鳥取県立博物館 2018年10月6日~11月11日
鳥取ってなぜか(もしかしたら必然的な理由もあるのかもだけど)江戸時代に結構エッジのきいた絵師が出ている。そして鳥取県立博物館はその顕彰をしてて偉い(作品も集めてて偉い)。20年前にも稲嶺の展覧会はあって、作品を見て面白かったのは覚えてるけど、図録が物足りなかったが、今回は山下論文、資料などとても充実している。土方稲嶺という人は宋紫石経由の南蘋風をマニエリスム化して、南蘋派によくある地塗りして、できる塗り残しを描写に生かす手法もわざとらしく白い輪郭とってる感じ。動物が人間臭い表情になるのもマニエリスムなのかな?同じく宋紫石系の岡本秋暉の鳥が人間臭く眼付悪いのを思い出した。墨の上に群青を置くのも稲嶺の場合は必然性があんまり感じられない。さらに円山応挙とか長沢芦雪とかいろいろ付け加わってる。唐画の範疇ではあるけど南画ぽいのもやってて結果的に岡本豊彦ぽくもなってるし、水墨画は曾我蕭白を漂白して乾燥機にかけたような画風のときもある。鯉の立体的に見せるポーズは応挙由来かと思うが、稲嶺のうろこの描き方はそんなに応挙風でないのに、弟子になると結構応挙風になったりるするのも面白い。押絵貼屏風の花鳥山水の組み合わせ方は直接には善光寺大勧進にあるような宋紫石なんだろうけど、森蘭斎とも比べられるよね。そして紫石と応挙といえば蠣崎波響とも比べてみたい。作品は割といいものがそれなりの数あるんだけど圧倒的な代表作がなく、実物を見ればおおと思うけど画像で見てもそんなにしびれない、現代では売り出しにくい人なんだけど、現代で売り出しにくい人がその価値を当時は認められてたってことで、現代で売り出しやすい人ばかり大事にしてるのもよくない気がする。徳川治宝って南蘋風味好きだったと思ってるんだけど、稲嶺も治宝人脈なのね。