蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

江口寿史の正直日記

2019年09月23日 | 本の感想
江口寿史の正直日記(江口寿史 河出文庫)

とある高名な音楽家は、締め切りギリギリに追い詰められないと良いインスピレーションが湧かない、などといって、いつも締め切り近くまで仕事を始めなかったそうだ。
井上ひさしさんなんかも遅筆で知られていて、脚本が書けずに舞台が延期になったこともあったように思う。

漫画週刊誌の締切の厳しさは、さまざまな伝説に彩られている。よく知られているのは手塚治虫さんとか赤塚不二夫さんとかかのエピソードだろうか。しかし近年(というほど最近ではないが)、締切関係で最も有名になったのは本書の著者江口さんではなかろうか。それも原稿を何度も落とすことで有名になったところがすごい。
いや、よく考えると、落としても落としても仕事が途絶えない=作品にそれだけ魅力がある、という点がすごいのかもしれないが・・・

締切を守れない、というのは、安易な低品質の作品では妥協できない、という面もあるのかもしれないが、本書を読む限り、江口さんの場合は、冒頭の音楽家のように締切が目前になるまで(あるいは締切が来てしまってから)でないと仕事に着手しない、という点にあるようだ。それに何度も落として抵抗が薄れたのか、仕事が進まなければ、割合と気楽に?落としてしまっている。

なので、有体にいうと、江口さんの場合は(才能はあっても)単なる怠け者、なのかもしれない。
そうかと思うと日記の連載?はけっこう小まめに書いているし、本書の巻末に収められたマンガを見ても昔ながらの画風なのに古びた感じが全然しないから、やっぱり天才の行動原理は一般人の想定の範囲を超えている、というのが真相なのか??

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