一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

『蒼氓』こぼれ話

2015-05-17 14:27:32 | Weblog


    『蒼氓』は第一回芥川賞受賞だった
    ことは前回書いたが、
    ちなみに同じく候補に挙がっていた
    のは高見順、太宰治、島木健作らで
    ある。いかにも昭和を代表する作家
    といえる。

    石川達三が実際にに移民船に乗って
    ブラジルに渡ったのは24歳のとき。

    彼は若気の至りから家族移民ならぬ、
    単独移民として950名の移民団の
    一人として乗り込んだ。
    目にしたのは厳しくも悲しい現実
    であった。

    そして、こういっている。
    「これまでこれほど巨大な現実を
    目にしたことはなかった。
    この衝撃を私は書かなければなら
    ないと思った」


    まだ作風も決まってな石川であった
    が、この小説で社会派作家の地位
    を確立した。
    それ以降も現実問題を題材にした
    社会批判の鋭い作品を書き残して
    いる。

    『蒼氓』には、
    家族単位の移民が多いなかで、
    徴兵逃れで移民を決意した弟の孫市
    につきそって渡伯する佐藤夏という
    女性も登場する。
    夏もまた、恋人と別れての決意で
    あった。

    ちなみに「蒼氓」とは
    「富も名誉もない無名の民」
    という意味である。


    ※写真は同じく桟橋に停泊していた
     「ぱしふぃっく びいなす号」
     (大阪の客船)
     にっぽん丸の甲板から撮影