東野圭吾さんが書いた「容疑者の献身」(文芸春秋)を読みおわりました。
離婚後も付きまとう元夫を殺してしまった妻とその娘を、隣室に住む数学教師が警察の手から逃れさせようと周到な計画を練り、刑事を翻弄するが・・・といったミステリ。犯行側の視点と刑事・探偵役側の視点から交互に描かれますが、倒述ものではなく、トリックは最後まで明かされません。
生徒に出題する試験問題に、「幾何の問題にみせかけて実は関数の問題」といった一ひねりを加えている、と数学教師が言っていたことが、探偵役の助教授がトリックに気づくきっかけとなるのですが、この小説のトリックは「幾何の問題にみせかけて実は関数の問題、と思いきや幾何の問題でもあった」という実に見事なもので(これだけでは未読の方はちんぷんかんぷんでしょうが、読んでいただければご理解いただけるかと・・・)、ここ数年来読んだミステリのトリックでは、最高のものでした。
ある学者が著作の中で「数学の問題を解くコツは与えられたすべての条件を使うこと。数学の問題に無駄な条件は存在しない」という旨を述べていましたが、この小説は、最初から最後まで実に計算しつくされていて、無駄な伏線や横道にそれることがほとんどない、この学者がいうところの数学の問題のような構成になっています。
例えば、冒頭に河川敷に暮らすホームレスの描写が長く続きますが、主人公の数学教師の観察力を強調するくだりかと思いきや、これが重大な伏線になっていたりします。
ただ、贅沢を言えば、数学教師がなぜここまで献身的になれたのか、つまり動機部分がやや納得性が低かったかなあ、と思いました。
そうはいっても私が今年読んだミステリの中では最高の出来。ハードカバーを買うだけの価値は十分あると思います。
離婚後も付きまとう元夫を殺してしまった妻とその娘を、隣室に住む数学教師が警察の手から逃れさせようと周到な計画を練り、刑事を翻弄するが・・・といったミステリ。犯行側の視点と刑事・探偵役側の視点から交互に描かれますが、倒述ものではなく、トリックは最後まで明かされません。
生徒に出題する試験問題に、「幾何の問題にみせかけて実は関数の問題」といった一ひねりを加えている、と数学教師が言っていたことが、探偵役の助教授がトリックに気づくきっかけとなるのですが、この小説のトリックは「幾何の問題にみせかけて実は関数の問題、と思いきや幾何の問題でもあった」という実に見事なもので(これだけでは未読の方はちんぷんかんぷんでしょうが、読んでいただければご理解いただけるかと・・・)、ここ数年来読んだミステリのトリックでは、最高のものでした。
ある学者が著作の中で「数学の問題を解くコツは与えられたすべての条件を使うこと。数学の問題に無駄な条件は存在しない」という旨を述べていましたが、この小説は、最初から最後まで実に計算しつくされていて、無駄な伏線や横道にそれることがほとんどない、この学者がいうところの数学の問題のような構成になっています。
例えば、冒頭に河川敷に暮らすホームレスの描写が長く続きますが、主人公の数学教師の観察力を強調するくだりかと思いきや、これが重大な伏線になっていたりします。
ただ、贅沢を言えば、数学教師がなぜここまで献身的になれたのか、つまり動機部分がやや納得性が低かったかなあ、と思いました。
そうはいっても私が今年読んだミステリの中では最高の出来。ハードカバーを買うだけの価値は十分あると思います。