蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

勝負心

2014年08月18日 | 本の感想
勝負心(渡辺明 文春新書)

今では珍しくないのかもしれないが、渡辺さんはかなり以前からネット上で日記を公開していて(今はブログ)、かつては若さのせいか、あるいはタイトルを持っていなかった気楽さ?からか、将棋に関してもそれなりに刺激的なコメントが見られることもあり、良く読んでいた。最近のものはさすがに無難な内容ばかりなのだが、本人に代わって?奥様のブログが大変に面白く、こちらも欠かさず読んでいる。
このため、渡辺さんは、一番親しみがわく棋士である。

本書においては、羽生さんに対しては限りないリスペクトが感じられる。「万能だからこそ特徴がない」とか「生きる教材」とか。
一方、その他のライバル(佐藤、森内、郷田、丸山といった棋士たち)については、(あくまで個人的感想ですが)ちょっと見下ろしているような気分を感じさせる。
彼らについて紹介しているエピソード(草履の履き間違い、とか、竜王戦のさなかに競馬の結果が気になってしょうがなかった、とか、早々に勝ってしまったので(棋戦の途中で出るはずの)おやつを食べそこね自室で食べた、とか)も、どこか相手を小バカにしているように思えてしまい、「渡辺さん、そんなこと書いて大丈夫ですか?」と心配になった。

将棋の勝ち負けはすべて実力で、運とかツキとか調子とかは関係ない、と言い切るのもすごい。たいてい、実力が大半だが最後には人智のおよばぬ力が・・・なんて(謙遜も込めて)書くものではないかと思うが。
よほど、自分に自信がないとこうは書けないよなあ。

いずれにしても、こうした、アクの強さというか、圭角みたいなものが、ストロングスタイルの羽生さんに対して、ヒールっぽい役回りを振られてしまう原因のような気がする。ま、ファンとしては、そういう所もまたいいもんなんですが。

奥さんやお子さんに関するコメントがほとんどないのは残念。
(読んだのは2013年12月)


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