蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

株式市場の本当の話

2021年04月03日 | 本の感想
株式市場の本当の話(前田昌孝 日経プレミアシリーズ)

著者は日経新聞で30年くらい一貫して株式関係の記事を書いてきた。日経は署名記事が多いので、私も著者の名前はおなじみなのだが、ちょっと斜めから見た皮肉な感じの内容が多かったような印象。
本書でも、バフェット流運用、日本の投信運用・販売環境、GPIFや日銀ETF買いのガバナンス、ESG投資などについて、批判的な視点で評論されている。特に個別の投信の実名をあげて批判しているのは、日経の記者として大丈夫(投信の運用や販売会社は日経の大手の広告主)なの?と心配になってしまった。
しかし、取材やデータのまとめ方(自作の図表を多用しているが著者の自慢の一つ)は丁寧に行われていた。特に東芝の議決権行使問題の裏側なんかは、どこでも読んだことがないくらい詳細で、興味深く読めた。
以下、印象に残った記述。
●スペイン風邪の時のアメリカ市場通りに動くとして、2020年3月の16552を日経225の一番底とすると、そこから2年後に3万円に到達し、さらに4年後に1.6万円まで下がる。

●バークシャーの保有銘柄で最も儲かったのはアップル。有名なコカ・コーラの5倍くらい儲かっている。

●金融庁がNISAの投資例で仮定している投資利回り3%は低そうに見えるが、実際には達成は容易でない。

●1989年末の国内上場全銘柄のうち2020年も上場を維持している銘柄は1368。このうち、税引配当を再投資したとしても880銘柄が元本割れ。592銘柄は半分以下。ただし全銘柄に等金額投資したとすると元本を5割近く上回る。これは大きく値上がりした銘柄のおかげで、10倍以上になった銘柄あ26あった。
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魔聖の迷宮

2021年04月03日 | 本の感想
魔聖の迷宮(五代ゆう ハヤカワ文庫)

グインサーガ続編3作目。
栗本グインが終わった、ヤガにおけるエピソードの続き。「七人の魔導師」に登場した下っ端?魔導師(なぜか本書においては彼らは「魔術師」と呼ばれていたが・・・)が総登場する。
いずれも(下っ端とはいえ)「七人の魔導師」では強力な魔力を持っている実力者のはずなのだが、本書ではホントにしょうもない(というか普通の人間みたいな振る舞いをする)役回りになっていて、ヒロイックファンタジーとしての品格?が落ちてしまったなあ、という感じだった。
イエライシャもグラチウスみたいに、普通のオジイサンっぽくなっちゃってたしなあ。残る品格はロカンドラスくらい??
個人的に「七人の魔導師」が栗本グインのベストな刊だと思っているので、なおさら残念・・・。
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パブリック 図書館の奇跡

2021年04月03日 | 映画の感想
パブリック 図書館の奇跡

スチュアート(エミリオ・エステヴェス(主演兼監督)はオハイオ州シンシナティの図書館の司書。一人暮らしでちょっと変わり者。厳冬期に入り、ホームレスが暖を求めて開館から閉館まで図書館に詰めかける。スチュアートはホームレスたちの常連?とは顔なじみだが、かつて体臭がきついホームレスを退館させたとのは差別だと訴訟対象になってしまう。ホームレスの一人が凍死したのをきっかけに、ホームレスたちは閉館時間になっても退館を拒む。スチュアートは彼らの扇動者と誤解され、警察との交渉の矢面に立たされる・・・という話。

スチュアートの勤務ぶりや私生活、同僚の司書や借家の管理人とのやりとりがとてもいい感じだったし、刑事(アレック・ボールドウイン)のエピソードも「どうなるの?」と、期待されたんだけど、ホームレスが図書館に立てこもる本体部分はイマイチだったかな、と思えた。特に刑事の話はほとんど展開されず残念だった。

多分、本物の公共図書館でロケしたんだと思うけど、アメリカの図書館って巨大かつ豪華だなあ。

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本を売る技術

2021年04月03日 | 本の感想
本を売る技術(矢部 潤子 本の雑誌社)

36年間大型書店中心に書店員をしてきた著者の体験談を本の雑誌の杉江さんがまとめたもの。題名通り、書店店頭での販売技術をドライな商人目線で解説している。

書店員というと、書籍に思い入れがあって、自分が読んで気に入った本を積極的に販売したいと思っているのでは?というイメージを持っていたのだが、矢部さんによるとそんなものは全くないという。(以下、引用)
***
-思い入れとかはないですか?私、この本すきなんだけどって。
(矢部)そんなことあるの?
-ええええ?!私、この本好きでPOP立てて売りたいからもうちょっと我慢しちゃおうかとか考えそうじゃないですか。
(矢部)えーっ?!だって今売れてないんでしょ?売れてない本を思い入れだけで一等地に置き続けるなんてことできるかな。棚下の平台くらいだったら考えられなくはないけど。
―じゃあ、一等地に一番好きな本や売りたい本を置くなんて考えられませんか。
(矢部)売れてる本ならいいけど。
―売れてないのは。
(矢部)あり得ない。
―自分が好きな本を売りたいし、だって売れたら倍うれしいじゃないですか。
(矢部)うれしくても、それがどうした(笑)。今入荷した本を置いたらそれの10倍売れるかもしれないもの。身も蓋もない言い方をすれば、早くお金に変わる順に置きたいと思いますよ。
***

本書を読むと、棚の担当者は一日中担当エリアを見回って補充や整頓をする必要があるらしく、雑用などに追われるとすぐに荒れてしまうそうだ。
昔の勤務先近くの本屋は大手チェーンの店だったんだけど、ある時から急に売り場の整理整頓がままならなくなって、荒れた感じになってしまった。しばらくしてスタッフが全部入れ替わった感じになって普通の書店っぽく戻った、なんてことがあったことを思い出した。
本(を読むのが)好きなだけでは、書店員ってつとまりそうにないな、と思った。
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