蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

沈黙/アビシニアン 

2008年11月09日 | 本の感想
沈黙/アビシニアン (古川日出男 角川文庫)

二つの小説を合本にしたもの。二つの小説に多少の連関はあるが、基本的には独立した小説。

「ルコ」という、カリブ海の島発祥の音楽がヨーロッパ、中国を経て日本の大瀧家の地下に眠るレコードコレクションに納められている。
大瀧家の遠縁の主人公は、大瀧家に下宿することになって、このコレクションに添えられたメモを読んで「ルコ」の来歴をたどる。
というのが、「沈黙」の粗筋だが、ストーリーはあってなきが如しで、意地悪い言い方をすると著者のイメージを思いつくまま書きなぐったような小説。

なので、著者のイマジネーションに同調できる部分(私の場合だと、冒頭の「獰猛な舌」の章と、「ルコ」がカリブ海の島で生まれるあたり)は、面白く読めるが、そうでない部分は(やたらと長いこともあって)なかなかついていけない。

ただ、この小説は世間の評判は概ね上々のようなので、多くの人が著者に共感できているはずで、私の理解力が不足しているのだろう。

「アビシニアン」は、公園で猫とホームレス生活をしていた少女と、その少女を拾ったレストランオーナーの女性、そのレストランの常連の大学生の話。こちらも、筋らしい筋はないし、内容に共感できる部分は(「沈黙」とはちがって)ほとんどない。
迷宮的な構成を、もう少しどうにかしてもらわないと、正直言って読み進むのがしんどい。

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