蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

この国のかたち(三)(四)

2016年05月14日 | 本の感想
この国のかたち(三)(四)(司馬遼太郎 文芸春秋)

文芸春秋に連載当時に読んでいたけど、20年くらい前のことなので内容は殆ど覚えていなかった。

(三)に収録されている「文明の配電盤」がよかった。東京理科大の創設にかかわる話。同大は東京大学の理工系学部の卒業生たちが、中堅技術者の養成を目的として設立した学校。校舎は借り物、教授は卒業生たちが無給で引き受けていた。「国家のカネによって学問を授かったということで、国恩を感じ」ていたためらしい。
手弁当で先生をするだけではなく学校の運営のため「会員は三十円を寄付すべし」という規約まであって、当時のエリートたちの健気ともいえるほどの良識がうかがえた。
タイトルの配電盤というのは、著者の例えで、エンジンプラグに電気を配る装置(配ることで一定の順序で爆発させる)。日本というエンジンを動かし始めるために設立された東京大学が配電盤にあたるという見立てである。その卒業生たちが政府の目論見通りに活躍したといえ、著者が言う通り「文明受容についての明治政府の計画は、大したものだったというほかない」


利殖に熱心だがカネには身ぎれいだった武士の話「戦国の心」、平城京と平安京を設けた理由を考察した「平城京」「平安遷都」(以上、(三))、
松が日本史に果たした役割を説明した「松」、漆器はなぜJAPANと英訳されるに至ったかを語る「うるし」(以上、(四))が面白かった。

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