蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

世界を変えた14の密約

2021年09月11日 | 本の感想
世界を変えた14の密約(ジャック・ペレッティ 文藝春秋)

現代では政策よりも企業活動がより社会に影響を与えている、という著者の仮説を検証している。

①現金の消滅→ヒトは現金を支払う時に痛みを感じるので、キャッシュレスになると過剰な消費が発生する、とする。
②小麦の空売りとアラブの春→アラブの春の原因は穀物価格の上昇で、それを招いたのは食糧メジャーによる空売りであり、それを可能にしたオプション理論だとする。
③租税回避のカラクリ→租税回避の始まりはジョン・レノンへの提案だった。行き過ぎた所得税の節税は一般大衆への間接課税強化につながるとする。
④貧富の格差で大儲けする→国家間の格差縮小と国内での格差拡大は2006年のシティのレポートで予言されていた。中間層は消滅し、貧困層ビジネスが拡大する。
⑤肥満とダイエットは自己責任か→肥満の定義を変えたのはBMIを考えだした1945年のニューヨークの保険会社。ダイエットは必ずリバウンドするからダイエット産業は不滅だ、とする。
⑥国民全員を薬漬けにする→製薬会社は予防的投薬に大きな商機を見出した。本当は不要な薬を大量に販売している、とする。
⑦働き方が改革されない理由→それはテイラーとドラッカーのせいだとする。
⑧終わりなき買い替え→1935年電球メーカーがカルテルを結んで電球の寿命を6か月に縮めることにした。アップグレードは企業のカネ儲けの手段にすぎない。

このあたりまでは、「そういう面もあるけど、そればっかりじゃないでしょ」と言いたい時もあったが、それなりに読み応えがあった。

しかし、9章以降は、同じような話が続いて少々退屈だった。
ロボットやAIが発達すると人間がロボットの仕事を奪おうとするだろう(例えば、洗車機はメンテコストが高いので低賃金労働者に取って代わられている)、という話は面白かった。

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