蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

レプリカたちの夜

2020年08月30日 | 本の感想
レプリカたちの夜(一條次郎 新潮社)

往本は動物のレプリカを作る工場で働いていた。ある夜、本物のシロクマを工場内でみかけるが・・・という話。

という話、といっても本書にはストーリーらしいストーリーはなく、そうかといって著者のイマジネーションの飛躍を追いかけるわけでもない。認識とか生命の概念とかについての著者の思いがダラダラ続く感じ。

途中で「パレイドリア効果」(月の模様がウサギに見える、みたいに特段の意味もない模様を既知のパターンにあてはめて見てしまうこと)という言葉が出てくるが、ある種の認知症の人が見ている世界はパレイドリアに満ちているらしい。もしかして、往本は認知症で、その脳内イメージを描写している、という夢オチみたいな結末なのでは?などとも思ったが、そうでもなかった。

しかし、本書は新潮ミステリー大賞受賞作で、その審査員だった伊坂幸太郎さんが絶賛したとのこと。本書の良さがわからない私の方が悪いのだろう・・・ただ、本作が伊坂さん好みだというのはよくわかるような気がする。伊坂さんがやはり新潮社のミステリのコンテストで受賞してデビュー作となった「オーデュボンの祈り」も(本書ほどではなくても)相当ヘンテコな内容だったからなあ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする