一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

小さな幸せ、重い内容

2013-05-26 14:05:12 | 人生



     一週間ほど前に見た新聞の投稿がずっと重く胸に
     のしかかっている。(毎日新聞2013,5,20)

     それは「父」という題で、こう始まる。
     「父がまた海外旅行に行ったらしい」
     要約すると、以下のように。

     「離婚して家を出てから、父はよく海外旅行に行くよ
      うになった。
      父に付き添っているのが、再婚相手であることを
      (自分は)知っている。
      それが福島から避難してきた女性であることも」

     この「福島から避難してきた」というところに引っか
     かって、私はもう一度読みなおした。
     それから次に目を走らせた。

    
     「父は小さな診療所で多くの人を助ける仕事をしてい
      て、自慢の父であった。
      小さい頃、のどに魚の骨を詰まらせ泣いたときも
      助けてくれた。
      また、いろいろな所に連れていってくれたり、たく
      さんのことを教えてくれた」

     診療所ということはお医者さん?
     やさしいお父さんだったのだろうな。
     さらに続く。

     「そんな美しい記憶も、父が愛人をつくり家を出ていっ
      たところで途切れてしまった。
      父はいま、海外にいって日本にいては見えないものを
      たくさん見ているのだろう。
      きっとそれは素晴らしいにちがいない」

     このくだりを私は、目を凝らして読んだ。
     そして最後にこう結んでいる。

     「父は、もっと小さいけど大切なものを見ていないよう
      な気がする。
      せめて(自分は)小さいけど大事なものを見つめなが
      ら生きていきたい」

     投稿者は「匿名希望 21歳」とあった。

     う~ん。多分この方は、とても素直で感受性のつよい、
     いいお嬢さんなのだろう。
     父が母以外に好きな女性ができて家を出たことも許せ
     ないし、新しい彼女と再婚したことでさらに深く傷つ
     いたのだろう。
 
     そして、父は遠くの大きな幸福をつかんだが、足元の
     小さな幸せを踏みにじったのではないか。
     そう告発しているようにも聞こえる。

     もしも身近にこういうケースがあったとしても、現在
     の私にアドヴァイスする力はない。
     だが、この父なる男性の立場に立ってみると、これを
     是とする自分がいることにも気づく。

     21歳の娘さんを持つ父親なら、おそらく50歳前後、
     または半ばであろう。
     この年齢になると、自分の行く末、来し方を考えるも
     のだ。
     まして、3・11の震災のこともあった。

     だからといって、何をしてもいいというわけではない。
     子を持つ親なら、いくら好きな人ができたからといって
     子供を傷つけていいということはないはずだ。
     身うちだったら、私もそういってカンカンに怒るに決ま
     っている!

     だが一方で、とうてい信じられない理不尽がときどき
     起こるのが大人であり、
     そもそも、社会全般が不合理なこと、不条理に満ちて
     いるのも現実なのだという思いもある。

     せめて出来ることは、
     このお嬢さんがこの苦悩を乗り越えて、いつかお父さん
     の年齢になったときに、いくらか父親の気持ちも分かる
     なあ、ぐらいの大人になってほしいと祈るばかりです。
     ゆめゆめ、
     潔癖感のあまり、堅い鎧(よろい)を身につけないこと
     を。

     いやいや、このお嬢さんは投稿をした時点ですでに一歩
     踏み出していることでしょう。
     結局は自分で乗り越えなければならないのですから。

     ※ 写真はスーパーの店頭で230円で買ったラッキー
       クローバー。どんどん増える。
      (私にとっての小さな幸せ)