2018年08月12日プレイリスト
「ドゥー・ワップ・ナゲッツ 特集」
ON THE STREET CORNER 3 / 山下達郎 (CD)
1. DEDICATED TO THE ONE I LOVE / 山下達郎 "ON THE STREET CORNER 3" '99
2. DESERIE / THE CHARTS '57
3. I'M SPINNING / KRIPP JOHNSON '57
4. AT TIME LIKE THIS / THE ORIGINALS '61
5. I WANNA CHANCE / THE VOWS '62
6. YOU CAN'T EVEN BE MY FRIEND / THE ESCORTS '63
7. PLEASE BE MY LOVE TONIGHT / THE CHARADES '64
8. C'EST LA VIE / THE WRENS '56
9. TO MAKE A LONG STORY SHORT / EDDIE & THE STARLITES '58
10. PUPPY LOVE / LITTLE JIMMY & THE TOPS '60
11. CAN I COME OVER TONIGHT / THE VELOURS '60
12. TRUE TRUE LOVE / THE CORVAIRS '62
13. CONNIE ISLAND BABY / THE EXCELLENTS '56
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■内容の一部を抜粋
・近況
番組は前倒しで収録しているそうだ。今週から怒涛の北海道ツアーに突入。14日(火)と15日(水)はニトリ文化ホール。閉鎖が決まってるので達郎さんにとっては最後のニトリ文化ホール。18日(土)は昨年に続いて二度目の苫小牧市民会館。
・ドゥー・ワップ・ナゲッツ 特集
先週8月8日にワーナーから「ドゥー・ワップ・ナゲッツ」VOL.1、VOL.2、VOL.3が発売された。達郎さんのライヴで開演前にかかってる、業界用語で「客入れBGM」と呼んでるBGMは38年間ずっとドゥー・ワップ。昔はカセットだったからありもののLPをかけていたそうだが、21世紀に入るぐらいから達郎さんの個人的なオリジナル・シングルのコレクションをデジタル・リマスタリングしてかけているとか。2008年にライヴを再開して10年が経ち、延べ250曲くらいかけてきたが、昔からCD化の要望があって、ドゥーワップはインディーがほとんどなので、権利のクリア、誰が権利を持ってるかわからないことが多くて、なかなか踏み出せなかったそうだ。この度、ワーナーの、達郎さんの友だちの宮治淳一さんが「客入れBGM」のCD-Rを聴いてハマってしまい許諾を取ることになったという。250曲くらいあった中で50数曲許諾が降りてCD化することになった。VOL.1、VOL.2は「客入れBGM」から、VOL.3は達郎さんの『ON THE STREET CORNER』に収録しているカヴァー・ソングのオリジナル・ヴァージョンの中から、全曲クリアできなかったので、クリアできたものを全部入れた全22曲。詳しくはワーナーの特設サイトにて。
https://wmg.jp/feature/nuggets/doo-wop
マスターライツがわからないので現在流通しているドゥー・ワップもののCDはほとんどがブート。マスターライツを調査しても法外なギャランティや、どういう訳かわからないが出さないという理由不明がたくさんあり、血と涙と汗の結晶が今回の50数曲になる。その中から厳選して『DOO WOP NUGGETS VOL.1』と『DOO WOP NUGGETS VOL.2』からピックアップ。
・DEDICATED TO THE ONE I LOVE
1999年の『ON THE STREET CORNER 3』に収録された「DEDICATED TO THE ONE I LOVE」。もともとはファイヴ・ロイヤルズの作品で、それをシュレルズがカヴァーして、さらにママス&パパスがカヴァー、それをまた達郎さんがカヴァーするという重層的な構造になっている。ファイヴ・ロイヤルズ、シュレルズ、ママス&パパスのアレンジのいいとこ取りをしたと達郎さん。
・DESERIE
ニューヨークの黒人ヴォーカル・グループ、ザ・チャーツの1957年の全米88位「DESERIE」。当時は黒人のR&Bがチャートに入ることすら珍しかったので88位でもヒットといえるとか。達郎さんの生涯のドゥー・ワップのベスト・ソングのひとつ。『DOO WOP NUGGETS VOL.1』のタイトル・ソング。
・ I'M SPINNING
歌っているのはクリップ・ジョンソン。デルヴァイキングスのリード・ヴォーカルで名義はクリップ・ジョンソンになってるが実質的にはデルヴァイキングスの1957年の「 I'M SPINNING」。
ドゥー・ワップにはふたつの側面があり、最初は1940年代終わりから1950年代にかけてのリズム&ブルース。ハーレムでのストリート・ミュージックから派生した。それが1960年代になって白人の子どもたちがそれを真似しだして、ホワイト・ドゥー・ワップという運動になった。そのふたつがあり、ひじょうに広範に渡っているのでドゥー・ワップの定義はロックと同じ感じでなかなか広いのだという。
・AT TIME LIKE THIS
ジ・オリジナルズは同名のグループがたくさんある。こちらのオリジナルズはニューヨークのグループで1961年の「AT TIME LIKE THIS」。
