルヴァー・トーンズ、チャールズ・ブラウン、エイモス・ミルヴァーン、ジョン・リー・フッカーといったブルースを自分でも作ってみようと考え、1953年に友人とフィラデルフィアに「グランド」というレーベルを立ち上げた。
・THIS SILVER RING
生まれてはじめて手掛けたのがキャステルズというドゥーワップのグループ。キャステルズのデビュー曲「MY GIRL AWAY IT'S ME」。これが10万枚くらい売れて、それが最初のヒットとなった。
キャステルズの曲はタツローさんも『ON THE STREET CORNER 3』で「HEAVENLY FATHER」という曲を取り上げている。
1954年の「THIS SILVER RING」が作曲者ジェリー・ラゴヴォイの名前が最初に出た曲。この曲を踏み台にしてフェビアンとかフランキー・アヴァロンといったロックンロール関係の白人アイドル・シンガーで売っていたレーベル「キャンセラ」の雑用に潜り込んだ。
・A WONDERFUL DREAM
その次に発見したグループが黒人の男4人、女1人のヴォーカル・グループのメイジャーズ。キャステルズは典型的なドゥーワップ、フィリーのR&B、スウィート・ソウルの草分けともいわれるサウンドだったが、ジェリー・ラゴヴォイはあまりドゥーワップが好きではなかった。メイジャーズはドゥーワップ末期の1962年頃のグループなので、ジェリー・ラゴヴォイは「ノーマン・ミード」というペンネームを考えた。そのペンネームで書いたのが「A WONDERFUL DREAM」で、1962年全米22位まで上がるスマッシュ・ヒットになった。75万枚のヒットだといわれているジェリー・ラゴヴォイの出世作。
ジェリー・ラゴヴォイという本名はいつかブロードウェイに進出する時まで取っておこうとしたという。
・CRY BABY
「A WONDERFUL DREAM」のヒットを足がかりにしてキャンセラ・レコードを辞めてニューヨークに出てくる。キャンセラ・レコードで知り合ったのが、1960年代を代表する、R&Bには欠くことのできない作曲家、プロデューサーのバート・バーンズ。代表作はビートルズでお馴染みの「TWIST & SHOUT」。ジェリー・ラゴヴォイはバート・バーンズとパートナーを組み、ニューヨークとフィラデルフィアを行ったり来たりしながら、いろいろな作品を作り続ける。その中で生まれた大ヒットが1963年、ガーネット・ミムズの「CRY BABY」で全米4位、R&Bチャートでは3週間続けて1位というミリオンセラーとなった。この曲は'50年代R&Bではなくて、もっと黒人文化に奥深く入っていった形で、ゴスペル・ミュージックの影響を深く受けた音楽作りのいちばん最初の作品。いわゆる「ソウル・ミュージック」といわれた最初の作品で、サム・クックと並んでこの時代のソウル・ミュージックの萌芽だといわれる有名な作品。
・TIME IS ON MY SIDE
「CRY BABY」がヒットしていた1963年の10月頃、ジェリー・ラゴヴォイの家に友人のジャズ・トロンボーン奏者のカイ・ワインディングから作曲を依頼する電話がかかってきた。それで書き上げたのが「TIME IS ON MY SIDE」。1963年にバーブからトロンボーンのインストで発売されたが、全くヒットしなかった。曲の一部"TIME IS ON MY SIDE"のところを歌っているのはシシー・ヒューストン(ホィットニー・ヒューストンの母)、ディオンヌ・ワーウィック、ディー・ディー・ワーウィックという親戚同士のコーラス・グループ「スウィート・インスピレーションズ」(ガーネット・ミムズの「CRY BABY」にも参加)。その1年後にニューオーリンズ出身のアーマ・トーマスという女性シンガーがシングルのB面に取り上げた。B面だったのでチャートには関係なかった。補作詞が黒人シンガーのジミー・ノーマン。アレンジはHBバーナム。それを引き継ぐ形でイギリスのローリング・ストーンズからこの曲をシングル・カットしたいというオファーがジェリー・ラゴヴォイのところに来た。このシングルが全米6位となり、ストーンズにとって初の全米ベストテン・ヒットとなった。ジェリー・ラゴヴォイ自身はストーンズのヴァージョンを聴いて「何なんだ、このクズは」と思ったらしいが、「それがアーマ・トーマス以上のヒットとなり本当に驚いた」とコメントしている。日本にもストーンズのヒットで知れ渡るところとなり、グループ・サウンズのタイガースの十八番となった。
・STAY WITH ME
「私はジョン・リー・フッカーと同じくらいプッチーニをよく知っている。アメリカのソウルというのはイタリア・オペラから蒸留されたものだ。私は、だから、そういう意味ではラヴェルとかラスマニノフといったドラマチックな音楽に惹かれるんだ」とジェリー・ラゴヴォイ。
そういうジェリー・ラゴヴォイのダイナミズムが発揮された作品が1966年のロレイン・エリソンという黒人シンガーによって歌われた「STAY WITH ME」。ロレイン・エリソンはフィラデルフィア出身で、ゴスペルの畑でエリソン・シンガーズというファミリー・グループでやっていたのを、ジェリー・ラゴヴォイがスカウトした。
「STAY WITH ME」はフランク・シナトラのレコーディング用に抑えられた70人編成のオーケストラが、フランク・シナトラが急にレコーディングがキャンセルとなり、その70人編成のオーケストラを、そのままいただいてレコーディングされた、という逸話が残っている。作曲はジェリー・ラゴヴォイとジョージ・ワイスの共作。ジョージ・ワイスは一世代前の作曲家で、ルイ・アームストロングの「WHAT A WONDERFUL WORLD」や、エルヴィス・プレスリーの「I CAN'T HELP FALLIN' LOVE」で有名。1966年の全米R&Bチャート11位、全米64位のスマッシュ・ヒットだが、今日ではソウル・ミュージックのスタンダードとして知られている。
・PIECE OF MY HEART
アーマ・フランクリンはアレサ・フランクリンの妹。「PIECE OF MY HEART」は1967年全米R&Bチャート10位、全米62位。この曲がソウル・ミュージックのスターダードとして知られているようになったのは1年後にビッグ・ブラザー & ホールディング・カンパニーのジャニス・ジョップリンがカヴァーしたから。1968年にシンガル・カット(邦題「心のかけら」)され全米12位、アルバム『CHEAP THRIL』は全米1位。
アーマ・フランクリンのプロデュースを手掛けていたのがジョン・サイモン。そのジョン・サイモンがビッグ・ブラザー & ホールディング・カンパニー、ジャニス・ジョップリンのプロデュースもしていたので、その関係でこの曲がジャニスのもとにながれついた。バート・バーンズとジェリー・ラガヴォイの共作。
・来週は「JERRY RAGOVOY(ジェリー・ラゴヴォイ)特集」Part.2
来週はこの続き。ジェリー・ラゴヴォイをこよなく愛して何曲も何曲もカヴァーをしてジェリー・ラゴヴォイの代弁者となって歌ってゆくジャニス・ジョップリンの作品。それに対してジェリー・ラゴヴォイの興味深い反応を届ける予定。
■リクエスト・お便りの宛て先:
〒102-8080 東京FM「山下達郎サンデー・ソングブック」係
■今後の予定
07月08日・15日は、
ソング・ライター「JERRY RAGOVOY(ジェリー・ラゴヴォイ)特集」
画像はJERRY RAGOVOY(左)とHOWARD TATE(右)。