Life in America ~JAPAN編

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『Wings of Defeat』

2008-04-18 04:25:27 | movie
古来から日本人は、この国は神によって守られていると信じてきた。それを証明するかのように、異国との戦のたびに敵を蹴散らす勝利の風が日本を救ってきた。そしてそれは「神風」と呼ばれ、人々はこの“決して沈むことのない国”を謳歌してきた。
しかし、その神風が再び吹くことはなかった。

先週の日曜日、世界各国の優れたインディペンデント映画を30年にわたって上映している、シカゴ・アート・インスティチュート付属の映画館シスケルに、本日1回限りの上映という映画『Wings of Defeat』を見に行った。
この映画のタイトルを直訳すると、「敗北の風」。
第2次大戦中の神風特攻隊をテーマにしたドキュメンタリーで、カナダで行われた北米最大のドキュメンタリー映画祭で高評を博し、日本でも2007年に『TOKKO 特攻』で2007年に上映された映画だ。
ディレクターはNYで生まれ育った日系2世のリサ・モリモト。
実の叔父があの“神風特攻隊”の生き残りであったことことを彼の死後知った彼女は、そのことに強い衝撃を受ける。
アメリカでは「カミカゼ」は狂信的なテロリストと捉えられることが多い。叔父は本当に自滅的なテロリストだったのか?なぜカミカゼパイロットたちは若い命散らさねばならなかったのか、なぜ彼らは特攻隊を志願したのか、そしてそしてそのとき彼らはいったいどんな思いだったのか・・・彼女は謎を明らかにするため日本に向かう。

少なくとも、日本に生まれ今までいろいろな映像を見る機会があった私とは違い、アメリカ人にとってあの特攻の生の映像はさぞショックだっただろう。煙を吐きながらも一直線に体当たりを試みるボロボロの飛行機。その閃光の中でいったい何人の人が命を失い、何人の家族が泣いたのだろう、と胸が締め付けられる。隣りに座っていたアメリカ人女性は、ショックのあまり声をあげ時おり目を覆っていた。
一方で、神風の攻撃から生き延びたアメリカ戦艦の乗組員たちの証言や当時の映像などは私にとって初めて見るものだった。文字通り生死の境を体験した彼らは、しかし、とても穏やかな表情をしているのに驚いた。

生き残りのパイロットたちへのインタビューの中で、はっとする証言があった。
「特攻隊はいわば、日本はもはやこれまでですよ、と(天皇に)暗に終戦を促すための“最後通牒”だった。しかし、何百もの特攻隊が命を散らした後、天皇から届いたのは“君たちはよくやっている”というねぎらいの言葉だけだった」
特攻に飛び立ったものの、標的に到着するまでに敵機に遭遇、激しく戦闘を強いられ弾も使い果たしたあとまったくやる気をなくしてしまい「もうやめよう。帰ろう」と引き返したこと。「そのとき目の前に広がった夕日の美しさは忘れられない」
「あんなに多くの犠牲を払ったのに、終戦後神風で死んだ人たちには何の言葉もなかった。いったい彼らの命は何だったのだ」

これらに「はっとした」自分にもはっとする。
はっとする、ということは「そんなこと言って大丈夫か」というセンサーが自動的に働いたからだろう。
「やばいよ」「家族が嫌がらせを受けるかも」・・・・
このセンサーこそが、諸悪の根源なのに。日本人の持つ、いや正確には教育や体験で見につけてしまったいやらしい“地雷魂”が、いまだに映画ひとつまともに上映できない社会を許しているというのに。

そういう意味では、この映画は“日本人的遠慮がなく踏み込んだ”ドキュメンタリーともいえる。
「それはなぜですか?」「特攻はいいイメージ?それとも悪いイメージ?」「そのときどんな気持ちだった?」
日本人ならば多分聞けないような、ときには屈託なくさえ感じる質問を、監督は遠慮なく聞いていく。本当に理解したいならば、とことん聞いてみる。答えなければ別の聞き方をしてみる。こうして渾身の思いをこめて作られた映画であることは素直に評価したい。
そして、この映画は日本の学校教育、それも小学校で使って欲しいと思う。
戦争の無意味さ、どんな状況にあっても本当のことを知る、知ろうとすることの大切さ、命の尊さ・・ここには、すべてが含まれている。



WINGS OF DEFEAT

2007, Risa Morimoto, USA, 90 min.

