蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

枯葉の中の青い炎

2007年05月06日 | 本の感想
枯葉の中の青い炎(辻原登 新潮社)

実は、辻原さんの小説を読むのはこれが初めて。良い評判はしばしば聞くものの、なぜか今まで縁がありませんでした。

短編集ですが、いずれも現実的な部分とおとぎ話的な部分が融合されて、(設定自体はかなり無理があるのにもかかわらず)読んでいるうち作者の作った世界へ気持ちよく連れて行ってくれます。

表題作は、スタルヒンが300勝をあげた試合そしてその後の彼の死をある秘密で結びつけた話。秘密の部分がおとぎ話にあたります。このおとぎ話だけをみれば「ありえね~」的なものなのですが、著者の筆力で「そうであっても良かったかも」と思わせてくれます。

同じく野球選手を描いた「野球王」、不思議な金魚の来歴を描いた「ザーサイの甕」が面白くて「ちょっと歪んだわたしのブローチ」は恋愛小説のはずが最後に一転する構成が良かったです。
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ブロークン・フラワーズ

2007年05月04日 | 映画の感想
かってはモテ男で、数多くの女性とつきあっていた主人公は、ビジネスでも成功するが、今はひとり身でさびしく暮らしている。
ある日、差出人不明の手紙が来る。その手紙は主人公に息子がいたことを示唆したものだった。主人公は、息子をさがすため、かつてつきあっていた女性のもとを訪ねまわる。

主人公は、感情をほとんど表にださず無表情。ストーリーはヤマもオチもなく意味もあまりなく(なつかしい、ヤオイというやつですな)たんたんと進む。

そこはかとなく醸し出される孤独と寂寥感みたいなものを感じ取るべきなのかもしれませんが、正直言って退屈でした。
主人公の隣家に住む世話焼きの男がいい感じだった。(この人、「シリアナ」にもでていて、最近他でも時々みかけるだけど、名前を知らないんですよね・・)
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陽気なギャングの日常と襲撃

2007年05月02日 | 本の感想
陽気なギャングの日常と襲撃(伊坂 幸太郎 祥伝社)

「陽気なギャングが地球を回す」の続編。あと書きによると月刊誌に掲載した短編4つに後半部分を付け足したもので、短編で張られた伏線が後半で展開されている。

伊坂さんの特徴である、一見何の関係もなさそうな話が、だんだん繋がりが見えてきて、収束していくような構成に、本書もなってはいるのだが、いつもの「キレ」みたいなのが感じられない。

ギャングの一人(普段は市役所の係長)である成瀬が役所の部下にいう「俺の仕事はせいぜい、責任をとることぐらいなんだ」というセリフがかっこいい。怒りながらでもなく、皮肉っぽくもなく、こういうことをいってみたいが・・・現実にはむずかしい。
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