もう別れてもいいですか(垣谷美雨 中央公論新社)
50代の原田澄子は、欠礼はがきで知人の夫が死んだと知って、おもわず「羨ましい」と呟いてしまうほど、夫が嫌いだった。2人の娘は独立して離婚に障害はないが、経済的な不安から踏み切れない。周囲は、暴力、浮気、浪費のいずれでもないのに離婚するのはおかしい、などというが・・・という話。
澄子の夫は家事は一切しないし、澄子が泊まりがけで旅行に行くのを簡単には許可しない。今時そんな夫婦いるの?などと思う。しかし、著者の作品はリサーチに基づいて書かれている感じがするし、何より共感を呼ばないとこんなに売れっ子にはなれないだろうから、本書を読んで「ああ、ウチと全く同じ」と思う妻が多いのかもしれない。
新聞の人生相談コーナーをよく読むのだが、今時信じられないような封建的?風習(嫁姑関係とか・・・今時親と同居してしていることすら珍しいような気がするのだが、そうでもないのだろうか)とかについての相談が結構多い。「いくらなんでもこれは釣りだろ」と思ってしまうのだが、全国紙でこの欄を担当する編集者は毎日投書の山と格闘しているのだろうから、きっと作り話は見破れるはずだ。だから多くは本当なのだろうし、人生相談のネタみたいな本書のような夫婦もたくさん実在するのかもしれない。
本書は、この上ないほどのハッピーエンドで、これを読んだら澄子と似たような立場の人は「ああ、私も今すぐ家を出て離婚しよう」と思ってしまうんじゃないか、と心配?になる。
澄子の夫と同じような立場(実は私もそうだが)の人の方こそ本書を読むべきかもしれない。「あなたの妻もきっとこんな風に思っていますよ」と知るために。
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