「ドゥー・アップ」という言葉は造語で、それは「ロックンロール」と同じ。だから「ドゥー・ワップ」と呼べばそれはドゥー・ワップになってしまう。むかしはプラターズをドゥー・ワップと言わずカタログに入れてもらえなかったが、今は立派なドゥー・ワップ・ミュージックとして知られている。それが世の中の趨勢というもの。
・I WANNA CHANCE
これまでかけてきたのはイースト・コーストのドゥー・ワップ・グループだったが、ザ・バウズはウエスト・コースト、もしくは中西部だと考えられる。1962年の達郎さんの大好きな作品で「I WANNA CHANCE」。
今回のDOO WOP NUGGETSは鈴木啓志(すずきひろし)さんが入魂のライナー・ノーツを書いている。
・YOU CAN'T EVEN BE MY FRIEND
エスコーツは達郎さん世代だとニュー・ジャージーのR&Bグループとして知られているが、今回のDOO WOP NUGGETSに収録されているのは同名異グループ。1963年の「YOU CAN'T EVEN BE MY FRIEND」。達郎さんは白人だと思っていたそうだが、鈴木啓志さんのライナーによると黒人の可能性もあるとか。'60年代初期のホワイト・ドゥー・ワップのにおいがする、その筋では人気の高い曲。プロデュースド・バイ・アル・シュミット、アレンジはジャック・ニッチェ。
・PLEASE BE MY LOVE TONIGHT
シャレーズも同名のグループがたくさんあるけれどウエスト・コーストのグループ。1964年の素晴らしい一作「PLEASE BE MY LOVE TONIGHT」。1964年だとドゥー・ワップも下火になっていたが最後の輝き。
ここまですべて『DOO WOP NUGGETS VOL.1』からの選曲。後半は『DOO WOP NUGGETS VOL.2』から。
・今後の予定
北海道ツアーが長くて東京に帰ってこられないので、毎年8月最後の二週間にやっているプログラム「納涼夫婦放談」は9月に順延。録音の関係なのだそうだ。来週は北海道で番組を収録することになっており、「旅」に関する歌の棚つか、「『旅』で棚からひとつかみ」の予定。
・C'EST LA VIE
後半は『DOO WOP NUGGETS VOL.2』から。レンズはニューヨークのドゥー・ワップ・グループ。'50年代中期のひじょうにうまいグループ。1956年の「C'EST LA VIE」。
'50年代中期のドゥー・ワップをもっと入れたかったが許諾が取れなかったという。
・TO MAKE A LONG STORY SHORT
エディ&ザ・スターライツの1958年の「TO MAKE A LONG STORY SHORT」。彼らもイースト・コーストのグループ。
・PUPPY LOVE
次はキッズ・グループ。リトル・ジミー&ザ・トップスを達郎さんはフィラデルフィアのグループだと思っていたそうだが、鈴木啓志さんのライナー・ノーツによるとニューヨークのグループで、フィラデルフィアからリリースされてるとのこと。1960年の「PUPPY LOVE」。作曲はロニー・マック。
・CAN I COME OVER TONIGHT
ザ・ベロアーズもニューヨークのグループ。ベースの人が達郎さんの好み。1960年、全米83位の「CAN I COME OVER TONIGHT」。後にファンタスティックスと名前を変えて1972年にヒットが出るとか。
・TRUE TRUE LOVE
やはりベースがいい曲。今度はアップ・テンポ。ザ・コルベアーズの1962年の「TRUE TRUE LOVE」。
曲をかけ終えて。「マーセルズの影響がありますかね」と達郎さん。
・メジャー・コード
中2のリスナーから「どうして達郎さんの歌のギターのコードはメジャーが多いのですか? 教えてください」という質問。
「どうしてメジャーが多いのか(笑)。哀しいコード嫌いなんです。(ギターを鳴らして)こういうの駄目なんです。(再びギターでコードを弾いて)こうですね。ドゥー・ワップというのは循環コードと言いまして(ギターで循環コードを弾く)こういうのですね。これで明日の朝までやっててもずっと続くのを循環コードっていうんですがね。これをじぶんの曲だともっとモダンに。今はモダンなんて言いませんけど、もっとおしゃれに。(ギターでまた循環コードを弾く)こんなような感じですね。こうすると明るいな、楽しいな、幸せだなとそういうふうになりますので。死んでも(哀しげな循環コードを弾く)こういうのは絶対使いません。おわかりいただけましたでしょうか」と達郎さん。
他にも入れたい曲があったけれど許諾が取れなかったり、なしのつぶてだったり、法外なギャランティ、その他で割愛したという。仮に許諾が取れたとしても当時の音源が残ってないので、結局は板起こし、アナログから起こした音を送ってくるのが関の山。だったら達郎さんが所有しているオリジナル・シングルからデジタル・プロセッシングしたほうが音がいいのだという。
・CONNIE ISLAND BABY
ザ・エクセレンツはブロンクスのホワイト・ドゥー・ワップ・グループ。「CONNIE ISLAND BABY」は1962年の全米51位で、今回のDOO WOP NUGGETSの収録曲の中ではいちばんチャート・アクションがいい。
■リクエスト・お便りの宛て先:
〒102-8080 東京FM
「山下達郎サンデー・ソングブック」係
2018年08月19日は、「『旅』で棚からひとつかみ」
http://www.tatsuro.co.jp