A story never before revealed because the survivors kept their secret out of shame, WINGS OF DEFEAT investigates the motives and feelings of Japanese kamikaze pilots, the notorious suicide bombers of WWII, through interviews and personal histories. Director Morimoto traces the story of her own uncle to expose the grim reality of fear and resignation experienced by these men, many barely older than boys when forced to volunteer for death. DigiBeta video. (BS)

* 日本タイトル『TOKKO 特攻』
http://www.edgewoodpictures.com/wingsofdefeat/
(DVDも発売中)

独断と偏見で見るアメリカン・アイドル

2008-04-18 03:14:13 | music/festival
いよいよ面白くなってきた『American Idol』。
今週は“マライアweek”、そしてベスト7が選ばれた。
昨シーズンは出場者にまったくと言っていいほど華がなく、途中で見るのもいやになっていたけれど、今シーズンは実に楽しい。
ロック野郎、ブルース野郎、ヘビメタ女、レゲエ男、ブラック・コンテンポラリーにカントリーと、皆が違った個性を持ち、何を歌わせてもそれなりに聞かせてくれるからだ。
実は、先週(Top8を決めるweek)、個人的に応援していた人物がvote offされちゃたので(日本でも放映されているのでネタばれにならないように固有名詞は伏せときます)少しモラルダウンしだけれど、この人の今後のキャリアを考えるとこのあたりが一番言い去り際だったのかもしれない。

さて。今期注目のパフォーマーについて。

ロック野郎、David Cookはいつもチャレンジブルなアレンジで楽しませてくれる。特にTop10weekで見せたマイケルジャクソンの『ビリー・ジーン』は鳥肌だった。
金髪の美女、Brooke Whiteは、他の人たちと比べれば歌唱力は劣るのだが、キラリと個性的な何かを持っていて、そのハスキーボイスを生かした選曲が冴えまくる。『Love is a Battlefield."』は忘れられないパフォーマンスだった。
はじめはなんじゃこりゃ?と思った17歳のあどけないDavid Archuleta 。彼の一生懸命歌う姿は初々しく、しかしときどきドキリとするほど声に色気がある。歌唱力ではピカ一だろう。週を追うごとに安定してきているので、意外とダークホースになるかもしれない。
レゲエ男、Jason Castro。この人はまさに存在そのものだけで持ち堪えているかんじ。しかし、ここ2週ほどは歌でも勝負してきた。マライアの『I Don't Wanna Cry』は、しみじみよかった。

あとの人たちは、ま、どーでもいい感じ。

個人的な一オシはロック野郎のDavid Cook。
久々に出てきたロックンローラーという感じ。しかも何を歌わせても自分の色をちゃんとつけてくる。そしてなにより、謙虚。審査員や観客にリスペクトしているのがよくわかる。
対照的に、最近いい気になっている(と思われる)のがBrooke White。
最初は謙虚でいい人そうだったのに、最近は平気で審査員に口答えしてくる。甘えたような目線もいやらしい。自信がでてきたのはいいけれど、自分に意見してくれる人に口答えしたそばから大嫌いになってしまう。いかにも日本人な私・・?




Top24 weekに放映されたチャリティー版で、大好きなAnnie Lennox(ユーリーズミックス)が登場。
魂の歌声に涙が出た。

この週は他にもグロリア・エスティファン、シーラ・E、Heartなど、個人的に大好きな女性ミュージシャンたちが出て狂喜乱舞。(オオトリはマライアだった)