蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

生え抜き

2005年11月03日 | 野球
何年か前にロッテが18連敗してプロ野球記録を作った時、連敗ストップまであと一歩というところで打ち込まれて敗れた黒木投手が泣き崩れてしまった姿が印象的でした。
その頃、私はロッテの二軍の練習グラウンドである浦和球場の近くに引っ越したので、肩の故障に苦しんで浦和球場の外野のネット裏でランニングばかりしている黒木投手の姿もよく見かけました。

こうして幼稚園の頃からの巨人ファンだった私は、パリーグではロッテの試合結果が気になるようなってきました。

一方で、原監督がやめさせられてから、急速に巨人への熱は冷めていきました。その大きな原因は、先発メンバーのほとんどがトレードやFAで獲得した選手で占められてきたことだと思います。
ドラゴンクエスト型のRPGが楽しいのは、自分が育て上げた(ように感じる)キャラクタが難敵をついには打ち破る瞬間にあるわけで、長年のファンとしては、巨人で育ったいわゆる生え抜きの選手がほとんどいないのでは、どれだけ勝っても快感が得られにくいのです。
原監督はそれでも二軍にくすぶっていた生え抜き選手を起用することがありましたし、傍で見ていて赤面するほど「ジャイアンツ愛」を強調してファンを何とか引きとめようとしていたと思います。しかし、監督が変わってからはそういったこともほとんどなくなってしまいました。
もっともあれだけ高給の選手が集められては使わないわけにはいかない気持ちもわかります。
そもそもFAで選手を出す方も、投手は人手不足だけれど野手ならまあ代わりはいる、と思っていて、あまり熱心に引きとめようとはしない(むしろ給料が高すぎて出て行ってほしい)のではないでしょうか。結果、巨人は野手は腐るほどいるけれど、投手陣は脆弱というチームになってしまったように思います。(この点、尾花コーチを取れたのは、数年先を見通せば最高の補強かもしれません)

その点、資金力に劣るロッテのメンバーはほぼ100%生え抜き。首都圏なのに地元スポーツチームが不足気味の千葉県に本拠地があり、ファンの忠誠心や愛情を育むには最高の環境かもしれません。
浦和球場で練習する二軍も今年は優勝しました。浦和球場は観覧用の席とかスペースはほとんどなく、二軍戦を見に行っても長居はしにくい状況です。入場料をとっているわけではないので文句はいえませんが、けっこう応援しにくる人も大勢いるので、もうすこし拡張してもらえないかなあといつも思っています。
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容疑者Xの献身 4.5/5

2005年11月02日 | 本の感想
東野圭吾さんが書いた「容疑者の献身」(文芸春秋)を読みおわりました。

離婚後も付きまとう元夫を殺してしまった妻とその娘を、隣室に住む数学教師が警察の手から逃れさせようと周到な計画を練り、刑事を翻弄するが・・・といったミステリ。犯行側の視点と刑事・探偵役側の視点から交互に描かれますが、倒述ものではなく、トリックは最後まで明かされません。

生徒に出題する試験問題に、「幾何の問題にみせかけて実は関数の問題」といった一ひねりを加えている、と数学教師が言っていたことが、探偵役の助教授がトリックに気づくきっかけとなるのですが、この小説のトリックは「幾何の問題にみせかけて実は関数の問題、と思いきや幾何の問題でもあった」という実に見事なもので(これだけでは未読の方はちんぷんかんぷんでしょうが、読んでいただければご理解いただけるかと・・・)、ここ数年来読んだミステリのトリックでは、最高のものでした。

ある学者が著作の中で「数学の問題を解くコツは与えられたすべての条件を使うこと。数学の問題に無駄な条件は存在しない」という旨を述べていましたが、この小説は、最初から最後まで実に計算しつくされていて、無駄な伏線や横道にそれることがほとんどない、この学者がいうところの数学の問題のような構成になっています。
例えば、冒頭に河川敷に暮らすホームレスの描写が長く続きますが、主人公の数学教師の観察力を強調するくだりかと思いきや、これが重大な伏線になっていたりします。
ただ、贅沢を言えば、数学教師がなぜここまで献身的になれたのか、つまり動機部分がやや納得性が低かったかなあ、と思いました。
そうはいっても私が今年読んだミステリの中では最高の出来。ハードカバーを買うだけの価値は十分あると思います。
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