蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

めざせ!ムショラン三ツ星

2024年09月07日 | 本の感想
めざせ!ムショラン三ツ星(黒柳桂子 朝日新聞出版)

岡崎の刑務所で栄養士として現役で働く著者の仕事を描く。

栄養士といっても、献立を考えるだけではなく調理指導も業務で、作るのは受刑者だから、いくら監視する刑務官がいるといっても、著者も初めはびびったらしい。ただ、炊場(調理室のこと)で働くのは模範囚に限られるそうだ(刃物を扱うため)。

刑務所で大切なのは平等だという。数物と呼ばれ、個数を一目瞭然に数えられる献立では各人の個数が同じになるように非常に気をつかうそうだ。

刑務所のように、日常の楽しみがない世界ではメンバーの興味はとにかく食事に絞られて、特に刑務所では原則として嗜好品は許されないので、たまに出される甘いもの(ぜんざいとか。ドーナツもあるらしい)にとにかく人気があるらしい。

また、インスタント食品も普通は出ないそうで、著者が年末にカップうどん(そばはアレルギーの可能性があるのでダメ)を、調理法を工夫してのびないように出したときはたいそう喜ばれたという。

岡崎は男性を収容しているので炊場に配属されても調理は素人、という人ばかりなのだが、なかには作業に習熟して調理師免許を取るケースもあるのだとか。

田中角栄が拘置された時、規則正しい生活と食事で糖尿病の症状が良化した、と聞いたことがあるが、本書でも収監後に20キロ減量できた例が出てくる。私は軍隊や刑務所、あるいは修道院みたいなところで24時間管理されて規則正しく生活することに妙な憧れがある。本書を読んでみたのもそのせいなのだが、本書を読んで3日くらいなら刑務所生活もいいかも・・・とあらためて思ってしまった。

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