一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

『蒼氓』

2015-05-16 14:48:27 | 読書


     ブラジル移民で思い出すのは石川
     達三の『蒼氓』(そうぼう)である。

 
     実際にブラジル移民に同行して書い
     た小説である。

     
     昭和5年、話は神戸の「移民収容所」
     からはじまる。

     そこでの体格検査でパスできなかった
     者、国費で渡航できると無一文でやっ
     てきた無頼派、ひそかに乗船する密航
     の少年、船旅の途中、子供を病気で
     亡くした家族、蚕棚のような船室の
     ベッド……。


     この小説は第一回芥川賞にかがやいた
     のだが、石川はこのように語っている。


     「ほとんどの者が希望をもっていた。
     それは貧乏と苦闘とに疲れたあとの
     捨てバチな色をおびていた。
     それだけに向こうみずな希望であった」

     
     そうだ、捨てバチであろうと何だろう
     と、みんな希望を抱いて大陸に渡った
     のだ。
     しかし、国策で行われた移民にもかか
     わらず、行って見れば密林で、とても
     作物など作れる状態ではない話など、
     ごまんとあった。

     それを切り拓き、石ころを拾いあげ、
     耕した苦闘は、いろんなところで書か
     れている通りである。

     行くも地獄(日本に)残るのも地獄
     のなか、人間の極限状態が描かれて
     いる。

     
     ※ 時代は変わり、豪華客船で世界
      一周をしたり、もちろん南米にも
      行く。
      写真はにっぽん丸の図書室